HOWS文化講座 俗情に抗する精神――いま大西巨人を読む
- 2017年 1月 16日
- 催し物案内
- 逢坂秀人
報告=田代ゆき(福岡市文学館)/山口直孝(二松学舎大学教員)
2月26日(日)13時~16時30分
本郷文化フォーラムワーカーズスクールホール
東京都文京区本郷3-38-10さかえビル2階
TEL:03(3818)6671URL:http//www.hows.jpn.org/
大西巨人がこの世を去ってから間もなく3年が経とうとしている。2008年ETV特集「神聖喜劇ふたたび~作家大西巨人のたたかい」に出演した際、巨人は、「ちょうど今の空気はね、満州事変の前みたいな空気を感じる」と発言していた。「積極的平和主義」を安倍政権が掲げる今は、すでに戦時下にあると言ってよい。ジャーナリズムは、同調圧力の前に異論を唱えることすらできず、死に体の状態である。思考の幅が狭められている中で、公正の原則の実践に努めた巨人の小説・批評は、すぐれた参照項となるものである。本講座では、権力に追随する俗情に対して巨人がいかにたたかったかを「現代に於けるジョルジュ・ソレルのヴァリエイションについて」(1947年)、「コンプレックス脱却の当為」(1997年)などの文章を手がかりに具体的に検証する。巨人の批判は、敵に対してと同時に、自分たちの内部に生じる退廃や弱さにも向けられるという特徴を持つ。自他を同時に撃つ批評精神から、反動的な状況に抗し、運動を鍛えながら発展させていく手立てを探りたい。
講師プロフィール
田代ゆき(福岡市文学館嘱託員)
担当した企画展示に「大西巨人走り続ける作家」「サークル誌の時代 1950年代福岡の文学運動」「運動族 花田清輝」、大西巨人についての文章に「虚無よりの創造――戦後作家、大西巨人の出発地点を問う 」がある。)
山口直孝(二松學舍大学教員)
日本近代文学専攻。著書に『私を語る小説の誕生――近松秋江・志賀直哉の出発期』(翰林書房)。大西巨人に関する論考に「大西巨人の文芸観――初期批評の軌跡」、「知識人の責務――大西巨人短編集『五里霧』の空所」などがある。
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