マンション生活で知り得た社会問題を考える(21) 「管理会社マンション」における住民の姿
- 2017年 4月 7日
- 評論・紹介・意見
- マンション羽田真一
たかが一マンションという最小集団社会ながら、そこに現代社会の縮図である集団の社会現象が支配していることを知ることができる。3月26日、久しぶりの管理規約・諸細則の改正案の承認のための臨時総会があった。実は数年前から管理組合の課題として挙げられていたのだが、面倒臭い・分かりにくいなどの理由でどの理事長も敬遠してきたのだが、大規模修繕計画工事が一段落した2年前に改正案の検討に着手した。国交省の標準管理規約の改正や当マンションの管理体制変更(羽田の過去の投稿を参照されたい)があり、不都合となった部分やこれからの建て替え問題に備えて理事会はやっと取り組み始めたということであろう。事業計画として総会議題に取り上げるとともに、コンサルタントB社の紹介のTマンション管理士に指導委託契約し理事8名を専門委員として専門委員会を発足させ改正案を作り、ようやく総会承認に漕ぎつけたようである。しかし、その経過を辿ると「管理会社マンション」管理組合の本質が読み取れる。羽田の再三の注意喚起の文書配布にも関わらず、住民が全く無関心で意見を発することもなく提起された原案を諾諾と承認していく様は情け無さを通り越して、今更ながら世情の現実に直面して事の難しさを実感している。改めて「管理会社マンション」の住民とは何ぞやと問いかけたい。
1.規約改正臨時総会に至る経緯
端的に経過を説明する。既報したように羽田の公開要求をかわしながら、昨年2月8日に初めて委員会がすでに承認した改正原案を公表し、3月19日に説明会を設定した。残りの諸細則などを同様の方法で今年2月に2回目の住民説明会を開き、3月26日に臨時総会を開いて全議案をほぼ全員で修正もなく承認した(羽田は全議案に反対か賛成しなかった)。
反対をしたのは理事会のこのような改正の動きに賛成できなかったからである。日ごろからマンションの管理組合運営は全[管理費]を担う住民組合員が主役であり、管理を委託された管理会社はあくまで補佐の立ち位置であるべきと考えている。管理規約の改正は住民全体が理解した上での合意形成が必要であると思っている。しかるに、「管理会社マンション」管理組合では正当に見せかけて管理会社に有利な内容の規約改正を堂々と行い、住民がほぼ全員賛成する事態が起こることを見せつけた。異常が正常を名乗って異常を実現する。住民の管理組合理事会がやるのだから正しいのか。住民全体が賛成するのだから正しいのか。羽田は状況を知って考えるから、この事態は異常だとみなす裁量をもっている。
私は改正の方法も問題と言っている。住民のための管理規約であるのに住民の意見が反映されない仕組みを採っている。専門委員となっている理事のみが委員会のメンバーであるが、彼らは一度たりとも一般住民の意見を採り上げる行為をしていない。順番くじ引きで選ばれた理事たちに自発的改正の意欲があると思えない。Tマン管士が作った改正原案とみている。その原案に意見があれば提出しろ、それを参考に説明会をするという。100数十ページある原案を僅か20日ばかりで精読し意見を出せる住民がどれだけいるか、駆け足で修正案をTマン管士が説明したが、彼の意見を押し付けるだけで意見交換などしなかった。その後、1回目の説明会の結果に改正委員会の見解を入れて羽田の提案を悉く否定してきた。
そのような文書を配布し、2月12日に新しい会計処理細則*を中心に2回目の説明会を開催して(これも断じて意見交換会ではなかった)、最後に3月の臨時総会に繋げた。即ち、この改正は住民の意見討論を体よくかわし、管理会社の意図通りの管理規約を実現させる巧妙な仕掛けであった。羽田は初めからこの意図を見抜き住民に文書で伝えていたが、力及ばず何の成果も得られなかった。N管理会社「管理会社マンション」の継続を可能にしただけでなく、多くの建て替え条項を盛り込み、羽田の活動を制限する罰則付き条項を強化するものとなった。
*すでに案が存在し使用いたがなぜか制定せず、今回新たに具体性に乏しい案を後出しして議論の余地を少なくしてきた。彼らにとって不都合で記述が具体的な「管理運営マニュアル」を一方的に廃止した。ついでにN社派遣という現実に合わせて「管理員雇用内規」も廃止した。重要な管理人を自分たちで雇用する意思がないことを示している。
2. 3月26日臨時総会の実況中継
総会はあくまで議案承認の場として設定されている。区分所有者:243名で出席者:33名(内役員12名)、委任状:152、議決権行使書:13 で成立、正面中央でTマン管士が説明、両横に理事が並ぶ。座席から見渡せば一般出席者は僅か17名で日ごろの顔見知りはF専門委他数人だけで、この機会を紛糾させない単なる承認の場と設定していると読み取れた。過去F氏が理事長のとき総会懇談会出席者を羽田一人としてボイコットされた経験があり、あながち間違った解釈ではないだろう。Tマン管士が来賓として紹介され議案のあらましを説明した。2時間程度では大部の資料を詳しく説明できるはずもなく、結局、シャンシャンの規定路線の総会にすぎなかった。羽田などが時々意見・疑問を挟むだけで他の出席者は集票マシンの存在としか機能せず。こんな芝居を打ってでも管理会社勢力の維持を企む裏に、A,羽田の2011年以来の管理組合会計不正疑惑から会計帳簿類の公開閲覧の要求追及があり、B,それをマンション内外に文書配布して訴えていることへの報復としての刑事告訴が進行中である。管理中枢*の利権防御が管理規約の改正の動機の一つであろう。羽田の修正要求の主な目的は全て住民本位のマンション管理の実現であるが、残念ながら住民の応援は殆どその気配もなかった
*当マンションではN不動産管理会社、B建築研究所コンサルタント、理事会役員とOB、
F氏など旧専門委員グループなど
羽田の意見提案の主なものをいかに示す。Tは[マン管士の見解]
① 住民の意見を反映した管理規約の改正議論、住民が納得できる合意形成
要望書制度・理事会傍聴制度・住民自由討論会の設置
T[すべて監事がいる、やりたかったら住民賛同の1/5条項を使えとのたまった]
② 全てにオープンで自主的な組合活動(原則、秘密機密があってはならない)
管理会社・コンサルタント・他大口業務委託契約の契約書の公開、競争入札の導入
会計帳簿類・議事録・大型計画修繕工事の実績閲覧公開
③ 監事機能の独立保障、監視委員会(オンブズマン)機能の設置
④ 管理会社・コンサルタントの連続委託年数制限(近代的商取引の実施、癒着防止)
理事会役員・専門委員等の適正就任期限、リコール制度導入
T[すべて改正されず、必要なし]
⑤ 理事会役員の順番くじ引き選出制から住民投票選出制へ移行の啓蒙努力
管理組合事務所(負の拠点)を住民にオープンに(住民の自由な参集・交流のかなめ)
T[前例なし、従来通りで議論なし]
等を意見提案したが改正専門委員会は回答書で殆ど全部を議論討議せず否定した。自主管理を目指した羽田の要望をへし折り、この改正が現在の管理中枢の既得権益を守り、羽田への罰則を強化することが目的であったことが分かる。誰一人羽田に追随する住民なし。
3. 住民の動きがカギではないか
羽田はこの1年以上を住民目線の改正の実現に向けて力を入れてきたが叶わなかった。2011年当時の羽田理事長がM元管理人の管理不正に気づいて問題を提起し、文書配布やのちにインターネットを使って、内外の住民に訴えてきた。始めは賛同のメモや電話が数々寄せられたが、いつしか全くそれが止み、ほぼ毎回文書1通のみの匿名返却に変った。現在に至るまで配布した文書には理事会も住民も全く反応なく無視した。指令なしにはこんな統制が効く訳はないと考えている。やはり面談した時にF専門委(管理組合の大ボスの一人、過去3回連続して強引な修繕工事を主導)の口から「あんたの問いかけに応じたら、あんたの土俵にのってしまう、だから応えないのだ」と聞いて部分的に納得できた。N管理会社・Bコンサルを頂点とした管理中枢が策を巡らして有力者を通じて理事会を動かしている。羽田の問いかけは、A垣間見える組合会計の不正解明追及と、B文書配布を悪として羽田を貶めるでっち上げ告訴状を警察が受理したという刑事告訴の行方である。[公開質問状]の形で全戸に知らせたが、相変わらず理事会は無しの礫で答えず、理事長も話し合いの要請にも応じようとしない。A.会計閲覧要望リストを出せというから提出し、書類の有無など相互に合意できたら閲覧に応じよう。B.告訴状については、その後彼らが警察署に相談にでかけたと書いたから、双方一緒に警察に出かけて係官の前で議論しようと提案したがだんまりを決め込んでいる。理事長は住民の問いかけに真摯に対応する義務があると考えるが。
羽田の問題提起は明らかにマンション実生活に関わるもので、①高い[管理費]の適正な減額、②住民の側に立った適正な修繕工事の実施、③明朗な組合会計の公開、④意欲ある理事会役員の選出実現などを訴えてきた。管理中枢には既得権益を失う恐れという敵対する理由が考えられるが、暮らしと密接にかかわる問題改善を提起する羽田を排除する動機(住民が管理会社の動きに同調する行動)とは何だろうかといつも考えさされる。俗物的には全てに強い管理会社の言うがままの管理組合に従うのは当たり前なのだろうか、長いものに巻かれろという時代の風潮と認めてよいのだろうか。静観主義もあるとのメールを受け取ったこともある。それとも、もっと崇高な社会学的理論で説明できるのか。
マンションの住民には住民としての個人の自由があるべきと考えているが、誰一人として反応のない不気味さは何なのだろう。[管理組合・住民全体]対[羽田個人]の紛争設定がマンションの評判や資産価値の下落を理由に成り立つのか。個人として意見主張の活動がかくも孤立・排除(正しく現代の虐め・村八分)を耐えねばならない社会とは何だろうか。自立した個々の家庭がお互い助け合って共同生活を支えあう状況を願って主張しているだけである。マンション管理組合では住民を仲間にして行動することが必要と多くの識者や公共機関はおっしゃるが、それ以前に強固な管理中枢が形成され一般住民を囲い込み、全く異論をはさめない組織運営で完全支配をやっている。重要事は全て事後承諾の運営管理である。それでも一般住民は文句もいわない状況が存在する。
こんな管理運営では、現実に所々で生活上の弊害を起こしている。給排水管工事で漏水のリスクはなくなったとF氏は挨拶したが、実際にはその後も漏水事故は続いている。住民の意見を聞かない強引な工事実施は不完全で周りに不都合な現象を数々起こしている。住民の要望を無視したお上任せの自主性のない管理運営のつけは大きい。これからのマンション生活がとても順風満帆に進むとは思えない世界情勢である。住民の少子高齢化、建物の老朽化・建て替え問題、何より社会経済環境情勢の大きな変化への対応は誰も避けて通れない課題である。最近ようやく断片的であるが種々の雑誌や書籍で「マンション管理不正問題」が採り上げられるようになってきた。まだまだ本質に迫りきっていない状況ではあるが。
かってヴォルテールは「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」と宣言したと言われている。羽田はこの精神で他者の意見を尊重するとともに、自分の意見主張を理由なく止めることはしたくない。できるだけ文書配布に誠心誠意を込めて手紙を送り出している。インターネットを利用して遠く離れていても志ある人と情報を共有し手を繋ぐことによって大いに助けてもらおうと思っている。マンション管理の仕組みは真にその住民生活を自主自由な生活に資するものでなければならない。これを理解する心ある人々の協力努力で手を繋ぐことによって、いつか実現するものとの希望は捨てたくない。[第(21)報終り]
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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