自衛隊が、実際に駆けつけ警護に出動した時に何が生じるか
- 2016年 12月 2日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
南スーダンに自衛隊駆けつけ警護の部隊が派遣され、新安保体制の下での新しい任務遂行が求められる隊員の命運が案じられる処です。
その憂慮すべき実相を、当の自衛隊の訓練等から指摘をしてみたい、と思います。 その理由は、巷間、南スーダンの現実が広く一般に周知されずに居る間に派遣されてしまったようであり、当地の現実に照らして、派遣された自衛隊の力量が適応しないのではないか、と観受けられるからです。
駆けつけ警護の訓練では、軽機関銃登載の軽装甲車が運用されていて、隊員は、自衛隊正式の八九式自動小銃を携帯していました。 幹部と思しき隊員は、拳銃(シグ・ザウワーP220か?未確認)を装備していました。
駆けつけ警護訓練、武器使用場面なし 「世論配慮か」 朝日新聞 DIGITAL
http://www.asahi.com/articles/ASJBS5SLRJBSUTIL04W.html
その装備を見て観ましょう。 まず、軽装甲車は、「装甲車」とあるので間違いますが、性能等が公表されていないので、外見から観るのみで言えるのは、精々の処、拳銃弾等に耐えられる程度であろうことが、見るからに薄い「装甲」から察せられます。 小型トラックの範疇のものでしょう。
仮に、実戦であれば、歩兵の携行兵器である小銃に接続した擲弾発射筒等で簡単に破壊されることでしょう。
下は、米海兵隊のM16A1に附帯させたM203擲弾発射筒(M203 Grenade Launcher)の訓練です。 訓練に依り、容易に目標に的中させることが可能です。
US Marines Shooting the Powerfull M203 Grenade Launcher With Perfect Hits Daily Military Defense & Archive You-tube https://www.youtube.com/watch?v=Gw6KNPYOppc
自衛隊正式採用の軽機関銃、小銃の性能等は、公表されていませんし、評価可能な資料を持っていませんので、何も言えません。 ということは、実戦に依る評価が確立していない、と云うことであり、現地の武装勢力が有する武器に比べて心許ない思いがします。
しかし、駆けつけ警護が現実化すると、相当の確率で、南スーダン政府軍等の正規軍と交戦が発生します。 現実に、当地で今夏に発生した軍事的衝突の最中に、政府軍と思しき軍人の一隊が国連施設を襲い、また、国際援助組織の施設を襲い、殺人、強姦等を犯したのです。 また、国連PKOの中国軍部隊を襲撃し、中国兵二名が戦死しました。
彼等の所持する武器を写真で見ると、旧ソ連で開発されたAK-74自動小銃が確認出来ました。 この型式は、突撃銃として有名で今日では、東欧でも生産されて世界に流通していますが、有効性が戦場で試された銃として有名です。 米国のM16と同じく小口径で半自動と全自動を切り替えられます。
下の動画は、ポーランド製のAK-74の銃床が折りたたみ式のものを半・全自動発射したものです。 反動が少なく制御が容易なのが分かります。
Full Auto Polish WZ.88 Tantal AK-74 Vs. Car justinmcmillion You-tube https://www.youtube.com/watch?v=vYu3FMWIZZM
更に、政府軍は、イスラエル製の最新式突撃銃も装備していることが国連に依って確認されています。
South Sudan army using Israeli weapons in civil war, UN says By JTA and Times of Israel staff August 26, 2015, 5:52 pm http://www.timesofisrael.com/south-sudan-army-using-israeli-weapons-in-civil-war-un-says/
最も憂慮されることは、自衛隊が、有事の際の緊急医療体制を整備していないことです。 この事態は、流血が予期される現在に、軍事専門家より厳しい指摘がされていますが、実戦経験のある諸国の戦場での緊急医療体制に比べると、自衛隊は、第二次大戦時と同等か、それ以下の状況であるそうです。
南スーダンへの自衛隊「駆けつけ警護」は楽観的過ぎる ジャーナリスト 安積明子=文
2016.11.28 PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/20735
私自身が言えることは、自衛隊員個々が所持している緊急事態時の医療備品が貧弱であり、実戦の現場での緊急医療を施す訓練も充分では無い事実です。
下に挙げましたのは、英軍の実戦を想定した訓練の様子ですが、負傷した兵士の応急手当と後送をも含めて入念に演習しています。
Saving Lives Under Fire Forces TV You-tube https://www.youtube.com/watch?v=BwuiGtXwNWw
下は、アフガニスタンでの実戦に対応した英国MERT(Medical Emergency Response Team:医療緊急対応チーム)の活動を紹介したものですが、ヘリコプター(CH47チヌーク)を緊急輸送対応の医療設備を登載した機体に整備し、緊急医療チームが搭乗し必要な医療を施しつつ基地に後送するものです。
The Challenges Of Saving Lives In Combat Zones Forces TV You-tube
https://www.youtube.com/watch?v=oEqxgwJZ2t0
医療設備登載車両等の派遣も無いようですので、当然、医療チーム搭乗の緊急医療の可能なヘリコプターも保有していなのでしょうが、これでは、実際に銃撃戦が発生すれば死傷者が続出することでしょう。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6390:161202〕
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