警官労組、兵士労組、市民、常民の共同抗議
- 2017年 4月 22日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
4月2日(日)のセルビア大統領選挙で現首相セルビア前進党の、そしてセルビア社会党が支持するアレクサンデル・ヴゥチチが大勝した。EUからもロシアからも期待されていた人物である。市民主義諸派や民族主義諸派は勿論反発していた。選挙結果は、彼の得票率約55%、民主党が支持するサーシャ・ヤンコヴィチは、約16%で第2位であった。
4月3日(月)より連日、選挙結果に異議申し立てするデモがベオグラードをはじめとするセルビア諸都市で続いている。スローガンは、様々で非統一的。ベオグラード再開発にともなう黒霧を追及する「我々はベオグラードをやらないぞ!」から「働く者がひもじい時に、エリート達は楽しんでいる!」、「どの候補者も我々のではない。」、「闇労働者だけがお前達の側だ。」、「オトポルではないぞ。」、そして「独裁者に対して抗議!」まで。ここで岩田の注を入れる。「オトポルOtpor(抵抗)」とわざわざことわっているのは、2000年にミロシェヴィチ・セルビア大統領を権力の座からひきずり落とした「市民運動」の主役であった学生反体制派Otporがアメリカ権力によって組織され、金銭的に支援された側面が広く知られ、ヴゥチチの大統領選出に抗議する自分達は、セルビア愛国者である事を明示したかったからであろう。ともかく、誰が組織者であるかわからない市民集会や常民集会が続いている。
そんな状況に4月8日警官労組と兵士労組が再登場した。以下は『ポリティカ』(2017年4月9日 第10面)の記事「警官、軍隊、そして市民が官邸前で抗議」による。
警官労組議長ヴェリコ・ミヤイロヴィチは語る、「今日、軍隊、人民、警官が同じ立場にある。」 内務大臣ネボイシャ・ステファノヴィチは命令する、「内務省の全職員は業務中に抗議集会に参加できない。」
兵士労組議長ノヴィツァ・アンティチは、セルビア軍所属者のどれほどの人数が最近の選挙に行くのを妨害されたかを公表するように国防相に要求した。また語る、「我々を売国奴だ、裏切り者だと非難する。そんな彼等こそ私達が兵営で半旗を掲げ、倒れた戦友達のために鎮魂のミサを行っていた時に、ゲルハルド・シュレーダーを招いたではないか。」 ここでも岩田の注をいれておく。ゲルハルド・シュレーダーは、1999年にNATOの対セルビア空爆とコソヴォ占領にドイツ軍を派遣した赤緑政権の首相であった。鎮魂ミサの対象はその戦争で死んだセルビア軍兵士である。
集会の後にデモに移った。数千人が参加と言う。「資本の独裁反対!」、「人民はうえ、エリートは楽する。」、「我々の通りは我々の警察が!」のスローガンをかかげ、財務省と大統領府のかたわらを通過。
インターネットで見ていると、心配したEUの関係者にどうするのと問われて、首相ヴゥチチは、「別に、彼等にはそうする権利があるんだから。」と答えていた。大勝の余裕か。
平成29年4月20日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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