世界に恥ずかしい! - いち早くトランプにゴマすり、それで得意な安倍首相 -
- 2016年 11月 21日
- 評論・紹介・意見
- トランプ坂井定雄安倍
安倍首相は17日(現地時間)、ニューヨークで大統領選に当選したばかりのトランプ氏と1時間半ほど会談した。世界各国の首脳に先駆けての会談だ。大統領選で、トランプ氏を嫌い、厳しく批判し、クリントン氏に投票した半数以上の選挙民も、トランプ氏に強い批判と警戒心を抱く世界各国も、安倍首相の抜け駆け、ゴマすり会談にあきれ、軽蔑しているに違いない。日本国民として、世界に恥ずかしい。政権が正式に発足し、政策も主要閣僚・機関幹部が就任してからでも十分間に合うし、それが各国首脳の常識ではないか。
それにしても、日本の主要メディア、とくに主要新聞、NHKと民放はどうしたのだ。
この会談後、首相の得意げな顔を大々的に報道しながら、前例のない、常識はずれの素早い「次期」大統領とのゴマすり会談を、批判する論調、識者発言がほとんど見当たらない。
選挙運動中にトランプ氏が発言しまくった人種差別、人権無視、具体的にはイスラム教徒の入国禁止、メキシコ国境での壁建設、自国権益中心の保護主義、国際協調の軽視などの姿勢、政策については、運動中の発言で、就任後は現実的に変化するので心配ないと、日本政府・与党幹部も、財界首脳も強調した。たしかに、政府と議会、経済界を動かすためには、次期大統領も選挙中の発言をそのまま実行できないことがあるだろう。それを議会やメディアから責められることも限られているのが、ある程度は米国の“常識”かもしれない。
歴代の米政権は、民主党だけでなく共和党でも、民主主義、人権擁護、人種差別との戦い、国連中心の国際協調主義をそれなりに重視することによって、戦後世界で米国が大きな役割を果たすことができた。
しかし、トランプ氏は、選挙キャンペーンの人気集め発言ではなく、大統領就任後、米国の利益最優先、医療保険はじめ社会保障の縮小、国連中心の国際協調の軽視、人権無視・人種差別などの政策を、多少弱めることはあっても、維持するに違いない。
それは、確定した次期政権の主要ポストの顔ぶれからも明白だ。イスラム敵視発言を繰り返してきたフリン次期国家安全保障担当大統領補佐官、不法移民1100万人の強制送還を主張するセッションズ次期司法長官、テロ容疑者は水攻め以上に苛烈な拷問で取り調べること容認するボンベオ次期CIA長官など。アフガニスタンとイラクでの戦争を開始したジョージW・ブッシュ政権で重用されたネオコン(右翼的な新保守主義)の一人、ボルトンを軍事政策の中心ポストに配置するのも有力視されている。
「9・11」,アフガン戦争、イラク戦争以来きわめて不安定で、いくつもの国を激しく破壊し、何十万人の死者、何百万人もの難民を出して、なおその残酷な犠牲者が増え続けている世界で、トランプ次期米政権がどのような役割を果たすのか、きわめて不安だ。
それだけではない。世界では右翼的な政治勢力が、ロシアのプーチン政権をはじめ、東欧、西欧で勢力を拡大、フランスですら次期大統領選挙で右翼のルペン政権が生まれる可能性があるという。プーチン大統領は、トランプ氏と早速エールを交換した。世界で最も喜んだには、イスラエルのネタニヤフ首相だろう。残忍なパレスチナ攻撃・入植地拡大が、米国からの抑制がなくなり、やりたい放題になるからだ。「これで中東和平交渉は死んだ」とパレスチナでは誰もがみなしているという。
安倍首相は、トランプ氏との抜け駆け会談で、右翼的なポピュリズムの最前列に加わろうとしているのだ。
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