上村達男氏のNHKガバナンス論の真贋 ~赤旗編集局への書簡(1/7)
- 2016年 10月 15日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2016年10月14日
上村達男氏は昨年2月末にNHK経営委員を退任して以降、経営委員在任時の体験を織り交ぜながら、様々な著作や紙面・論壇で、自らも同意して選任した籾井NHK会長に対する批判とNHKガバナンス論を展開して注目されてきた。
しかし、この1年半ほど、NHK問題に取り組む市民運動に関わる中で私は上村氏の籾井批判を額面通りに受け取るには余りに偽善が多く、同氏のNHKガバナンス論も株式会社版ガバナンス論の焼き直しであって、公共放送のガバナンス論にはなっていないと感じてきた。
そこで、新たにNHK経営委員会議事録における上村氏の発言歴を辿って、これまで書き溜めてきたメモに書き加え、10月2日にしんぶん赤旗編集局宛に、「上村達男氏の籾井会長批判、NHKガバナンス論について」と題する書簡 (以下、「本書簡」という) をEメール添付と郵送で送った。
こう書くと、「なぜ、赤旗編集局なのか?」という問いが返ってきそうである。詳しくは本書簡の「まえがき」と末尾の節をご覧いただきたいが、要は、革新を自認する日本共産党の機関紙までも、上村氏の言説を賞賛することへの強い異議と、同紙の論調がわが国の市民運動にも少なからず影響を及ぼしていると感じ、それに対する私見を当事者に伝えたいと考えたからである。
「まえがき」で書いたように、本書簡は赤旗編集局に回答を求める趣旨のものではないが、一読のうえ、感想をもらえば、同局の考えを知るよい機会にはなると考えて送ったものである。送付後、約10日経つが応答はない。
しかし、元々の動機から言えば、NHKのガバナンス(会長、経営委員の選考方法、受信契約を介した視聴者とNHKの関係、日常的な番組ウオッチなど)に関心を寄せる方々に読んでほしいというのが本書簡をまとめたゆえんである。
そこで、多くの方々にご覧いただければと考え、本書簡のタイトルを「上村達男氏のNHKガバナンス論の真贋~赤旗編集局への書簡」と改め、7回に分けて全文をこのブログに順次、転載することにした。
—————————————————
2016年10月2日
しんぶん赤旗編集局 御中
テレビ・ラジオ部 御中
上村達男氏の籾井会長批判,NHKガバナンス論について
醍醐 聰
日頃より、NHK問題に取り組む市民運動に関心を寄せていただき、ありがとうございます。その件で皆様に何かのご参考にしていただければと考え、標題のような書簡を送らせていただきます。すべて、私の個人的見解です。
昨日の貴紙紙面の「テレビ・ラジオ」欄に、10月4日に予定されているNHK退職者有志主催の集会のことを紹介する記事が掲載されました。そこでは、基調報告に上村達男氏が登壇することも紹介されました。
その上村氏について、私が知る範囲で、貴紙は次のように同氏のインタビュー記事等を掲載されました。
・「政府が人事で独立性を壊した。」(『赤旗日曜版』2015年6月14
日)
・「『公共』国民的議論が必要」(『しんぶん赤旗』2015年12月23日)
このほか、短い文章ですが、
・「籾井会長に抵抗した人たち」(『しんぶん赤旗』2015年5月30日
の中で、上村氏を「籾井会長に抵抗した人たち」の1人として紹介されました。
これらの記事から、貴紙が、籾井NHK会長に対する批判者として、上村氏を高く評価されていることが明瞭に読み取れました。他のメディア等も上村氏を同様の評価で紹介してきました。
しかし、籾井会長批判という観点も含め、上村氏に関する私の評価は貴紙とは大きく異なっています。そこで、以下、上村氏の言説に関する私の認識と評価の要点をお伝えいたします。一読いただけましたら幸いです。
この書簡は貴紙へのお尋ねとか質問とか言ったものではありませんが、一読いただいて、ご感想をお知らせいただけましたら、貴紙のお考えを知るよい機会になるのではないかと考えています。
(引用文も含め、文中のゴチック、下線は私の追加です。)
本書簡の目次
上村達男氏の長谷川三千子氏評価に対する異議
(1)経営委員就任前の長谷川氏の言動について
(2)経営委員就任後の長谷川氏の言動について
上村氏は議事録に残る会合でどのように発言したか
~美馬のゆり氏の発言を参考にして~
籾井会長の任免経緯をめぐって迷走した上村氏の釈明
上村氏はまっとうな籾井会長批判者といえるか
経営委員の人事制度と職責に関する上村氏の曲解
川島武宣氏の経営委員人事論を顧みて
さいたま地裁のワンセグ判決の示唆
自民党調査会ならダメでも国会議員ならOKという浅慮
~NHKを国政調査権の対象とみなすに等しい
上村氏の危険な言説~
視聴者目線が欠落した上村氏のNHKガバナンス論
(1)経営委員会の職責をわきまえない上村氏の
余剰資金活用論
(2)視聴者目線が欠落した上村氏の受信料徴収論
上村氏の著書の書評依頼に関する経緯に思うこと
最後に
(以下、次回に続く)
初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔eye3702:161014〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。