「会長が籾井さんだから」の言い訳が利かなくなった時
- 2016年 12月 6日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2016年12月6日
昨夜のNHKニュース7~政府広報報道の長期保存版~
昨夜のNHKニュース7をご覧になっただろうか? リアルタイムで視てあ然とし予約で撮った録画を、改めてメモを取りながら視た。NHK報道の政府広報ぶりを示す典型例として長期保存版になりそうな録画だった。放送項目、時間配分は次のとおり。
2016年12月5日 NHKニュース7 ウオッチ・メモ
1. 安倍首相、真珠湾訪問 犠牲者慰霊の意向 5分51秒
2. イタリア国民投票、首相が辞任表明 6分19秒
3. ブレーキ作動などデータ分析、福岡3人死亡事故 3分38秒
4. まとめ記事、掲載中止相次ぐ 3分02秒
5. 超高層ビルに雷 破片落下の危険 3分41秒
6. 参院TPP特別委 安倍首相、自由貿易の重要性示す 1分25秒
7. 大谷、来期は2億7000万円 1分28秒
8. 安倍首相、真珠湾訪問 犠牲者慰霊の意向 2分34秒
9. 天気予報 43秒
コメント
1. 安倍首相の真珠湾訪問の意向発表を緊急重大ニュースかのように番組内で2度、延べ8分25秒を充てた。放送内容も安倍首相の独演、岩田明子記者の協演解説といえるものだった。 さらに、オバマ氏の広島訪問の返礼といった「強いられた訪問であってはならない」というオバマ大統領の気配りを伝え、「安倍首相独自の判断による訪問である」と字幕付きで伝える念の入れようは尋常ではない。
2.③は続報。一瞬にして両親を亡くした子供のことを聞くと心が痛む。しかし、「ブレーキ作動などデータ分析」という情報を3番目に3分38秒を充てて伝える話題とは思えない。
3 ④⑤は今日7時のニュースで伝えるほどのニュース価値があるとは思えない。もっと時間枠のある「おはよう日本」で取り上げればよいのではないか。
4. ⑥の扱いに大きな疑問。「国のかたちを変える」とまで言われるTPP協定案。大詰めを迎えた国会審議というのに、質問に立った与野党8人のうち、放送されたのは公明党の議員と安倍首相との一往復の質疑のみ。時間にして1分25秒。⑦の「大谷、来期2億7,000万円」という話題よりも短かった。なぜ公明党議員の質問だけなのか? この1点だけでも大問題と思えた。
「会長が籾井さんだから」の言い訳が外れた時
籾井現会長の不再任が濃厚になったと各紙が伝えている。当然のことというより、今まで罷免もされず、会長職にとどまり続けさせた経営委員会の体たらくが情けない。 そんな中、今夜のニュース7を視て考えた。今日に始まった感想ではないが。
籾井氏が会長職を退いたとして、今日のようなあからさまな政府広報はNHKの報道番組から姿を消すのか? 「会長が籾井さんだから」という言い訳が、「政治部には、上司の指示には逆らえない」という言い訳にとって代わることはないのか? NHKの番組制作スタッフの個としてのジャーナリズム精神の真価が問われ、NHKの報道番組の真贋を見極める視聴者の眼力、醜悪な番組を正す行動力が試される時である。
言論の自由を実践する場はメディアの外ではなく、内にある
「J氏は新聞社に身を置きながら、『世界』に書いているようなことを組織内で堂々と主張し、上司と闘っているのだろうか。新聞労連の委員長氏は出身母体に戻ったとき、数々の正論をその通りに主張し、堂々と社内で上司と議論しているのだろうか。」 「『言論の自由』は、対権力との関係において語られるが、しかし、言論の自由を実践する場所は『対権力=メディア企業の外側』ではなく、メディア企業の内部にこそある。」
(高田昌幸「北海道新聞を去るにあたって 『組織』ジャーナリズムとジャーナリスト『個人』の狭間で」『マスコミ市民』2011年9月)
初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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