本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(137)
- 2016年 10月 22日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日銀の破綻!?
今回の「日銀の政策変更」については、「日銀の苦悩」を表すとともに、「量的緩和の限界点」をさらけ出した状況とも言えるようである。つまり、「イールドカーブ・コントロール」や「オーバーシュート型コミットメント」などのように、「言語明瞭、意味不明瞭」な言葉を使うことにより、「一般国民を、煙に巻こうしているような思惑」が存在するようだが、実際には、「頭隠して、尻隠さず」という言葉のとおりに、「海外では、きわめて厳しい見方が出ている状況」とも言えるのである。
具体的には、「奈落の底の上で、綱渡りをしているような状況」などの表現までもが使われているが、実際に、今後の「日銀の資金繰り」を考えると、きわめて厳しい展開が考えられるようである。つまり、「日銀の破綻」が視野に入ってきたようにも感じているが、この時に注意すべき点は、「日銀は破綻しても、破産はしない」という「国家」と同様のメカニズムが働く可能性である。
別の言葉では、「最後の手段」として「紙幣の大増刷」が残されており、実際には、「1945年の終戦時」と同様に、「大インフレを引き起こすことにより、借金を棒引きにする政策」が存在するのである。そのために、「黒田日銀総裁」は、現在でも、依然として、きわめて強気の態度を取っているようにも思われるが、「今後、金利の上昇下で、日銀のバランスシートが、どのように変化するのか?」を考えると、決して、安穏とした状態ではいられないようにも感じられるのである。
つまり、最初に考えなければいけない事態は、「市場の反乱」である「国債価格の暴落」のことだが、この時に発生する事態は、「国債市場のマヒ状態」であり、実際には、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が存在しなくなる状況である。そして、この時には、「国債買い付けの資金源」だった「約300兆円もの当座預金」が、遅かれ早かれ、市中に戻ることが想定されるが、問題は、「この時に、どのような衝撃が、株式や貴金属、あるいは、土地などの価格に発生するのか?」ということである。
具体的には、「30年前のバブル相場」とは比較にならない規模で、「価格の上昇」が発生するものと思われるが、実は、このことが、「金融庁」が目論んでいる「現預金から実物資産への資金移動」とも考えられるのである。つまり、「名目上の価格上昇により、実質的に、国家の借金を棒引きにする政策」のことだが、現在では、水面下で、着々と、この動きが始まっているようにも感じられるのである。(2016.9.26)
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金融庁の思惑
9月15日に「金融庁」が発表した「平成27年事務年度金融レポート」では、いろいろな点が指摘されているが、特に注目すべきことは、「短期借り、中長期貸しのリスク」であり、また、「現預金から実物資産へ資金移動を目論んでいる思惑」とも言えるようだ。具体的には、「日本全体で、短期資金を調達して、中長期の国債などに投資する状況」となっている点に警告を発しながら、「低金利の現預金から、値上がり利益が期待できる株式や土地、あるいは、貴金属などの実物資産」へ資金の移動を誘導したがっているようにも思われたが、この理由としては、「日本の家計金融資産の伸び」が、アメリカやイギリスに比べて、きわめて低い状況だった点も指摘されているのである。
具体的には、「アメリカ」の場合には「過去20年間で約3.11倍」、「イギリス」では「同期間に約2.27倍」となっているのに対し、「日本」では、「同期間に約1.47倍」にしか増えていないのである。そして、この理由としては、「資産の52%が現預金で保有されている状況」が指摘されているが、このことは、「日本人が現預金を安全資産だと考え、株式や貴金属、あるいは、土地などの実物資産に、資金を移動させなかった」ということが主な要因として挙げられているのである。
しかし、この事実を、反対の観点から考えると、「国民が現預金を保有していたために、日銀による異次元の金融緩和が可能だった」とも言えるのだが、実際には、「約300兆円もの当座預金」を、民間の金融機関から借り入れて、大量の国債を、きわめて異常な価格にまで買い上げたからである。つまり、「日本のマイナス金利」については、「大量の現預金」と「日銀による国債の大量買い」が、最も大きな原因だったものと考えているが、現在では、この点に関して、「金融庁」が、大きな政策の転換を図ろうとしているようにも感じられるのである。
つまり、「資産価格の上昇」により、「金融資産の全体量を増やし、結果として、景気の改善を図ろうとしている状況」とも思われるが、この時の問題点は、「金利が上昇すると、日銀のみならず、国家までもが破たん状態に陥る可能性」である。その結果として、大量の紙幣が増刷されるものと思われるが、実際には、「ケインズ」の言葉のとおりに、「通貨の堕落は、100万人に一人も気づかないうちに進行する」という状況となっているのである。別の言葉では、今後、誰もが予想もしなかったほどの「バブル相場」が発生するものと考えているが、実際には、「名目上の価格上昇」にすぎず、実質的には、「通貨の価値」が失われる状況が予想されるのである。(2016.9.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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