かくも長き不況 ― 30年のゼロ成長を認識しよう ―
- 2017年 1月 16日
- 評論・紹介・意見
- 半澤健市経済
中国には抜かれたが、日本は今も世界第三位の経済大国であり、「アベノミクス」は道半ばだが、まだ期待は持てる。これが2017年々初の「大本営」の認識であり、それに概ね追随する大手メディアの論調である。世論調査によれば、内閣支持率は依然として50%を上回っている。大衆の意識も似たようなものであろう。
《戦後72年目にみる「経済大国」の成長》
この認識は正しいのか。考察と分析はゴマンとある。以下の私見―正確にはある調査の「引用」―もその一つに過ぎないが、誤認を正したいと思い書く。
戦後の高度成長の起点はいつか。
「経済白書」が「もはや戦後ではない」と書いた1956年とするか、「所得倍増計画」発表の1960年とするか。判定は難しい。前者は「55年体制」に対応し、後者は「経済の季節」への国家理念の明示に対応する。
戦後の高度成長の終点はいつか。
73年のオイルショックで、翌年のGDPは戦後初めてマイナスを記録した。これを終点とすると、オイルショックの克服とそれに続くバブル好況の座りが悪い。日経平均は、89年の大納会に史上最高値をつけたあと翌年から暴落に転じた。不動産バブル崩壊はゆっくりと進んだが、ここでは90年を終点とする。
56年から90年まで、34年間ある。60年起点なら30年間である。
90年に始まった「失われた10年」は、すでに27年目に入っている。安倍政権は、2020年頃でのGDP600兆円を目標にしてる。だが、本気で信ずる日本人は皆無だろう。今の500兆円強の横ばいが精々だ。それが大方の見方である。
自分で、色んな統計数字を、あれこれ調べ組み合わせてみた。
その途中、で私の直感にフィットするデータを発見した。本川裕氏(ほんかわ・ゆたか)の「社会実情データ図録」という優れた経済統計のサイトにおいてである。
《バブル崩壊以後の30年はゼロ成長》
同サイトのデータに、3つの期間についてGDPの実質経済成長率の「平均」を示したものがある。「平均」は、対前年のGDP成長率数値を合計し、対応年数で割っている。単純であるがわかりやすい。数字は次の通りである。
(1)1956~73年 高度成長期前半 9.1% 18年間
*60~73年の14年間は 9.3%
(2)1974~90年 高度成長期後半 4.2% 16年間
(3)91~2015年 失われた10年 0.9% 24年間
この数字から、私(半澤)の責任で誇張した表現をすれば次の通りとなる。
・高度成長期前半の平均成長率は「10%」。
・高度成長期後半の平均成長率は「5%」。
・バブル崩壊後の平均成長率は「0%」、後述する公債発行を考慮すればマイナスか。
《「失われた10年」の異様な長さ》
戦後72年というが、「もはや戦後ではない」1956年からは60年間、その後ろ半分は、ゼロ成長である。それが「経済大国」の実態であり、大半を担った自民党政権の成果である。日本近代150年でこんなに長い不況はない。
1990年度末の公債発行残高は、166兆円。2017年度末にはそれが、838兆円であり、672兆円増加した。残高の80%はこの間に増加したのである。(財務省HP)
この26年間、首相は次のように変わった。
海部俊樹、宮沢喜一、細川護煕(日本新党)、羽田孜(新生党)、村山富市(日本社会党)、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三(第一次)、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫(民主党)、菅直人(同)、野田佳彦(同)、安倍晋三(間隔をおいての第二次)。
自民党以外の首相任期を合計すると約5年半である。
以上、客観的事実を書いてきたつもりである。この「事実」が読者諸賢の知見に資すれば幸いである。知ってか知らずか、安倍晋三首相が新年早々、諸外国にカネをバラまく旅を続けている。(2017/01/11)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6463:170116〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。