沈みゆく「原子力戦艦・東芝」= WHの米国破産法申請すれども東芝の海外事業のリスク遮断と東芝本体への損益影響は不透明
- 2017年 4月 1日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
(最初に若干のことです)
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1.現代の治安維持法「共謀罪」関連
(1)(別添PDFファイル)総がかり行動実行委員会の行動予定(2017年4月)
(2)(別添PDFファイル)(チラシ)(4.6)ストップ共謀罪 日比谷野音集会&デモ
(3)(別添PDFファイル)(チラシ)(4.23)1億3千万人 共謀の日
(4)(別添PDFファイル)「共謀罪」の創設に反対する緊急統一署名 用紙
(5)共謀罪反対百人委員会
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~adachi/committee/committee.htm
(6)「共謀罪」法案、民進が法相に答弁求める40項目作成:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASK3Z61DQK3ZUTFK01C.html?iref=comtop_list_pol_n03
2.医療事故や医学部・大学等の事件の分析から、事故の無い医療と適正な研究教育の実現を!金沢大学准教授・小川和宏のブログ
http://ameblo.jp/iryouziko
(関連)金沢大准教授が上司ら提訴 内部告発で嫌がらせ 報復への制裁強化を~消費者庁が改正検討|オリンパス現役社員のブログ 「公益通報者が守られる社会を!ネットワーク」
http://ameblo.jp/jpmax/entry-11975379708.html
3.ユニオン「反日左翼カルト集団」説に反論する!:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/011600039/032800007/?n_cid=nbpnbo_mlpus&rt=nocnt
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原子力・原発ビジネスにのめり込んでにっちもさっちもいかなくなった東芝が、ついに米連結子会社の原子炉メーカー=ウェスチングハウス(WH)社への破産法適用を米国裁判所に申請いたしました。東芝は、この会社の関係で1兆円を超す損害を被り、かつ、未だにその泥沼債務から抜け出ることができていません。以下、関連報道を整理しておきましょう。最初に、渡辺悦司さんからのメールをご紹介します。
以下はメール転送です。
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皆さま、渡辺悦司より
東芝が、3月30日、米原子力子会社ウェスティングハウスの破産法第11条の適用を米裁判所に申請しました(下記東芝の声明)。この日付は、「原発に未来はない」こと、ビジネスとして「破綻しかない」ことを、全世界に向かって公然と示した歴史的な日になるでしょう。
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pr20170329.htm
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東芝経営陣は、今回のWHの破産処理により、原発建設での損失が今以上に膨れあがる「リスクを切り離した」としていますが、これは、あまりにも楽観論でしょう。前回も紹介した小笠原啓氏の論考が、事態を客観的によく見ているのではないかと思います。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20141008/272318/?rt=nocnt
おそらく、小笠原氏の線で書かれている日経新聞の論説も参考になります。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29HOS_Z20C17A3EA2000/
東芝の最終赤字は前回発表の3900億円から、今回は1兆100億円にまで拡大し、3月末時点での債務超過額は、前回発表の1500億円から、6200億円にまで拡大しました。つまり、4700億円悪化したことになります。前回発表されていた米原発事業での損失7125億円との関わりでは、それがなくなった代わりに、米原発事業での損失が1兆2000億円規模に増えたことになります。
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東芝は、WHの破産にもかかわらず、米国や中国での原発建設を続けると声明していますが、そのようなことが本来可能とは思われません。もし新設工事を続けるなら、WHの赤字は、さらに数兆円単位で急速に膨れあがっていくことになります(簡単に計算してもアメリカだけで最低で3兆円程度)。
さらに、米電力会社や納入業者などが、WHの親会社であった東芝に対して損害賠償を請求するリスクは高く、また、米トランプ政権が安全保障上の理由(WHは空母・潜水艦など艦艇用の原発も製造している)を挙げて、WH破産処理に介入してくる可能性もあります。そうなるとWHの破産処理は、さらに複雑化し、紛糾することも考えられます。東芝は、WH再建の事業主体として韓国電力公社を挙げていますが、同社はこれに「慎重姿勢」を示していると伝えられています。
http://mainichi.jp/articles/20170328/k00/00m/020/117000c
メインのスポンサーが現れなければ、11条の適用が米裁判所によって認められるかどうか、疑問符がつきます。企業再生に有利な11条ではなく、本来の破産処理の方向に進む可能性もあります。日経の見出しの通り、東芝は「崖っぷち」に立たされているというのが現実です。
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WHの破産により、東芝の経営危機は、決して一段落したのではなく、東芝自身の破産、本社である東芝本体にさし迫る破産を東芝が乗り越えられるかどうかという、新しい段階に入ったと評価すべきでしょう。前に述べましたように、本当は半導体子会社を売却する前に、東芝自体が民事再生法などの破産手続きに入るのが、東芝の客観的利害にとっては望ましい(『世界』今月号記事)のでしょうが、その決断はなされませんでした。
銀行や金融機関は、自分の信用不安につながりかねないので、動揺して、決めかね、結局、事態を紛糾させ、いっそう悪い結果を招こうとしているように見えます。東芝は、債務超過を避けるためには、半導体部門を1兆5000億円以上(東芝の目論見では2兆円)で売却しなければならないとされています。しかも、売却先をめぐっては、日本政府が、「安全保障上問題がある」として介入してくる(すなわち、中国や台湾の企業には売らないようにと圧力をかけてくる)ことが予想されています。
そのような状況の下で、このような高値水準での売却が可能かどうか、疑問符がつきます。政府系の金融機関(政策投資銀行)や官民ファンド(産業再生機構)が手を差し伸べる可能性を検討しているようですが、東芝がいかに「安倍友」企業といえど、1兆5000億円をすぐに支出することにはなりそうもありません。
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とくに、深刻な問題は、私が前信にて指摘しておりました東芝の資金繰りがショートする危険性です。前回の銀行団会議(3月15日)で、東芝は担保を提供すると発表しましたが、その結果、東芝が新たに提供する担保の配分をめぐって、銀行団内部で、深刻な対立・抗争が発生し、銀行間に亀裂が広がっています(下記記事参照)。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO14635140Y7A320C1EE9000/
日経はこれを「担保争奪」とさえ表現しており、流動性の低い(現金化の難しい)土地・建物などの担保を割り当てられた地方銀行などの反発は強く、4月末までの協調融資の継続の決定が、本来の3月末から、4月11日まで決まらない事態となっていると、報道されています。この通りだとすると、4月1~11日までは、融資継続がないままになり、東芝の運転資金繰りは綱渡り状態になると予想されます。これは、東芝の信用自体が根底から揺らいでおり、事態が、東芝自身の破産、文字通りの原発事業破産に向かって、不可避的に(外からの救済がなければ)走り出している、と評価すべき事態だと思います。
WHによる破産法適用申請に接してのとりいそぎのコメントです。ご検討ください。
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上記は渡辺悦司さんの鋭い切れ味の情勢分析です。そこで紹介されている小笠原啓氏の論考が現時点での東芝の状況をうまく整理しているように思えます。
●(再掲)東芝、1兆円赤字は「いばらの道」の始まり
http://business.nikkeibp.co.jp/article/person/20141008/272318/?rt=nocnt
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/070600052/032900011/?n_cid=nbpnbo_mlpum&rt=nocnt
(小笠原啓氏が指摘する3つのリスク)
(1)米国で建設中の4基の原発がスケジュール通りに完工できるかどうか
(2)スポンサーの選定:韓国電力公社グループに支援を打診したとされるが「出資に伴うリスクが明らかにならない限り、韓国電力は様子見」
(3)分社するフラッシュメモリー事業の売却条件:3月末の債務超過額を穴埋めした上で一定の株主資本を確保するには少なくとも1兆円以上必要
また、下記のサイトにも似たようなことが書かれています。
●東芝「WH破産申請」で露呈した再生計画のウソ (文春オンライン) – Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170329-00001957-bunshun-bus_all
少しご説明すると、(1)については、WHと受注先電力会社とが、依然として原発建設の継続を前提に「協議」している、などとしている点に加え、建設費用が増大していることのみならず、アメリカ政府から1基あたり1千数百億円相当の税制優遇を受けるためには2020年までに竣工・稼働しなければならないという「工期期限」のリスクがあり、万が一、これに間に合わなければ巨額の損害賠償請求(訴訟)を受けることがありうること(下記の朝日新聞記事を参照)、更に加えて、WHが建設する原発の資金調達には米政府が保証を付けているという問題もある。また、金額はそれほど大きくないが、IHIが所有するWH株式を東芝に対してプットオプションを行使して売りつけたように、同じくWH株式を東芝向けプットオプションとともに所有するカザフスタンの会社がWH株を東芝に売りつけてくる可能性も高い。
(関連)東芝、新たな損失の恐れ 米原発建設で最大数千億円規模:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASK376RQ4K37ULFA02Z.html
はたして東芝本社の思惑通りにWHリスクを自身から切り離せるかどうかは、まだよくわからないところがある。そもそも東芝がWHに提供した原発事業にかかる「保証」の内容はどういうものなのか。いかなることがあっても、その保証金額に上限が付されたものなのか、未だによくわからない。また、今回は米国WHのみならず、米国以外の海外原発事業を司っていた英国WHについても破産法適用申請が行われており、こちらの方の中身もよくわからない。たとえば中国や英国での原発ビジネスはどうなのか、などである。従ってまた、(東芝自身の説明文書(下記)にもあるように)、今回の破産法申請が東芝本社の収支決算にいかほどの金額の影響を及ぼすのかは、まだ現段階では確定的なことは言えない状態である。海外原発事業のマイナスの「穴」は、どん底へ向かって限りなく深い状態である。
(再掲)当社海外連結子会社ウェスチングハウス社等の再生手続の申立について
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/pr/pr20170329.htm
スポンサーについては容易には見つからないだろう。天然ガスの価格が大きく下落し、かつ地球温暖化対策を放棄しようとしている現トランプ政権下においては、化石燃料プラントをやめて原発に走るような企業が今後出てくることは期待できないし、世界的に見ても原発ビジネスの凋落ははっきりしてきている。WHは既に「お荷物企業」となっており、持参金をつけても引き取り手がない状態と言ってもいいのではないか(WHの軍事部門は既にベクテル社に移管されていると伝えられていて、原発部門だけを抱えるWHは「核」を扱う産業故に安全保障面からの問題はあるにせよ、その売却について米政府から、とりわけ強いクレームは考えにくいと思われる)。
半導体部門がいくらで売却できるかはやってみなければわからない。ただ、東芝はこの半導体部門を売却してしまうと、いったい後に何が残るのだろうか? むしろ東芝が選択すべき道は、WHの破産法適用申請と同時並行で、自身の会社更生法適用申請を行い、原発・原子力の推進事業ときっぱりと縁を切って、新しい会社として生まれ変わることではないのか。再生可能エネルギー産業なども有望な成長分野であるだろうし、これから原発の大量廃炉の時代を迎えるのだから、廃炉ビジネスもまた、収益性の見込めるビジネス分野になりそうである。「死神」部門とでもいうべき原発・原子力メーカー部門を残しながらの「協議」再建などは、早晩、三度目の経営危機を招き、「そして何もなくなった」企業となる道ではないのか。
それと付記しておくべきは、既に報道されていることだが、米国での天然ガス事業についても、天然ガスの価格下落による事業リスクの顕在化が懸念されている(下記参照)。金額が総体で1兆円規模というから、これもまた場合によっては東芝の命取りになるかもしれない深刻なビジネスリスクである。東芝はまさに風前の灯火状態にあると言って間違いない。
(関連)東芝巨大損失リスク 原発に続きLNG事業でも (1-2) 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版
https://dot.asahi.com/wa/2017021400094.html
なお、数日前に、この東芝に公的資金を入れて救済する方針を政府が検討しているかのごとき報道が複数の新聞社によってなされ、しかも何の批判的なコメントも付されていない、まるで原発「放漫」経営を政府が尻拭いして当然であるかのごとき書きぶりの記事もあったが、とんでもない話である。民間企業の経営の失敗=しかもWHが連結子会社でありながら、その子会社に対してきちんとした経営マネジメントや内部管理統制を行ってこなかった、うすうす大赤字をわかっていながらそれを隠蔽して粉飾決算を続け、また巨額の損失を抱え込むこととなった愚かなM&Aまでもを遂行した東芝経営陣の職務怠慢・無能・背任的振る舞いを、何ゆえに国民の税金を使って救済せねばならぬのか。そんなことをすれば、日本の大企業経営はひどいモラルハザードを起こして益々劣化していくことになる。福島第1原発事故後の東京電力の二の舞を東芝で再現することなど許されるはずもない。
(1)崖っぷち東芝、風土「改善」まだ途上(東京 2017.3.29)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2017032902000122.html
(2)東芝銀行団が担保争奪、「大手優遇」地銀が反発(日経 2017.3.29)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14635140Y7A320C1EE9000/
(3)東芝に公的資金投入案、半導体技術の流出防ぐ(東京 2017.3.17 夕刊,18)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017031802000148.html
(4)東芝 最終赤字1兆円、今期 債務超過6200億円、米WH、破産法を申請(日経 2017.3.30)
http://www.nikkei.com/article/DGXKASGD29H4M_Z20C17A3MM8000/
(5)米WH 破産法申請、東芝 赤字1兆円超か(朝日 2017.3.30)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12867082.html?ref=nmail_20170330mo
http://www.asahi.com/articles/DA3S12867032.html?ref=nmail_20170330mo
http://www.asahi.com/articles/DA3S12867098.html?ref=nmail_20170330mo
(6)東芝 株主から批判続出、半導体分社化は承認、臨時株主総会(朝日 2017.3.31 他)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12868964.html?ref=nmail_20170331mo
(一部抜粋)
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WH破綻(はたん)の引き金となった原発建設工事会社の買収について、担当役員が「当時の判断としては正しかった」とするなど、経営陣は淡々とした説明に終始。「返答は流暢(りゅうちょう)だが、気持ちが伝わってこない」「しゃくし定規の回答ばかりだ」などと憤る株主もいた。
昨年末に巨額損失が突然発覚した経緯についても「途中経過(の報告)が何も幹部に上がっていないのか。言っていることのすべてが信用できない会社になっている」との指摘もあった。「企業統治を回復しないと東芝の将来はない」などと経営陣の刷新を求める意見も繰り返し出た
<関連サイト>
(1)「WH破産で債務超過6200億円」東芝は再生できるか 東芝問題リポート 編集部 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170329/biz/00m/010/001000c?fm=mnm
(2)「だまされた」と居直る東芝・志賀─ロデリック体制の厚顔 東芝問題リポート 編集部 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170324/biz/00m/010/032000c?fm=mnm
(3)「納得できない」東芝総会を欠席した前会長に批判続出 東芝問題リポート 編集部 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170330/biz/00m/010/025000c?fm=mnm
(4)WH7000億円損失戦犯2人が狙う会長・社長復帰 東芝問題リポート 編集部 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170327/biz/00m/010/024000c?fm=mnm
(5)「東芝・WH問題」が蒸し返すインド「原子力発電」の問題点–緒方麻也 新潮社フォーサイト
http://www.huffingtonpost.jp/foresight/toshiba-india_b_15347588.html
(6)<東芝子会社>WH破産申請へ大詰め 米電力に説明 (毎日新聞) – Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170328-00000111-mai-bus_all
(7)WH破産申請、中国の原発計画への影響限定的=国家電力投資集団(ロイター)Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170330-00000064-reut-bus_all
(8)解体:追いつめられた東芝/中 再建へ「虎の子」も売却 技術流出懸念、政府「横やり」毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20170331/ddm/008/020/054000c?fm=mnm
(9)東京新聞 東芝、韓国電力に支援打診 経済(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201703/CK2017032702000231.html
(10)東芝、「環境変化への不適応」をごまかし続けた末路 (日経BizGate) – Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170329-00010000-nkbizgate-ind
(11)米住民が東芝に激怒「WH破産でも電気代上昇」の理不尽 海外特派員リポート 清水憲司 毎日新聞「経済プレミア」
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170327/biz/00m/010/001000c?fm=mnm
(12)東芝が抱える「中国原発」という爆弾 日刊SPA!
https://nikkan-spa.jp/1303716
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6593 :170401〕
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