言論支配者たちの呪縛を解け!ねじ曲がった1マイル:イズラエル・シャミール
- 2016年 8月 31日
- 時代をみる
- 童子丸開
バルセロナの童子丸開です。
今回も危機的な現代を鋭くえぐるシャミールの記事(拙訳)です。
権力は「金力・暴力・情報力」の三位一体ですが、ここで言う「暴力」は、その延長として軍事力(テロの利用を含む)政治力を指します。最初の二つ(金力と暴力)については比較的注目されやすいのですが、現代世界で最も突出し最も大きな力を持つ権力の顔は3番目の情報力でしょう。
今回のシャミールの記事はそこに鋭い切り込みをかけています。
以下の記事は次のサイトでもご覧いただけます。
http://bcndoujimaru.web.fc2.com/fact-fiction2/A_Crooked_Mile.html
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言論支配者たちの呪縛を解け! ねじ曲がった1マイル:イズラエル・シャミール ユダヤ系ロシア人ジャーナリスト、イズラエル・シャミールの論文の和訳(仮訳)である。原文は以下。 http://www.unz.com/ishamir/a-crooked-mile/ A Crooked Mile Israel Shamir • August 24, 2016 • 2,200 Words 訳文中には、訳者からの注記を段落の後に施している箇所がある。また斜体で書かれた強調部分は原文に沿っている。 この原文には‟Masters”、‟masters”という単語が多く使われているのだが、これはシャミール自身の著作「Masters of Discourse(BookSurge Publishing (14 May 2008))」で使われたものである。これはシャミールの2008年以前の記事を集めたものだが、この中で「Masters of Discourse」は、メディアを集中的に支配して情報を操作し、一定の統一された論調を押し付ける(異論を排除する)ことによって、意図するままに世界を動かそうとする(主要にユダヤ系の)人々を指している。 この訳文では大文字でMastersと書かれるものについては「ご主人様」という訳をつけた。本文中の the Masters of Discourseを「言論のご主人様たち」、the Media Mastersを「メディアのご主人様たち」、the Spin Masters Unitedは「情報操作のご主人様連合」とし、小文字で書かれるthe media spin mastersは「メディア情報操作の支配者たち」、the spin mastersは「情報操作の支配者たち」と訳している。 また訳文の後に私からの【翻訳後記】 を掲げておいたので、ご笑覧いただきたい。 2016年8月31日 バルセロナにて 童子丸開 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 【翻訳、引用、開始】 ねじ曲がった1マイル イズラエル・シャミール 2016年8月24日 (写真: http://www.unzcloud.com/wp-content/uploads/2016/08/shutterstock_355422737-600×400.jpg) マザーグーズのナーサリーライム(童謡)にある「ねじ曲がった1マイル」(ねじ曲がった男がいてねじ曲がった1マイルを歩いた、などの話があるが)はフリート・ストリート(Fleet Street)のことだ。それはロンドンのジャーナリストたちにはよく知られている。私がブッシュ・ハウスのBBC本社に入るときにそう聞かされたのだが、それはまさにそのフリート・ストリートの端にある。その通それ自体がねじ曲がっているばかりではなく、そこの住人たちの多くもそうなのだ。ねじ曲がりはメディアにとって職業的な問題である。 ところが、古い時代には(思わずノスタルジアに浸りたくなるが)ジャーナリストは選択肢を持っていた。彼はトーリー党か労働党あるいはリベラルたちのどれかを支持する新聞社で働くことができた。いまそこには何の差異も無い。ガーディアンを含むすべてのイギリスの新聞は労働党党首のジェレミー・コービンを嫌悪する。アメリカではあらゆるメディアがトランプを嫌悪する。読者や著者にとって全く何の選択肢も無いのだ! たった一つの見解しかないメディアは最悪だ。ロシア人にとってそれがどうであったのか見てみよ。現在のことではない。今ならメディアは本当に思想のスーパーマーケットなのだが、1991年はそうではなかった。 ちょうど25年前の1991年8月、私はロシアの、アラブの詩人ならあらゆるカラー革命の母と呼ぶかもしれない、そんなものを目撃した。それは3日間続いた。メディアのご主人様たちは素晴らしいショーを作成して放送したが、その中で人々は暴君に対して立ち上がり、戦車に立ち向かい、そして抑圧者の銅像を一つか二つ引き倒していた。あなた方は、キエフのマイダンやカイロのタフリール、そしてバグダッドからの、同じチームによって放映されたその手のショーを見たはずだ。その結果はどれも等しく悲惨なものだった。 その革命は実に灼熱の空気だった。旧政権はカードの家のように崩れ去った。その防衛の中で一つの発砲も無かった。旧ソヴィエトのエリートたちと言論のご主人様たちとの間、つまりKGBとCNNの間に共謀があったのだ。 危機管理委員会が最後の政権防衛者たちによって作られ、老いた悪役狼としてふるまった。その者たちは戦車をモスクワに送り込むように軍に要請したのだが、あえてエリツィンを逮捕しようとはしなかったのである。戦車は反乱者たちに向かうのではなく、この一大ショーを支える柱の役を果たした。 モスクワの人々は、何の悪意も無い戦車と無気力なKGBを完全に圧倒しながら、エリツィンを賛美するために何千何万となく押し寄せた。抵抗は完ぺきに無かった。何百万人もの共産党員は資本主義を受け入れた。かつては万能だったKGBは愛玩してもらいたがる子犬のように寝転がった。軍は新しい支配者たちに従った。 犠牲者は出なかった。(後戻りつつあった装甲車にひかれた3人の少年を除いてだが、彼らは革命の偉大な英雄の称号を与えられて国葬にふされた。) 自由と栄光のショーは常に単なるショーに過ぎない。現実は悲惨だった。そのような大規模に満足をもたらす上演作品ではいつものことだ。それらは良いものに見える。しかしそれと引き換えに地獄があるのだ。モスクワにあったフェリックス・ジェルジンスキー【訳注】の像を引き倒す(ちょうどバグダッドでのサダム・フセイン像のようにだが)歓喜に酔った群衆を見ることは素敵だったが、ロシアの落ち着いた安全で生産的な生活は終わってしまった。何世代にもわたる懸命な仕事によって積み上げられてきたソヴィエトの膨大な富は、わずかの数の(主要にユダヤ人だが)オリガルヒたちによって分捕られ分け前とされてきた。金持ちは吐き気がするほどに富み、一 方で中産階層は滅びた。 【訳注:フェリックス・ジェルジンスキーはロシア革命の時期に、KGBの前身であるチェカを創設した人物】 ロシア人男性の平均余命は58歳にまで落ち、5千万人の男と女が悪化に向かうこの激しい変化のために死んだ。着実な人口の増加は急激な下落へと反転している。91年革命の前には1億5千万人のロシア人がいたが、その数は1億4千2百万人に落ち、現在になってやっと1億4千6百万人になっている。いまだにソヴィエト時代よりはるかに少ないのだ。もし移民たちの数を引くならば(ロシアはアメリカに次いで世界第2位の1千2百万人の移民がいる国なのだ)、もっとひどい数字になっているだろう。産業は破壊された。科学、芸術、映画、演劇、メディアは、オリガルヒどもにとって手っ取り早く役立つことでもない限り、打ち捨てられた。 たった10年の後、プーチンの登場とともに、ロシアは再びその長い上昇を開始した。ごく最近になってこの国は1991年以前のレベルを何とか取り戻したのだ。 十分な教育を受け教養の高いロシア人たちがどうしてそんなふうにトリックにはめられてしまったのだろうか? ソヴィエトの社会は高度に中央集権化されていて、チェック・アンド・バランスがほとんど無く、反対派政党も自由な政治メディアも無かった。ミハイル・ゴルバチョフはツァーの超越した権力を保持してきた。そのような構造は、裏切りや大規模な間違いに極めて影響を受けやすい。ゴルバチョフが西側に服従しようと決意したときに、彼はメディアと共産党支部に対するコントロールを、十分に支払われて雇われていた西側のスパイであるアレクサンデル・N・ヤコヴロフ氏【訳注】 に引き渡した。2,3年でソヴィエトのメディアは逆向きに回転し、そしてもう単純な統一されたメッセージを発するようになった。つまり、共産主義は誤り、もっと言えば犯罪であり、アメリカ人は我々の友であり、彼らの導きを受け入れればみんなはスイス人(?!)のように生きることになるだろう、と。 【訳注:アレクサンデル・N・ヤコブレフ(Alexander N Yakovlev)についてはこちらの日本語Wikipedia を参照のこと。】 ロシア人たちは非常にナイーブだった。人々は以前のメディアは信用しなかったが、新しいものに対する免疫はまだ持っていなかった。その新しいメディアは以前のものと同様に全体主義的であり、その偏る方向が変化しただけだったのだ。ロシア人たちは自分たちのプラウダが嘘をついていることを発見し、ニューヨークタイムズが真実を語っているのではないかという誤った結論を導いた。 ロシア人たちは、マザーグーズの童謡に登場するねじ曲がった1マイルを歩きねじ曲がった家に住むねじ曲がった男が、マスメディアを上手に言い表していることを知らなかった。人々は自分たちを零落させる変化を受け入れた。こうして私は、メディアが、人々を自分たち自身の利益に反して行動するように説得できる、ということを学んだ。 25年後の現在、同様のプロセスがアメリカで進行中である。全体主義的な、単一化された、ごく少数者(主要にユダヤ人)の手に集中した主流メディアが、アメリカ人たちを地獄行きの運命にすら導きかねないのだ。表向きは今と同様の堅固な個人主義者たちであっても、アメリカ人たちは自分たちの国を失うかもしれないことを理解すべきである。少数者の同盟【訳注】が、銀行家と軍部とスパイの拷問道具に権限を与えることだろう。1991年の経験は私に、言論のご主人様たちと闘うことは、ハーメルンの子供たちにとって笛吹を無視することと同様に、実に難しいものだということを教えてくれた。それでもなお、今回はそのねじ曲がった男たちが敗 れる可能性すらあるのだろう。彼らがその不偏不党の隠れ蓑を放り棄てたからなのだ。 【訳注:この「少数者の同盟」については拙訳「アイデンティティ政治の秘密」を参照のこと】 マイケル・グッドウィン(Michael Goodwin )は 次のように書いた。「エリート・メディアによる剥き出しの党派性の恥ずべき陳列は、近代アメリカで見られるようなものとは思えない。CBS、NBCそしてABCといった最大級のTVネットワーク、そしてニューヨークタイムズやワシントンポストといった主要新聞が、あらゆるフェアプレーの格好を投げ捨てている。トランプをオーバル・オフィス(大統領執務室)に入らせまいとするそれらの猛烈な決意は前例を見ないものだ。実に、どんな外敵も、テログループも、国内の犯罪組織も、トランプが被っているような連日の打撃に苦しむことはない。頭のいかれたイランのイスラム法学者たちはアメリカを大悪魔と呼びイスラエルを地図から消し去ることを誓うのだが、彼と比較 すればまだ優しく扱われているのだ。」 「合衆国のメディアは根っから100パーセント統一されて猛烈にトランプに敵対しており、彼が大統領に選出されることを妨害している。」グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald )はこう語り、それは彼らにとって助けにならないだろうと強調した。トランプに投票する人々はメディアの紡ぎ出す論調など決して気に掛けないだろう。ちょうどブレキシットに投票した人たちが傲慢なブリテンのエリートたちとそのメディア情報操作の支配者たちを気に掛けなかったようにである。その者たちは予言したがその予言は外れた。 まさに偽の予言は聖書にある最古のトリックである。それらが、トランプは敗北の運命にあるとか、自分たちの世論調査と自分たちの分析が彼の敗北の不可避なことを証明するとか言うときには、必ず、それらが嘘をついていると心に留めるべし。スプートニク通信社は、いまだに情報操作のご主人様連合から独立を保っている極めて少ない情報配給源の一つなのだが、次のことを明らかにした。ドナルド・トランプが政治的な復活を遂げて久しいのだが、メディアは、トランプがいま全国的にクリントンに対して2ポイントのリードを保っていることを示す新しい主要な調査について沈黙している、と。 それは大した問題ではない。世論調査というのは人々に自分たちの候補者への支持を確信させるための道具に過ぎないのだ。選挙を不正に操作しようとする者がいない限り結果など誰にもわからない。そしてそれこそが、掛け値なしに、出くわすべき本当の危険性である。 マイケル・ムーアが、トランプは勝ちたいと思っていないのだと言って、新たな策略を付け加えた。ジェフ・セイント・クレア―(Jeff St Clair)を含むカウンターパンチ誌の人々の一部がこれを採用したのだ。彼らが実際に言いたいことは、自分たちは別のことを言う、つまり、次なる作戦をとるだろう、ということである。たとえば、トランプはイランへの4億ドルの送金【訳注】を政府攻撃の口実としては利用しなかった。そのことが、彼が勝利を望んでいないという意味ではないのだろうか? 【訳注:オバマ政権が4億ドルに相当する現金をテヘランに空輸したことを今年8月3日付のWall treet Journal が報道した。】 全く違う。それはイランとの核に関する合意を頓挫させないための賢く道理に基づいた決定だったのだ。この合意は良い取引であり、そのままに保っておいた方がよい。トランプは、アメリカ政府がハノイへの支払いの約束を破ることを好んだためにベトナムに放置されて死亡したアメリカ人戦争捕虜に関する ロン・ウンズの話【訳注】に注意を払った。アメリカはテヘランに4億ドルを超える借金を抱えていた。この送金はなされなければならず、責任ある政治家ならば、たとえオバマを動揺させるための良い機会であったにしても、それを責めることは避けるだろう。 【訳注:Ron Unz’s Review誌の記事‟ American POWs who were left to die in Vietnam”】 トランプはうまくやっているように思える。そして彼が過敏になって彼自身と支持者を失敗させなければ、彼はアメリカ人にとってアメリカを再獲得する歴史的な変化を打ち立てることだろう。そして他の国々は自分独自のあり方で生きることになるだろうが、それは言論のご主人様たちにとって許すべからざることなのだ。 トランプのやり方が完ぺきだというわけではない。ムスリム問題への彼のぐちぐちとした訴えは無益に思える。私が常に大規模な移民に反対していることに注意せよ。それがムスリムでもユダヤ人でも仏教徒でも。そしてもしアメリカが、そして他の国々が、この現代の奴隷貿易【訳注】 を止めるのなら、私はアーメンを唱えるだろう。ところが、アメリカにはムスリム問題などはないのだ。イスラム教徒はごく少数である。オバマ政権はイラクやシリアの難民たちが相当な数でこの国にやって来ることを許さなかった。1年間に1万人、なぜだ?その程度の人数ならギリシャに1日でやって来る! 【訳注:この「現代の奴隷貿易」に関しては拙訳「現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機」を参照のこと。】 たぶんトランプはユダヤ人の支持者が自分のところに集まってくると期待したのだろう。アメリカのユダヤ人たちが、オランダやデンマークやイングランドの冷酷な欧州アンチ・ムスリム・ナショナリストを擁護し資金提供をしているからだ。しかしその作戦は失敗に終わった。アンチ・ムスリムのユダヤ人たちはアメリカに大勢いるのだが、 ケビン・マクドナルドが明らかにしたように、彼らはトランプを冷遇した。彼らはヨーロッパの住民たちとムスリムたちの間に不信と嫌悪を広めたいと望むが、しかしアメリカではどうか? ここは自分たちの本拠地にあまりにも近い。いったんここの住民がムスリムとキリスト教徒の間にある相違に気づいたならば、キリスト教徒とユダヤ人の間にある相違をも発見できる。だから、もしトランプがアンチ・ムスリム政策と引き換えにユダヤ人たちの支援を得るだろうと考えたのなら、彼は計算違いをしていたのだ。 トランプのアンチ・ムスリム作戦が実を結ばなかった一方で、彼は言論のご主人様たちに対抗する精神の自由の旗手となった。「私はねじ曲がったヒラリーと闘っているのではない」。彼はこう人々に語った。「私はねじ曲がったメディアと闘っているのだ」と。そしてこれがそのキャンペーンの最も重要なメッセージである。 いま、かつてなかったほどにあのねじ曲がった者たちを打ち破るチャンスがあるのだ。MSM(主流メディア)がソーシャル・ネットワークとフリー・インターネットに対してその地位を失っているからである。ソーシャル・ネットワークもまた偏向し操作を受けている。しかしそれでも、それらはより自由であり、集約度がより小さい。だがMSMは解体され民主化され脱独占化されるべきだ。アメリカは1911年にあの強大なスタンダード・オイルを何とか解体した。2017年にメディアを解体し独立した小規模な会社にすることが可能なはずである。さもなければ、我々はいつまでもプロパガンダの餌食にされ続けるだろう。 言論のご主人様たちはメディア・イベントを創作するのが大好きであり、それが世界的なアジェンダのすべてを占領するまで作り続ける。地中海の海岸で溺れ死んでいるのを発見されたシリアの幼い男の子を覚えているだろうか? その、非常に悲しく非常に悲惨だが決して特別とはいえない出来事は、ドイツ首相があらゆるシリア難民を受け入れると宣言するまで紡ぎ出され投げかけられた。これがまさに、その情報操作の支配者たちが望んだことなのだ。つまり、ヨーロッパを難民で溢れかえらせ、そこに新たな少数者同盟を作り上げ、福祉国家を転覆させ、ヨーロッパを押し潰して一つの独立法人にしてしまうことである。 いま彼らは、軍事介入の糸口としてシリアのアレッポにいた新たな幼児の写真を選ぶ。その死は悲劇的な出来事だ。その他の何万人というシリアの子供たちの死と同様に。もしヒラリー・クリントンがシリアのイスラム主義過激派たちに山のような兵器を贈らなければ、それらの子供たちは生きているだろうに。西側諸国の軍事介入が子供たちを生き返らせるというのか? そうではなく、アレッポと全シリアでの停戦が最良の道なのだ。武装反乱者たちはアレッポを無事に去るだろうし、すべての国民が平和裏に自分の故郷にとどまることだろう。 これらの悲劇的な写真が善良な趣旨で見せられているなど、私は決して信じない。実に多くのパレスチナの子供たちがイスラエルによって殺された。しかしその子供たちの写真がイスラエルに対するアメリカの恒久的な軍事援助を決して止めなかった。パレスチナ人たちはその写真を公開しようと努めたのだが、インパクトはゼロだった。彼らは「戦争ポルノ」を公開したとして非難されたのだ。こうして、そういった犬笛のような言葉と写真が、情報操作の支配者たちが使用する場合にのみその役目を果たすと見なされている。それは情報の捻じ曲げであり、共感ではない。 もし平和と繁栄を、正義と恵みを望むのなら、我々は人々を覆うあのねじ曲がったメディアの呪いを打ち破らねばならない。聖書にある言葉のように、ねじ曲がったものはまっすぐにされなければならない。これが今の時代で最も重要なメッセージである。そしてこの8月の終盤はそれに働きかけるのに良い時期なのだ。 【翻訳、引用、ここまで】 ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ 【翻訳後記】 この夏に日本に一時帰国していた日本人に会った。彼はこう言った。日本のマスコミは、テレビも新聞も、どうして全く同じことしか報道しないのだろうか、と。別に話を聞いたもう一人の日本人も一時帰国していたのだが、やはり次のように語った。テレビのどのチャンネルも、オリンピック番組か、食い物や健康の番組か、でなければ芸人の馬鹿話しか放送しない、と。もう何年も日本に帰っていない私にも察しはつくが、きっと日本はMasters of Discourse(言論を操作し統一して支配するご主人様たち)の思うがままに操られているのだろう。ひょっとすると、アメリカと同様、スターリン時代のソ連に匹敵する全体主義国家になっているのかもしれない。 シャミールはアメリカにひょっとするとMasters of Discourseを打ち破るチャンスが訪れているのかもしれないと語る。私はそこまで楽観的にはなれないのだが、少なくとも、アメリカで情報操作に対する懐疑と警戒が広がっているのは確かなようだ。一方、属国の日本では…。いや、もう、愚痴みたいになるので止めておこう。 シャミールは自らが体験した25年前のロシアの「革命」を語っているが、私にとってMasters of Discourseの存在を強く実感できたのは、15年前の9・11事件、そして5年前の3・11原発震災だった。また12年前の3・11(マドリッド列車爆破テロ)や11年前の7・7(ロンドン交通機関爆破テロ)でも、ごく身近にその実例を観察することができた。(9・11については『911エヴィデンス』にある各記事を、3・11マドリッド列車爆破テロについてはこちらのシリーズ『まやかしのイスラム・テロ』、また3・11原発震災については『(和訳)エルムンド紙記事 フクシマの傷跡、あの災厄から5年』を参照のこと。) その中で、9・11事件への懐疑論を「トンデモ」「陰謀論」として社会的排除に努めた同じ者たちが、3・11フクシマへの告発をもやはり「トンデモ」「陰謀論」として排除に携わる姿を、しっかりと見た。それはMasters of Discourseの意図に忠実な者たちであり、マスコミの吹く笛がハーメルンの子供たちの魂を奪い去る作業に対する邪魔を許さないのである。日本にジェルジンスキーはいないが、その者たちは立派にチェカの役割を果たしている。 Masters of Discourseによる、特にテレビ映像を使っての「笛吹き」は、おそらく1989年の天安門事件やルーマニアの反チャウセスク暴動あたりから本格化したのだろう。特にチャウセスク政権の崩壊では、軍部やソ連幹部への入念な根回しに加えて、TV局による万全のシナリオが作られていたはずだ。それに続く湾岸戦争では、駐米クウェート大使の娘による偽証言と「フセインによる石油流出作戦」の偽報道、「油まみれの水鳥」のでっちあげ映像、そしてアメリカによる残虐兵器の隠蔽と、それから後の重大事件に登場するあらゆる情報ねじ曲げの基本パターンが、パンドラの箱のふたを開けたように噴出した。 その後の世界は「大嘘様の大名行列」と化した。魅惑的な光と音と文字の駕篭に鎮座する「大嘘様」に(特に西側の)世界中が土下座した。大名行列の先頭には色とりどりに「BBC」「NBC」「NHK」「NY Times」「The Gardian」「El País」などと派手派手しく書かれたはっぴを着るやっこ達が歩き、武装したスパイどもが駕篭を守る。その後ろにこわもてのならず者ども(アルカイダやボコハラム、ISISなど)と重武装の軍隊が延々と続く…。世界は大名行列にひれ伏す村人の集まりとなった。駕篭の中の「大嘘様」の顔を見ることは許されない。顔を上げて籠の中を見ようとする者がいればたちまち袋叩きにされて村から追い出される。 ハーメルンの笛吹きどもは、バルカン(解体)戦争、旧ソ連の「カラー革命」や「アラブの春」、「マイダン革命」などで実にうまくやった。それらはご主人様の望んだとおり世界を動乱と流動に追いやり、既存秩序の解体と巨大な民族移動を導いた。人権団体、平和団体、(似非)右翼、(似非)左翼などが、その作業に組み込まれ全面協力している。数少ない失敗例として、南オセチアの戦争と香港の「雨傘革命」が挙げられるかもしれない。(特に香港のそれは噴飯の極みだったが。) シャミールは、現在の世界でこういった「大嘘様」の姿を明らかにしその「大名行列」の様子を記述できる、極めて数少ないジャーナリストの一人だ。現在世界の危機を多くのジャーナリストや論者たちが記述しているのだが、彼ほどにその根本的な姿を的確に(露骨に)語る者はいない。ジェイムズ・ぺトラスやポール・クレイグ・ロバーツ当たりがこれに続くだろうが、もう一つ食い足らなさを感じる。ロバーツはアメリカ左翼の変貌を嘆いているのだが、彼はそもそも以前から「アメリカ左翼」の中心部があのMastersと底通し、「反戦・平和」の綺麗ごとを語りながら破壊と動乱に加担し続けてきたことに(世界のどこでも同様だろうが)、思いが至らない。 このサイトには次のシャミールの記事の翻訳が収められている。Masters of Discourseの姿と働き、そしてそれとの過酷な闘いは、このような記事の各所にしっかりと記述されている。シャミールにしても私にしても、その闘いが終わるとき(どんな結末か知らないが)まで生きていることはないかもしれないが、できうる限り記録に残しておきたいと思う。 アイデンティティ政治の秘密 (2016年8月3日アップ) 日本でのオバマ (2016年6月7日アップ) ロシア人は素早く馬に飛び乗る (2016年2月25日アップ) シリアに開く突破口 (2016年2月15日アップ) 雪中のモスクワ、リトゥヴィネンコ毒殺、そしてシリア戦争 (2016年2月1日アップ) 現在進行中 2005年に予想されていた現在の欧州難民危機 (2015年9月20日アップ) 宿命の三角関係:ロシア、ウクライナ、ユダヤ人 (2014年8月3日アップ) 動乱のウクライナ:戦争はいつでも起こりうる (2014年5月23日アップ) 民族紛争の対極にある「ロシア世界」の新たな展開 (2014年4月21日アップ) ウクライナのファシズム革命 (2014年2月28日アップ) アメリカ:あるユダヤ国家 (2006年9月~2007年3月翻訳公開) パラダイス・ナウ あるいは、ある秘密諜報員の告白 (2006年6月翻訳公開) 【翻訳後記、ここまで】
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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