富士山日記 富士山測候所に住んでみて
- 2016年 11月 26日
- 評論・紹介・意見
- 村上 祐資
標高3776メートル、日本でいちばん高い住まいから。
富士山特別地域気象観測所、むかしでいう富士山測候所がいまの僕の住まい。ここは気象庁が2004年秋に有人観測を終えたあと、夏の2ヶ月間だけを「NPO法人・富士山測候所を活用する会」が借りて受けている建物だ。日本でいちばん高いこの場所で、大気科学や高所医療、生態学・永久凍土、放射線科学など様々な研究者が、ここでしか採れない貴重なデータを観測している。加えて、高所順応トレーニングや青少年へに向けての自然体験・教育、無線通信の実験など、標高3776メートルの活用分野は多岐にわたる。僕はというと、研究者の一員として、この建物の暮らしがどのようなものか、住まいとしての性能はどんなものなのかを調べるために、ここに居る。2004年以前は、気象庁の職員は3週間交代でここに勤務していた。だったら僕も3週間ここに住んでみよう。2010年8月19日木曜日
18日の夕方には測候所に着く予定だったのだけれど、八合目まで辿り着いた頃にはゴロゴロと雷雲が空を覆い、滝のような雨もザァーザァー降ってきた。
ほんの少し前までは山頂まですっきりと晴れ渡っていたのに、霧が流れてきてちょっとポツポツとしてきたなあ、と思った途端に大雨となった。
雨合羽の中でじっと雨の切れ間が来るのを待っていたけれど、どうにもやみそうに無い。
仕方なく登頂を断念して小屋に泊まることにした。
2010年8月17日火曜日
来月のヒマラヤ行きの手続きの関係で、1日だけ下山してきた。
久しぶりの下界は空気が重く、肺が軽やかだ。
だけど、暑い・・・。
南極と比べると気温差は80℃近い。じりじりと照りつける太陽の暑さは富士山頂の方が上だけれど、肌にまとわりつく蒸し暑さと地面からの熱気にヘトヘトになる。
下界の暑さにはどうにも嫌気がさすけれど、やっぱり嬉しいのは水がたっぷり使えること。下山してすぐに、麓の温泉で10日ぶりに風呂に入った。一生懸命3回くらいアタマやカラダを洗ったけれど、次から次へといくらでも垢が出てくる。やっぱり臭かったんだろうか・・。
2010年8月15日日曜日
今日8月15日は、噴煙の中から富士山が姿を現した日とされている。
富士山頂の奥宮と久須志神社では、毎年この日に例祭が執り行われる。
富士山関係者が神社に集まり、今年も無事にこの日を迎えられたことに感謝の気持ちを捧げる。
例祭のあと、神主さんや宮司さんたちから色々と話を聞かせて頂き、奥宮での暮らしを拝見させて頂いた。
囲炉裏を囲みながら談笑する和服姿の皆さん。
ファインダー越しに見るその風景は、きっと今も昔も変わっていないのだろう。
村上 祐資
むらかみ ゆうすけ
1978年7月生まれ。極地建築研究者。
建築と人間の関わりを、極地というフィールドに自分の身を置きながら調べている。
第50次日本南極地域観測隊・越冬隊員。建築学士。政策・メディア、環境デザイン学
修士。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程。
初出:NPO法人「富士山測候所を活用する会」より許可を得て転載
http://www.fieldnote.net/Fuji/Blog/Blog.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6380:161126〕
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