自衛隊がPKOで派遣されている南スーダンの現状を「発砲事案」と誤魔化す政府
- 2016年 7月 22日
- 交流の広場
- 熊王 信之
自衛隊がPKOで派遣されている南スーダンが、再び、実質的な内戦状態に陥り、BBC等の外国報道機関に依りますと、本日までに、PKOで派遣されている中国軍兵士2名を含む500名が殺害されたそうです。
At least 500 killed in South Sudan BBC 20 July 2016 Last updated at 22:34 BST
http://www.bbc.com/news/world-africa-36851552
ところが、政府は、防衛大臣の会見に依りますと、こうした事態を、何と、「発砲事案」と捉えて、自衛隊の駐留は継続させる、との立場のようです。
大本営発表が常のこの国の政府の有り様には寛大な報道機関であっても、海外からは厳しい現状が報道されていますので、流石に、防衛大臣会見に出た報道関係者からは、鋭い質問が発せられました。
その一部を下に引きます。
(以下引用)
Q:銃声とおっしゃるのですが、国連南スーダンミッションが出している声明だと、重火器が使われたとか、攻撃用ヘリが使われたとか、そのような指摘もありますし、BBCを見ていると、戦車も動いたりしていますが、そのようなものが使われたというような認識はおありでしょうか。
A:政府軍と元反政府軍との間で、発砲事件が生じているという状況は聞いております。
Q:大臣は「発砲事案」と言いますけれども、副大統領派の報道官が、「内戦状態だ」と言っていますが、明らかに認識の違いが、大きな認識の違いがあると思うのですが、「発砲事案」という言葉はおかしくないですか。
A:昨日の夜、この元反政府のマシャール第一副大統領が責任者でありますが、元反政府軍の兵士に対して、敵対行為の停止を命令したということでございますので、これにつきましては、大統領も、同じように戦闘の停止を訴えておりますので、このような両者間の全面的な対立ではないということであります。
(引用終わり)
大臣会見概要 防衛省 平成28年7月12日(11時20分~11時52分)
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2016/07/12.html
ところで、質問された記者が言われる処のBBCの報道とは、下のものでしょうか。 添付の動画を御覧になれば、大臣曰くの「発砲事案」とは如何なるものであるのかが分かります。
What’s happening in South Sudan? BBC 11 July 2016 Last updated at 15:23 BST
http://www.bbc.com/news/world-africa-36763037
私は、呆れて物も言えないのが本音です。 防衛大臣を含む政権の要人が全てこのような認識では、国家や国民の安全に関わる事態が存在しないことにも為るのではないのでしょうか。 このような認識に基づけば、これからは、北朝鮮のミサイル発射でも、単なる「発砲事案」で処理されては如何でしょうか。
そもそも、南スーダンにおける政府軍と反政府軍の衝突は、この国の独立以来における根深い各民族と夫々の地域における憎悪の連鎖に根差すものであり、容易に武力衝突を解消することが出来ずに今日まで来ているようです。
国際連合人道問題調整事務所(Office for Coordination of Humanitarian Affairs (UN OCHA))に依る国別レポート中の図形No.1(Figure1)を一瞥すると、七月に入ってから
の事変と犠牲者数が急増していることが分かります。
Country Report: South Sudan Conflict Update (July 2016)
http://reliefweb.int/report/south-sudan/country-report-south-sudan-conflict-update-july-2016
内乱の現場で、いくらPKO活動と言っても何が出来るのでしょうか。 彼我が戦闘中の現場では、敵・味方の判別しか有り得ません。 戦場で、自衛隊に何が出来るのでしょうか。
それとも南スーダンに駐留している事実のみが重要なのでしょうか。 新安保体制の象徴として。
祖国を守るべく自衛隊に入隊した隊員の命を、自国防衛以外のことで粗末に扱うような間違いを犯してはならない、と信じます。 南スーダンの内戦は、容易なことで鎮静化することは無いものなのです。
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