ヨーロッパで勢いを得る市民運動 ドイツの7つの都市で ” Stop CETA! ” ” Stop TTIP!“ のシュプレヒコールが響いた
- 2016年 9月 28日
- 時代をみる
- グローガー理恵ドイツのCETA、TTIP反対運動
”TTIP” “CETA”とは?
✧ TTIPとは: Transatlantic Trade and Investment Partnership
(大西洋横断貿易投資パートナーシップ – 米国・EU諸国間の協定)
✧ CETAとは: Comprehensive Economic and Trade Agreement
(包括的経済貿易協定 – カナダ・EU諸国間の協定 )
まず、2015年10月10日にベルリンで催された ”反TTIPおよび反CETA “ 抗議デモについて
去年の10月10日、私はベルリンで催された”反TTIP、反CETA” デモに参加した。まず、その時のインプレッションについて簡単に述べさせて頂く。ベルリンのデモには、はるばるドイツの各地からベルリンに駆けつけて参加した人々も多く、彼らの断固とした決意に満ちた抗議精神が窺えた。それでいて、参加者同士のムードは和気藹々としていて、とても手応えのあるデモだった。あの時、集合場所だったベルリン中央駅前のワシントン広場で、ステージに登壇した代表者たちのスピーチに耳を傾けていた私は、広場に集まってくる人々の数がどんどん増えていくのを目撃していた。そして「これは、すごいな!」と、ひそかに思った。その時だった。ステージからアナウンスがあったのは……。アナウンスは、中央駅構内のありとあらゆる所がデモに参加しようとする人たちでいっぱいになり、駅のプラットフォームまでもが人で溢れてしまっているため、中央駅に着いたすべての電車は、そこで乗客を降ろすことができずに、素通りしていかなければならない状態になったということを告げていた。後になって分かったことだが、あの時、ベルリン中央駅前の広場は25万人近くの人々で埋め尽くされていたのだった。
2015年10月10日 25万人が集まったベルリンでの反TTIPデモ (GETTY IMAGES)
地方からベルリン・デモに参加した人々が利用した貸切バスが並ぶ (GETTY IMAGES)
2016年9月17日にドイツの7つの都市で催された”反CETA&反TTIP” デモ
9月17日(土曜日)正午より、ドイツの7つの都– ベルリン(Berlin)、ハンブルグ(Hamburug)、ケルン(Köln)フランクフルトFr(ankfurt )、ライプツィヒ(Leipzig )、シュトゥットガルト(Stuttgart )、ミュンヘン(München)で、「TTIPを止めよ!」「CETAを止めよ!」のスローガンを掲げたデモ集会が開かれた。
主催者の発表によると、7都市合わせて計32万人がデモに参加したという。参加者数を都市別に分けると: ベルリン – 7万人、ハンブルグ – 6万5千人、ケルン – 5万5千人、フランクフルト – 5万人、ライプツィヒ – 1万5千人、シュトゥットガルト – 4万人、ミュンヘンでは悪天候、雨にもかかわらず2万5千人もの人々がデモ行進したとのことだ。
デモは30のNGO団体によって主催された。主催者から私たちヘのコミュニケーションはメールを通してなされ、デモについての詳細情報は彼らのウェブサイトから入手することができた。彼らの横のつながり、すなわち主催団体どうしのコミュニケーションの綿密さも然ることながら、縦のつながり、すなわち私たちのようなサポーターに対するコミュニケーションも、きちんと綿密になされていた。事実、主催団体がそれぞれ連帯しあって、この7都市に及ぶ大規模なデモを見事にコーディネートしてくれたことが、この抗議デモ集会を大成功に導いた大きな要因となっていると思う。
ハンブルグの “Stop CETA!“ “Stop TTIP!”デモに参加して
ハンブルグでは12時から、ハンブルグ市庁舎前の広場 ” Rathausmarkt Platz “でデモ集合が始まった。広場に設けられたステージでは、オランダから来たロックバンドによるリズミカルなレゲエ・スタイルの演奏があった後、5人の代表者が反CETA、反TTIPを唱えるスピーチを行った:スピーカーは、ドイツ・グリーンピースで政治的イシューを担当しているシュテファン・クルーグ氏、メア・デモクラティーの代表スピーカーであるクラウディン・ニールス氏、酪農業者アネル・ヴェーリング氏、ナチュア・フロインド・ハンブルグからの代表者ヘレネ・ホーメイヤー氏、デモ・コーディネートの中心となって活躍した市民団体、Campactからの代表者クリス・メツマン氏であった。彼らの力強いスピーチは、的を得た的確な批判に溢れていて、聴衆の喝采を浴びていた。
中でも、地方から遥々トラクターに乗ってハンブルグにやって来た酪農業者、アネル・ヴェーリングさんの怒りに満ちた訴えは多くの人々の共感を得たようだった。それを簡単にご紹介させて頂く:
「私は情熱をもって酪農業を営んでいる農婦です。今日、私は、CETA協定およびTTIP協定を無理やり押し通そうとするやり方に憤慨し、抗議の意志をはっきりと示そうとの気持ちで、トラクターに乗って、ここにやって来ました。私は、法的策謀のジャングルの中で、何よりも企業の利益を満たすためだけの制約条件がつくられるということに唖然としています。CETAによって農業従事者や市民社会の権利(範囲)が縮小されます。CETAはTTIPを忍び込ませる裏口です。CETAは無害化され、試験段階の協定として私たちに提示されるのです。CETAは、私たち農業従事者/農業生産制度を裏切るものです。そんなことは、真っ平です。そのために今日、私たち農民は自分たちのトラクターに乗って、ここにやって来ました。」
32万人もの人たちが参加した今回のデモの大成功が物語っているように、” Stop CETA ! Stop TTIP ” のスローガンを掲げた市民運動は多くの支持者を得て勢いを増している。
しかし、その一方、欧州委員会はCETAおよびTTIPを締結することを目指しており、まず最初のプロセス手段として、いわゆる ”CETAの暫定的適用 (Provisional Application)“ と呼ばれるものを制定しようと、EU諸国に合意を求めている。ドイツ政府は、CETAの暫定的適用に合意することに積極的である。酪農業者のアネル・ヴェーリングさんがスピーチで指摘なさったように、CETAやTTIPの批判者たちは、CETAの暫定的適用が採決されたら、その後は滑るようにCETAの最終的締結およびTTIP、その他の自由貿易協定が次々に締結されるであろうと深く懸念している。
ヨーロッパ市民にとって、問題はCETA、TTIPだけではない。“ TiSa ”と呼ばれる別の貿易協定が市民を待ち構えているのである。”TiSa“とは、’’Trade in Services Agreement (サービス業の貿易協定)“のことで、EUと米国間でサービス業(銀行、健康管理、交通・輸送サービスなど)の貿易を自由化するという協定である。
ドイツのテレビ局 ARDの世論調査によるとアンケート応答者の70%が「TTIPは不利な協定であると考える」と答えたという。「CETA、TTIPをストップせよ!」とベルリンで、ケルンで、ミュンヘンで、ハンブルグで、ライプツィヒで、シュトゥットガルトで、そしてフランクフルトで、シュプレヒコールした32万人の市民の叫びは、ロビイストに癒着しきった政治家たちの耳には届かなかったようである。しかし、わたしたちはこの闘いを続けていかねばならない。なぜなら、我々にはヨーロッパだけではなく世界中の未来世代を守っていかねばならない役目があるからだ。
以上
7都市におけるデモの様子:
https://www.youtube.com/watch?v=NtuEMIVw9wM
ハンブルグ市庁舎前の広場でのデモ風景
街灯によじ登って “STOP CETA & TTIP“の旗を掲げるグリーンピースのアクティビスト 彼らの後ろに見える建物がハンブルグ市庁舎
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犬もストップCETAのサインをつけて応援
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ホームメードのバナーを誇らしげに見せる子どもたち バナーには”自由貿易の代わりに公正貿易を”と書かれてある
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ジグマール・ガブリエル副首相/経済・エネルギー大臣の写真つきのサインには”CETAがよくて、TTIPは悪いって?(とんでもない、両方とも悪い、と示唆している) 悪人のガブリエルは市民をだましてる、と書かれている
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背景にそびえているのは聖ベテロ教会 (Petrikirche)の塔
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音楽家の集まり、ドイツ・オーケストラ連合のバナー ”私たちは物品ではない”と書かれている
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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