DHC吉田への逆風のさなかに「勝利報告集会」ー「DHCスラップ訴訟」を許さない・第98弾
- 2017年 1月 27日
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- 弁護士
タイミングよく、DHCと吉田嘉明に対する世の批判の風が強く吹く中で、明後日(1月26日・土曜日)の午後、「DHCスラップ訴訟勝利報告集会」が行われる。
その集会の目玉は二つある。
一つ目は、田島泰彦上智大学教授(メディア法)の記念講演。タイトルが、「国際動向のなかの名誉毀損法改革とスラップ訴訟」。田島さんご自身が、「おそらく日本ではそういう議論がほとんどなかった論点と思います」という意気込みの講演。
二つ目が、反撃訴訟の概要発表と解説。攻守ところを変えて、今度はこちらが原告となってDHC・吉田に損害賠償請求訴訟を提起することになる。その訴訟の内容を明らかにする。
さて、DHC・吉田に吹く批判の風である。
本日の赤旗社会面(15面)のトップに、「沖縄デマ番組『ニュース女子』」「『事実まげた』放送せず」「ミヤギテレビ、社内考査で判断」の見出し。DHC提供のデマ・ヘイト番組『ニュース女子』のこの回の放映を、ミヤギテレビは放送しないと決めたのだという。その記事を紹介しておきたい。
沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド建設に反対している人は「金で雇われている」などとデマのリポートをしたテレビ番組「ニュース女子」を東京MXテレビが放送したことに批判が集中しています。この問題で、「ニュース女子」の放送枠があるローカル局「ミヤギテレビ」(仙台市)が社内の考査でこの回の番組を「事実をまげている」と判断、放送しないことを決めていたことが24日、本紙の調べで明らかになりました。
「ニュース女子」は化粧品・健康食品製造販売のDHC(吉田嘉明会長)が地方テレビ局から時間枠を買い取り、子会社「DHCシアター」が制作した番組を持ち込み、地上波で放送しています。ミヤギテレビは毎週水曜日の午前2時29分からの深夜時間帯に「ニュース女子」を放送しています。
沖縄のデマリポートを合む回の「ニュース女子」について、同局が事前に行った考査では、放送法が定める「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」という規定に照らして、放送できないと判断しました。(以下略)。
DHC・吉田嘉明のヘイト体質については、先日(本年1月17日)「吉田嘉明の驚くべきヘイトスピーチ-『DHCスラップ訴訟』を許さない・第93弾」で、DHCの公式ホームページに掲載されている、下記の会長メッセージをご紹介した。
http://article9.jp/wordpress/?p=7992
http://top.dhc.co.jp/company/image/cp/message1.pdf
もう一つ紹介しておきたい。同じサイトの同じコーナーにもう一つの「会長(吉田嘉明)メッセージ」がある。昨年(2016年)の2月21日付けのもの。実はこれが、DHCスラップ訴訟で、書証として提出されている。吉田嘉明の認識によれば、「いま日本に驚くほどの在日が住んでいます。」「似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう。」「問題なのは日本人として帰化しているのに日本の悪口ばっかり言っていたり、徒党を組んで在日集団を作ろうとしている輩」「法曹界(裁判官、弁護士、特に東大出身)には特に多い」というのだ。「似非日本人が跳梁跋扈する世の中の、特に問題の法曹界の、その中枢に位置する最高裁に提出されているのだ。(第93弾参照)極めて興味深い内容なので、ご注目いただきたい。
標題は、「スラップ訴訟云々に関して」というもの。念のためだが、「云々」は「うんぬん」と読む。昨日(1月25日)アベ首相が予算委員会答弁で官僚の作文を棒読みした「でんでん」では何のことだか分からない。どだい、漢字が違っている。
記事の内容は、私(澤藤)への中傷に徹したもの。しかし、そのなかに幾つか重要な情報が含まれている。
https://top.dhc.co.jp/company/jp/cp.html
澤藤被告が「吉田嘉明が自分の儲けのために、尻尾を振ってくる矜持のない政治家を金で買った」とか「大金持ちが更なる利潤を追求するために、行政の規制緩和を求めて政治家に金を出した」とか、その他諸々の悪口雑言をインターネットに並べ立て小生を悪罵していたために提訴したわけですが、そのどこがスラップ訴訟なのでしょうか。事実無根の、全く根拠のない嘘でたらめを、しかも悪意を持って世間に広言されたら誰もが怒りに震えるのは当然のことでしょう。
私(澤藤)が、「事実無根の、全く根拠のない嘘でたらめ」を言った事実はない。このことは、訴訟で決着済みだ。また、私が「(吉田に)悪意を持って世間に広言」したこともない。「必要で適切な、徹底した批判」をしたに過ぎない。その批判の言論は、健全な民主主義社会における不可欠な構成要素として、発表の自由が保障されなければならない。
渡辺氏のことを矜持のない政治家だと贅言していますが、無名の弁護士が売名のために騒ぎまくっている行為こそが矜持のない醜態だといえるのではないでしょうか。…虚名の三百代言ごときに矜持がないなどとは言われたくはありません。
おやおや、「無名の弁護士」「売名」「騒ぎまくっている」「醜態」「虚名の三百代言ごとき」…。文脈から見て、これは明らかに私についてのこと。この原稿の掲載には、弁護士のチェックがはいっているのだろうか。相当にヤバイ。人格攻撃として、侮辱になり得る表現。提訴材料としてストックしておこう。2019年2月までは時効にかからない。
「行政の規制緩和を求めて政治家に金を出した」などと妄言していますが、小生がただの一度でも当時の渡辺議員に行政への橋渡しを依頼したことがあるのか、直接渡辺氏なり、厚労省の担当官に尋ねてみればわかることです。
この児戯に等しい立論に唖然とする。こんな程度の議論で、世の中に通用すると思いこんでいることが恐ろしい。
渡辺騒動の後、澤藤被告始め数十名の反日の徒より、小生および会社に対する事実無根の誹膀中傷をインターネットに書き散らかされました。
おやおや、唐突に「反日の徒」のレッテル。私も、「反日の徒」の一員のようだ。DHC・吉田を批判すれば「反日の徒」だという非論理で根拠のない決め付け。そして、相手に「反日の徒」とレッテルを貼れば、相手が恐れ入るだろう、あるいは社会が自分に味方してくれるだろうという、思考の幼児性。困ったもの。
当社の顧問弁護士等とともに、どのケースなら確実に勝訴の見込みがあるかを慎重に熟慮検討した上で、特に悪辣な十件ほどを選んで提訴したものです。専門の顧問弁護士が確実に勝てると思って行ったことです。やみくもに誰も被もと提訴したわけではありません。
これは、大切な情報。「専門の顧問弁護士が確実に勝てるとアドバイスした」から、「特に悪辣な十件ほど」を選んで提訴したという。それなら弁護士の責任が重大。
提訴後、澤藤被告の言論を封じたどころか、彼は連日のごとく悪口雑言をブログに書きまくっているではありませんか。全く萎縮などしていません。
これは吉田の指摘のとおり。確かに私は萎縮していない。むしろ怒って、批判を続けている。しかし、それは例外に過ぎない。社会の普通人は6000万円請求の提訴には萎縮せざるを得ない。私以外に被告とされた9人も、その周辺の被告にされなかった多くの人々も、「DHC・吉田を批判すると、むやみな高額損害賠償請求訴訟を提訴されることになる。提訴されては面倒この上ない。だからDHC・吉田の批判は控えた方が利口だ」ということになってしまっているのだ。
(澤藤は)そもそもスラップ訴訟の意味すら分かっていません。拡大解釈も甚だしい。SLAPP と はStrategic Lawsuit Against Public Participationの略で「社会参加を邪魔するための戦略的訴訟」ということですが、今回の訴訟のどこが被告の社会参加を邪魔しているのか、どこが戦略的なのか笑ってしまいます。
ホントに嗤ってしまう。だれから教えこまれたのか、受け売りの聞きかじりを、分かった風に言わない方がよい。Public Participationの典型が公的な言論である。公人、あるいは公的人物の公的事項に関する言論こそがPublic Participationであり、民事訴訟によるその妨害こそが、SLAPPといわれる訴訟類型の典型なのだ。
名誉棄損の裁判を起こすのは驚くほどの金銭を要し、普通の人はお金のことを考えただけで身を引いてしまいます。
ほう。吉田嘉明が「驚くほどの金銭」とはいくらの金額なのだろうか。いったい弁護士にいくら払ったのか、次の訴訟で問い質してみたいものだ。
インターネットの醜さはどうでしょうか。人間生活を完全に壊しています。
そのとおりだ、インターネットの世界では、匿名のネトウヨ諸君が百鬼夜行のありさまだ。植村隆さんの娘さんに対する中傷誹謗の醜さは、「人間生活を完全に壊しています」と言って過言でない。ここだけは見解が一致したようだ。
共同通信も最近では朝日に劣らず反日メディアなのではと危惧され始めています。どこの国の人かわからないような似非日本人が跳梁跋扈している世の中…。
この人の文章には、脈絡なく「反日」「似非日本人」が繰り返される。私(澤藤)も、「反日」「似非日本人」なのだ。
そして嘘、悪口の言いたい放題が許されている世の中には私は断固反対します。嘘つきは信用できません。
おそらくは、私(澤藤)の、DHC・吉田批判の言論を「嘘、悪口の言いたい放題」と言いたいのであろう。そして、私が裁判に勝ったことを「言いたい放題が許されている世の中」と憤懣やるかたないとし、その上で「そのような世の中」には「断固反対」というのだ。悔しさが滲み出ていることは察するが、吉田は裁判から何も学んでいないようだ。
私(澤藤)と、DHC・吉田とは同じ平面にいる対等の法主体ではない。私の吉田に対する批判の許容度は大きく、吉田の私に対する批判の許容度は小さいのだ。
吉田は大企業の経営者で、サプリメントや化粧品という消費者の健康に直接関わる商品の製造と販売に責任を負う立場にある。それゆえに、行政規制に服し、政治や行政に関与せざるを得ない公的立場にあるのだ。しかも、厚生行政に服することに公然と不服を表明し、行政規制の緩和や撤廃を政策として掲げる政治家に、巨額の裏金を提供してもいる。こういう人物にこそ、批判の言論が必要であり、こういう人物であればこそ言論による手痛い批判を甘受しなければならない。
吉田嘉明に限らず、同様の立場にあるものには、その理をよく弁えた言動が必要なのだ。
(2017年1月26日)
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「DHCスラップ」勝利報告集会は明後日の土曜日午後
弁護士 澤藤統一郎
私自身が訴えられ、6000万円を請求された「DHCスラップ訴訟」。その勝訴確定報告集会が明後日の土曜日に迫りました。その勝訴の意義を確認するとともに、攻守ところを変えた反撃訴訟の出発点ともいたします。ぜひ、集会にご参加ください。
日程と場所は以下のとおりです。
☆時 2017年1月28日(土)午後(1時30分~4時)
☆所 日比谷公園内の「千代田区立日比谷図書文化館」4階
「スタジオプラス小ホール」
☆進行
弁護団長挨拶
田島泰彦先生記念講演(「国際動向のなかの名誉毀損法改革とスラップ訴訟(仮題)」)
常任弁護団員からの解説
テーマは、
「名誉毀損訴訟の構造」
「サプリメントの消費者問題」
「反撃訴訟の内容」
☆会場発言(スラップ被害経験者+支援者)
☆澤藤挨拶
・資料集を配布いたします。反撃訴訟の訴状案も用意いたします。
・資料代500円をお願いいたします。
言論の自由の大切さと思われる皆さまに、集会へのご参加と、ご発言をお願いいたします。
「DHCスラップ訴訟」とは
私は、ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」を毎日連載しています。既に、連続1400日になろうとしています。
そのブログに、DHC・吉田嘉明を批判する記事を3本載せました。「カネで政治を操ろうとした」ことに対する政治的批判の記事です。
DHC・吉田はこれを「名誉毀損」として、私を被告とする2000万円の損害賠償請求訴訟を提起しました。2014年4月のことです。
私は、この提訴をスラップ訴訟として違法だとブログに掲載しました。「DHCスラップ訴訟を許さない」とするテーマでの掲載は既に、90回を超します。そうしたら、私に対する損害賠償請求額が6000万円に跳ね上がりました。
この訴訟は、いったい何だったのでしょうか。その提訴と応訴が応訴が持つ意味は、次のように整理できると思います。
1 言論の自由に対する攻撃とその反撃であった。
2 とりわけ政治的言論(攻撃されたものは「政治とカネ」に関わる政治的言論)の自由をめぐる攻防であった。
3 またすぐれて消費者問題であった。(攻撃されたものは「消費者利益を目的とする行政規制」)
4 さらに、民事訴訟の訴権濫用の問題であった。
私は、言論萎縮を狙ったスラップ訴訟の悪辣さ、その害悪を身をもって体験しました。「これは自分一人の問題ではない」「自分が萎縮すれば、多くの人の言論の自由が損なわれることになる」「不当な攻撃とは闘わなければならない」「闘いを放棄すれば、DHC・吉田の思う壺ではないか」「私は弁護士だ。自分の権利も擁護できないで、依頼者の人権を守ることはできない」。そう思い、自分を励ましながらの応訴でした。
スラップ常習者と言って差し支えないDHC・吉田には、反撃訴訟が必要だと思います。引き続いてのご支援をお願いいたします。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.01.26より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=8038
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔eye3873:170127〕
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