新しい訳文『RTが伝えるロン・ポールの見解:トランプは「影の政府」に抵抗できるか?』
- 2016年 11月 14日
- 評論・紹介・意見
- 童子丸開
バルセロナの童子丸開です。
アメリカ大統領選挙の結果について、もうすでに数えきれないほどの論評が出ているようです。今回は、非常に短いものですが、比較的ロナルド・トランプ氏と立場の近いアメリカ共和党の前下院議員ロン・ポール氏が、RTの番組で語った内容についてのRT記事を翻訳してみました。
ついでに私の方から「前置き」を、というか、RT記事の翻訳を「刺身のツマ」にしてしまった感がありますが、スペインで起こっている議論を混ぜて長々しく書かせていただいております。
興味深いものだとお思いでしたら、ご拡散のほど、よろしくお願いいたします。
(以下、BCN童子丸より)
* * * * * * * * * * * * * *
RTが伝えるロン・ポールの見解
トランプは「影の政府」に抵抗できるか?
今回は、次のRT(ロシア・トゥディ)に掲載された記事を翻訳(仮訳)した。これは前アメリカ下院議員(共和党)ロン・ポールがRTのクロストーク・ショーで語った話の一部を取り上げたものである。原文は以下。
https://www.rt.com/usa/366404-trump-ron-paul-crosstalk/
Trump should resist neocon & shadow gov’t influence to justify people’s hopes – Ron Paul to RT
Published time: 11 Nov, 2016 04:11Edited time: 11 Nov, 2016 06:09
ご存知の通り、ロン・ポールは「リバータリアン」として知られ、今回のアメリカ大統領選挙でも基本的にロナルド・トランプに近い立場を保った。彼はRTに対して、トランプが直面するだろう巨大な圧力とトランプにはそれに抵抗してほしいという希望について語っている。しかし訳文の前に、長いもので申し訳ないが、私の方から「前置き」を述べておきたい。
「トランプ・ショック」が続いている。アメリカでは大統領選挙の結果とトランプの大統領就任を認めようとしない群衆の蜂起が起こっていて、それに対する発砲が起こった、などと伝えられている。それは、2014年春のウクライナを髣髴とさせる光景でもある。あのネオコン戦争ババアには「カラー革命」や「マイダン革命」などに出資したジョージ・ソロスが付いているわけで、彼とその政治謀略グループは、アメリカで「?匹目かのドジョウ」を狙っているのかもしれない。
今度はさすがにうまくいくとは思えないが、アメリカ国民の内に分断と相互の憎しみを植え付けるのに十分だろう。そして「カラー革命」や「アラブの春」や「マイダン(ネオナチ)革命」にもろ手を挙げて賛同しほめそやした「左」や「右」の知識人たちが、またしてもこの反トランプ運動に対して、あらん限りの声で応援歌を歌う。馬鹿馬鹿しいのだが、不幸なことに、もう見慣れた光景である。
今回のアメリカ大統領選挙で最大の敗北者は西側のマスメディアと「左」「右」の知識人階層である 。つまり『影の政府』とか『深層の国家』などと聞くと脊髄反射的に「陰謀論!」と叫ぶタイプの人々である。しかしこの手の者たちは意固地になって「負け」を認めようとしない。いつまでも未練たらしくアンチ・トランプのネオコン応援歌を歌い続けているようだ。この連中がそのようにすればするほど、どんどんとその信頼性を失っていき、何をどう言おうが「どうせこいつら、また嘘をついて俺たちを扇動しようとしていやがる」という目でしか見られなくなるだろう。
スペインでこんなことがあった。新右派政党シウダダノスの党首であるアルベール・リベラが、新左派政党ポデモスに対して、「トランプが勝ってポデモスはさぞ満足だろう」と嘲るように語った。右派の国民党、シウダダノスから、社会労働党に至るまで、ポデモスを「ポピュリズム」として糾弾している。そこでさっそく、欧米のマスコミと知識階層の論調を覆っている「トランプ=ポピュリズム」叩きの空気に便乗したというわけだ。この「ラホイのマスコット」の難癖付けに対して、ポデモス党首のパブロ・イグレシアスは次のように返した。「この選挙結果は重大だ。…これ(トランプ勝利)は新しい種類のファシズムだ」と。ダメだ、コリャ。
訳文中でロン・ポールも心配しているように、欧米オリガルヒ(寡頭支配者)が窮地に立ったとは到底思えない。しかしトランプは少なくともTTIP(欧州版TPP)の押しつけをやめるだろうし、ネオコン・クリントンが熱望していた対ロシア戦争にまでは踏み込まないだろう。せめてその点だけでも、というか、その点が今後のヨーロッパと世界にとって最も重要なはずであり、十分な評価を与え希望を抱いてよいはずだ。たとえどれほどのスケベエ爺で人種差別主義者で大ぼら吹きの扇動家であるとしても、世界を戦争で破滅させる狂ったババアよりはずっとマシだ。女性差別主義者? ならばどうして、アメリカ女性の54%がトランプを支持し、クリントンには44%だったのだ?
中東でネオコンが支援してきたテロ集団も紆余曲折を経ていずれは壊滅させられるだろうし、「難民問題」も時間はかかるだろうが収まっていくだろう。しかしそのようなトランプの評価すべき点を言うと、差別・排外主義に論点をすり替えられて「極右」と罵倒される。それほどにヨーロッパは(たぶん日本も)ネオコン・ネオリベラルの戦略の中に浸りきっているのだ。あまりにも汚染された空気の中に生きているため新鮮な空気を「毒ガスだ」と感じるのかもしれない。
イグレシアスはクリントンに退けられた「社会主義者」サンダースが大統領候補だったら、と嘆いてみせた。しかしウィキリークスによって暴かれた情報によれば、アメリカ民主党の中ではサンダースがどうであれクリントンを候補にすることが既定路線だった。これこそ民主主義の根本的な否定であり、あれほどウォールストリートによる政治支配を拒否した(はずの)サンダースがあっさりと恭順を誓ったことなど道化でしかあるまい。サンダースを真面目に支持した人々は、自分たちの「民主主義」の内実を深刻な決意で洗い直していく必要に迫られるだろう。
イグレシアスだけではないのだが、左翼知識人はトランプの勝利をワイマール体制の中からナチスが台頭しワイマール憲法を否定したことに例えたがる。しかし、リベラルなアメリカにG.W.ブッシュが登場し、911事件とイラク侵略を経て、アメリカ合衆国憲法を「忌々しい紙屑に過ぎない」と叫んだあたりで、すでにアメリカは「新ナチス体制」に入っていたはずだ。ポデモスは、ヨーロッパの左翼政党の中で、ひょっとすると新しい時代の正当な政治潮流を導くのかもしれない、数少ない集団の一つだと私は思っている。それだけに「ポピュリズム」などといった胡散臭いデマキャンペーンを跳ね返していってほしいのだが(参照:当サイト記事)、まあ今後を見てみよう。
なお、今回のトランプ大統領誕生に関して、大いに参考になると思われる他サイトの記事(日本語)をいくつか掲げておきたい。
《 米国民を裏切るが世界を転換するトランプ 田中宇:田中ニュース》
《 ロシア、トルコ、イスラエル、新たな勢力均衡 F. William Engdahl:マスコミに載らない海外記事》
《 ヒラリー電子メール、ディナール金貨と、アラブの春 F. William Engdahl:マスコミに載らない海外記事》
また以下の記事も、何らかの面で参考になると思う。
《 日本は孤立没落の危機!トランプ時代の世界はブロック化する ダイヤモンド誌》
2016年11月13日 バルセロナにて 童子丸開
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
【翻訳・引用開始】
人々の希望を正当にするため、トランプはネオコンと影の政府の影響に抵抗すべきだ
― ロン・ポールがRTに語る
公開時:2016年11月11日 4時11分 編集時:2016年11月11日 6時09分
ドナルド・トランプが次期大統領として成功するか失敗するかは、従来の政権の政策を作ってきた「影の政府」とエリートの構造からの、独立性を保つ彼の能力に大きく依っている。元大統領候補であるロン・ポールはRTに語った。
70歳のトランプは米国大統領となる政治の素人で、その政策は、彼の大統領顧問委員会が与えるアドバイスによって形作られるだろう。
「不幸なことに、トランプに近づきつつあるネオコン主義者たちが数多くいるのです。そしてもし彼がその者たちからアドバイスを受けるようなら、私は良い兆候だとは考えません。」ポールはRTのクロストーク・ショーの司会者ピーター・レイヴィールに語った。
【訳注:このクロストークはこちらのYouTubeをご覧いただきたい。https://www.youtube.com/watch?v=gWrVJHtejkQ】
この元議員は、トランプが支配階級の中の深刻な腐敗に反対して立ち上がったから、そして幅広い中東地域への介入を彼が承認しなかったからこそ、人々が投票したのだと言った。その腐敗はウイキリークスによって選挙戦の間中どんどんと曝されてきたものである。
「選挙戦の期間中、彼はロシアとの対決から後退し対決姿勢を弱めることについて実際にかなり語りました。私はそれを気に入っています。彼は同時に中東地域での戦争をずいぶんと批判しました。我々がISISとテロリズムに対する戦争を加速するべきだと彼は信じています。」ポールはこう強調した。
選挙戦でのレトリックを順守するトランプの能力は、いわゆる「影の政府」の役割と、自分の信念に固執する彼の理想とに依っている。「我々はこの大統領を熟視します。彼が何を言ったのか、我々が彼の顧問団を検分するときに彼が何をするだろうかを熟視します。」ポールは言った。
「しかし非常に率直に言うならば、我々が『深層の国家』あるいは『影の政府』として述べる外部の源泉があります。我々の政府、我々の大統領よりも実際にはるかに力量を持つ人々による多大な影響があるのです。」と、議員は言った。
「そう。トランプは独立心を持つ人間です。今までいた誰よりもはるかにそうなのです。我々は彼が独立性を維持して正しい方向に進んでくれることを望んでいます。しかし、秘密裏に行われるかもしれないことがあまりにも多いことを恐れます。我々の外見上の政府のコントロール外にあるような、実に多くの国民の視野の外にあるようなことです。」と、彼は付け加えた。
ポールは、トランプが自分のNATO政策を実行していくことは困難だろうと語った。選挙戦の間、トランプは、構成員の一部が様々な財政面での義務を遂行していないのでこの軍事同盟から完全に脱退するとほのめかしたのである。
しかし総じて言うとポールは、トランプが世界における米国の地位を守るだろうと考えている。
「彼はこき使われることが大嫌いです。だから、もし我々が世界の中でこき使われているように見えるのなら、彼の反応は素早いでしょうしその行動は中身の無いものにならないでしょうし、そしてそれは人々にも同じようにかかわるべきものです。」ポールは言った。
【翻訳・引用ここまで】
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6353:161114〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。