集団的自衛権問題研究会【声明】成立1年で問う 安保法制で「平和」は近づいたのか
- 2016年 9月 23日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
ご紹介が遅くなりましたが、私も参加している集団的自衛権問題研究会の
川崎哲代表が、9月19日、「安保関連法」成立1年にあたっての声明を公
表しました。
とても説得力のある声明になっていると思います。ぜひ一人でも多くの方
に読んでほしいです。また、ぜひ広めていただけると嬉しいです。
———— 以下、転送(本文貼り付け) ————-
皆さま
9月19日の安保法「成立」1年にあたり、集団的自衛権問題研究会の
代表として以下の声明を発表しましたので、ご案内します。
安保関連法成立から1年にあたっての代表声明を発表しました
http://www.sjmk.org/?p=512
【声明本文】
成立から一年で問う 安保法制で「平和」は近づいたのか
http://www.sjmk.org/?page_id=509
2016年9月19日
川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
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成立から一年で問う 安保法制で「平和」は近づいたのか
2016年9月19日
川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
全国的な反対運動や憲法違反との批判にもかかわらず安保法制が強行的
に「成立」されてから一年が経過した。政府・与党はこれを「平和安全法
制」と称し、日米同盟が強化されることで抑止力が高まり、日本が戦争に
巻き込まれることはますますなくなると説明してきた。
しかしこの一年、現実はどうであったか。中国や北朝鮮はまったく「抑
止」されていない。中国による海洋進出と軍拡の動きは止まる気配がない。
北朝鮮は今年すでに2回の核実験を行い、核ミサイル能力を実質的に強化
している。安倍政権が声高に進める「日米同盟の強化」路線は、これらの
国々を刺激こそすれ、抑制する効果はないようだ。
安保法制は、日本が米国と共同で軍事行動を行うための条件や範囲を、
日本の個別的自衛という枠組みを超えて、大幅に拡大するものだった。し
かしそのことは、日本を取り巻くこれらの脅威を取り除くものでも防ぐも
のでもない。むろん、それは万が一の備えで保険のようなものだとの見方
もあろう。しかし、日本がそうした軍事行動に入らなければいけない事態
になったとしたら、もはや「時すでに遅し」なのだ。武力の発動は反撃を
呼び、武力紛争は広範囲かつ長期的に波及する。取り返しのつかない事態
となるのだ。
日本が安保法発動への計画や演習を進めれば、それは中国や北朝鮮をま
すます刺激するだろう。日中間の偶発的な衝突の危険は現実のものである。
不測の事態を防ぐ両国間の連絡メカニズムの協議は遅々としている。喫緊
の課題は、双方が互いを挑発する行為をとらないと確約することである。
一方、北朝鮮の暴走は、日米韓がそもそも実効性の期待できない制裁にだ
け頼り真剣な対話を怠ってきたことの代償といえる。これ以上の放置を続
ければ、東アジアは恐ろしい核軍備競争の舞台となってしまう。
ヨーロッパに目をやれば、ベルギーやフランスでは中東情勢と絡んだ
「テロ」が続いてきた。その一方で、シリア難民の危機は深刻化する一方
だ。大国による対中東の武力介入は反撃としての「テロ」を拡大させ、泥
沼化の様相をみせている。
安保法制は「国際平和支援」の名目で、こうした種類の作戦に対する自
衛隊の参加の可能性も定めている。しかし日本が仮にそのような道に入っ
ていくとすれば、もたらされる結果は明らかだ。
私たちはいま目を覚まし、平和への真の優先事項は何かということを議
論しなければならない。日本からの武器輸出を整備をするお金があるのな
ら、なぜそれを難民支援に回さないのか。事実上の紛争が続く南スーダン
で自衛隊に無理矢理「駆け付け警護」をさせようという前に、現地人道活
動への支援など、非軍事で進められるのに不十分なままに置かれている課
題が山ほどあるではないか。
こうした問題の構図は、この一年で大きく変わったわけではない。なぜ
かといえば、この一年、安保法が実質的には発動されてこなかったからで
ある。当初より南スーダンPKOの「駆け付け警護」がまず発動されると
みられていたが、それは選挙などで先延ばしにされてきた。国民の反対が
明らかだったからだ。
安保法の発動を辛くも今日まで止めてきたのは、昨年の反対運動で可視
化された人々の声である。それはまた、現場の危険を知る防衛省・自衛隊
による慎重な対応の結果でもある。これとは対照的に、勇ましい言葉で扇
動する一部の政治家やコメンテーター、また、外交・安保官僚にはびこる
「日米同盟」一辺倒の硬直した思考こそが、日本をとりまく危機の諸相を
悪化させている。これに対置する平和への真の優先事項の議論が、まだま
だ乏しい。そのためにも、私たちが関心を維持し監視を続けることが何よ
りも大事である。
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川崎哲
Akira Kawasaki
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〔opinion6272:160923〕
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