なぜ安倍と自民党なのか
- 2016年 11月 12日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
東南アジアからの人たちも一緒に音楽か?何をするのか分からない集まりにでかけた。Webで案内を見つけただけで、どのような集まりなのか漠然としたイメージもない。行ったところで、違和感と疎外感を味わうだけだろうし、人の輪に溶け込めないで、すごすご帰ってくるのが落ちだろうと思っていた。それでも想像もしたことのない視点や何か考えるヒントの一つでも拾えればと期待していた。
歌をうたうこともなければ、楽器を手にすることもない。音楽は、聞いて楽しむものでしかない者には別世界だった。聴いてもらおうという気持ちがどれだけあるのか分からない。十人以上の人たちが好きなように音を出して楽しむ場だった。
反戦や反原発に沖縄問題……民主主義を旗印に反政府の立場の人たちの集まりでもあって、会場の外では、何人かが集まって政治的な話をしていた。そこで、会えてよかったという人に出会えた。ちょっと年配、といっても還暦をゆうに過ぎた者にすれば、まだまだ現役の年齢の方で、気にしていた疑問と同じ疑問をお聞きした。お聞きした疑問、ざっとまとめれば次になる。
原発も沖縄も、オリンピックも豊洲も、日本は問題だらけで、安倍や自民党ではどうにもならない。政権党として倫理もなければ能力もない。それにもかかわらず、支持率でみれば安倍政権も、先の衆議院選挙をみれば自民党が一般大衆の支持を集めている。なんでなんだろうと思うのは俺だけじゃないと思うんだが。俺がおかしいのかと思っちゃうんだけど、問題だらけの日本を見ると、俺がおかしいわけではないと思う。みんな安倍政権のムードや流行のような雰囲気で支持しているんだろうか。どうなってんだろう。
自分自身も、知り合いの多くも全く同じように思っている。その人が変わった人とは思えない。それどころか多少なりとも社会問題に開明的な多くの人たちが似たような気持ちでいると想像している。
社会問題と自民党政権についてどう説明したらいいのかと考えてきた。下記は、起きていることをこう考えれば説明がつくという話であって、好き嫌いの話ではないし、ましてやその状況に納得している訳でもなければ、賛成している訳でもない。
まず先に、選挙について大雑把に言っておこうと思う。社会問題だとか、ましてや平和憲法や機密保護法など、民主的な社会はどうあらざるを得ないかなどという視点で投票する人は少ない。
東京都知事が自民党主流派や主流派の流れをくむ人から、とりあえず自民党とでもという人に変わったとたん、豊洲に関する官僚連中とその連中をとりまく利権団体、その両者を取りまとめる歴代保守本流の持ちつ持たれつの利益共同体のインチキさ加減が漏れ伝わってきた。随分多くのことが明るみになったが、表にだせるものをだしただけで、それで暴露されたなどという気にはなれない。オリンピックなど、まともに暴露したら、それこそ社会がひっくりかえるようなことになりかねないだろう。
最初にはっきりしておいた方がいいと思うのだが、都庁の役人連中と応札した業者の間には経験と知識に雲泥の差がある。都庁の職員の誰がゼネコンやサイバーゼネコン、電気や上下水道、空調システムからセキュリティー……と渡り合える知識や能力を持っているのか?極端に言えば医者と患者の違いがある。ああだのこうだの言ったところで、大人と子供の話しになって、応札した企業に説明されるというより諭される。無茶を言えば、政治がらみの圧力で任を解かれる可能性すらある。
一言で言ってしまえば、もちつもたれつ。業界の意向に沿わない政策は立案でもできないし、立案したとしても実行不可能と嘲笑されて終わる。豊洲にしても、業界のやりたいように、やりたい利益で発注する以外のどのようなやり方があるのか?よくてかたちながら、まあこれならというところで折り合いを付けて、業者にしてもらうしかない。オリンピックのコスト計算もできない行政ができることは許認可だけだろう。
新しい都知事が出てきて、都の役人も業界も政界も困った。今までの日程で、ずぶずぶの予算で工事を進めることで数十万人のそこそこ美味しい仕事が確実だった。土建屋に建築屋、電気周りの、水回りの、空調システムのエンジニアリング会社、資材の運送……が潤えば、行きつけの飲み屋もメシ屋もそれなりの売り上げが期待できた。変な都知事がでてきて、ご破算にしようたって都の一存でどうなるものでなし、みんながこれで行こうって決めたことを、何をいまさらごちゃごちゃいってんだ?というのが関係者の本音だろう。
直接豊洲のプロジェクトに関係する会社の従業員、使用される施設の部品製造から販売まで勘定にいれて、その人たちの消費で潤うところにその家族まで……、利害関係者は百万人を超えるかもしれない。この人たちが仕事(金)欲しさに、安倍政権のままで、猪瀬のままで、舛添えのままで、自民党と公明党のままでと思って投票どころか業界と組織をあげて選挙活動までしてきた。
豊洲の土壌汚染を騒いでいるヤツらはこれだけ大勢の人たちの生活がかかっていることを分かってんのか?あんたらが言ってのは汚染の「可能性」だが、こっちは毎日のメシのことで、これは可能性じゃない。目の前の現実だ。従業員の給料もあれば社会保険もある、家のローンもあるし、子供の教育費もある。あれやこれやを賄うためにも、ちゃんと約束通りにやってもらわなきゃ困る。
誰しも勤労者としての立場と住民(生活者)としての立場がある。生活者の立場からまともな政治をと思うが、生活者の生活(消費)は勤労者としての収入があってはじめて成り立つ。そこから生活者としての視点より収入を生み出す職(収入)の安定を優先した投票になる。要は金、利権がらみの選挙になる。
極端に言えば、職の安定と収入に間違いなければ、政治なんかどうでもいい。汚職でも買収でも談合なんかあってもなくてもかまいやしない。金になって生活が楽になるなら、どの政党だろうが、どの先生だろうが、馴れ合いのもちつもたれつで、いいじゃないか。あたりまえの話じゃないか。
鳥瞰すれば、汚職や談合で税金が誰かの懐に入って、フツーの働いている人(自分)たちが貧しくなるのだが、日常生活で見える景色からしか見えない人たちには見えない。鳥瞰を可能にする情報や知識は税金を懐に入れる人たちや組織が隠している。あまりに隠していることが多すぎて、誰が何をどこまで隠しているのかどころか、隠していたことすら分からなくなって、ちょろっと見えたのが盛り土があるのないのだろう。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6350:161112〕
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