BANK
- 2017年 4月 26日
- 評論・紹介・意見
- 共謀罪小原 紘政治献金
韓国通信NO522
<銀行の政治献金再開>
バブルの崩壊によって、ほとんどの銀行が山のように積み上げられた不良債権の処理に追われ悪戦苦闘した。大手都市銀行も公的資金の導入によって救済された。拓銀のように破綻し消滅した銀行もあれば、長銀、日債銀、足利銀行のように国有化された銀行もある。銀行の救済のために投じられた国費は数十兆円にのぼり、多くの銀行が合併によって姿を消した。
私企業とはいえ軒並み税金で救済された以上、銀行経営には目先の利益を追わず社会的公正さが強く求められるのは当然だ。政治と行政との悪しき癒着関係も厳しく断罪された。国民の負託は大きく重い。
その期待を裏切るかのように、銀行のトップ、三大メガバンク三菱UFJ、みずほ、三井住友が、一昨年から自民党に政治献金を再開した。雌伏十年。反省どころか権力者の顔色をうかがい政治に利益を期待する本性がちらつく。
18年ぶりに再開した政治献金について、毎日新聞は社説で「銀行の献金復活 数々の疑問がつきない」として「メガバンク三グループがそれぞれ約2000万円を自民党の政治資金団体『国民政治協会』に提供した。『企業の社会貢献の一環』と説明しているが、特定政党への寄付が社会全体に役立つという考えは理解しがたい」と批判した(2016/1/26)。
金利実質ゼロ政策のなかでメガバンクは莫大な経常利益(2016年)をあげた。
1位 三菱UFJフィナンシャル・グループ・5兆7144億円
2位 三井住友フィナンシャル・グループ・4兆7721億円
3位 みずほフィナンシャル・グループ・3兆2152億円
中小零細企業に対する「貸し渋り」の解消。高い振り込み手数料やATM利用手数料の引き下げなど真っ先にやるべきことがたくさんある。
政治献金(賄賂)の再開は「再生」した銀行にもとるものだ。銀行ほど多数の派遣社員を採用している職場はない。リストラ・出向は思いのまま。長時間労働と残業代の不払い。有給休暇もロクに取れない。これ程の利益を上げながら銀行は「職場の劣等生」であることは今も昔と変わらない。各銀行が掲げる「社会貢献」「コンプライアンス(法令順守)」が泣く。「お飾り」に過ぎないのか。
かつて所属していた銀行の労働組合は、1970年代に政治献金の廃止を求めて労使交渉を行なうとともに他の金融組合とともに全銀協へ申し入れをした。故市川房枝さんとともに有楽町駅頭で「廃止」のビラまきをしたこともある。「賄賂政治」は許さないという彼女の主張に共感したからだ。政治献金が1998年から中止されたのは当然だが(公的資金をもらって政治献金するのは「まずい」と考えたようだ)、またもや銀行の「賄賂」が復活した。「気は確かか」「恥ずかしくないのか」。
<怒り・悲しみ・疑問に思うことが多すぎる>
韓国語の慣用句に눈코 뜰 새 없단 というのがある。「目と鼻をあける暇がない」。日本語の「目がグルグル回るほど忙しい」に相当する。目だけでなく鼻まで入っているのが面白い。
シリア、アフガニスタンの戦争に加え緊迫する朝鮮半島の情勢。節操もなく米国トランプ政権に追随する日本政府の危うさにくわえ、「共謀罪」の成立を急ぐ政府与党。原発再稼働を認める裁判所の「忖度」判決。高濃度の放射能の地へ帰郷を促す政府。帰らないのは「自己責任」と言い放つ復興大臣。甲状腺ガン患者が何人発見されても因果関係はわからないと云い張る行政。沖縄県民の意思を踏みつける中央政府。国有財産の払い下げをめぐる疑惑。政府に都合の悪い資料隠し。教育勅語を教えろという閣議決定。呆れ果てて「目も鼻も」開ける暇がない。血圧の高い人でなくても血圧があがりそうだ。一気呵成に憲法「改正」に突き進む勢いを見せても国民の支持は相変わらず高い。体がいくつあっても足らないもどかしさ。
問題山積の時期に銀行の話題は少し「のんき」すぎるかも知れない。銀行に勤めていたせいか、政治献金再開から見える最近の巨大銀行の動きは見逃せない。
銀行が脱原発に反対しているのは有名な話だ。だから自民党に政治献金と疑われても仕方がないない。電力会社が原発施設を廃棄すれば不良債権化する。倒産したのも同然の東京電力を潰すことにも銀行は反対している。
<国境を越えるメガバンク>
国際的ニュース配信会社「新月通信社」(社長マイケル・ペン)がわが国の三大メガバンクが融資するアメリカ、ノースダコダ州のパイプライン建設事業について報じている(HPと『週刊金曜日』3/10号)。原住民スー族に認められた土地を無断で使用する石油パイプライン建設に反対運動がわき起こり全米で注目されている。原住民の権利侵害と環境保全が争点である。融資に日本の銀行が深くかかわり、トランプ大統領も出資者であることが知られている。大統領に就任後、警察は抗議行動を鎮圧した。
スー族の代表が来日、日本のアイヌ人権擁護団体の活動家たちとともに融資各行に融資の取りやめを要請した(2/17)。各行とも署名と要請書は受け取ったが、今のところ要請に応じる意思は無いようだ。抗議者たちは各銀行が内部規定に「人権保護」をポリシーとして掲げていることに期待し、融資規定に反する融資の中止を求めている。
日本ではメガバンクの融資が現地の人権侵害を引き起こしていることはほとんど知られていない。銀行は「法律」「国際人権規約」を遵守すべきだ。ただ儲かればいいというバブル期に教訓を得た反社会的な融資は止めるべきだ。法律順守も社会貢献も、人権保護も単なる「お飾り」であってはならない。
<共謀罪反対>
警察が、「何か企んでいるだろう」と疑うだけで捜査ができる「共謀罪」。無関係と思っている人にもやがて累が及ぶ悪法だ。民主主義を窒息させないために廃案にすべきだ。以下、陶芸美術館「朝露館」からの訴えを紹介します。
テロ対策とオリンピック対策を隠れ蓑に、「共謀罪」(テロ等準備罪)法案が、閣議決定され、国会に上程されました。そして、法律学者や弁護士会はじめ多くの人びとから明確な反対の声が上がっているにも関わらず、なんとゴ―ルデンウイーク前に成立させたいと自公政権は公言しています。
そもそも、社会に有害な結果を生じさせた行為がなければ処罰されることはないのが、フランス人権宣言以来の近代刑法です。「共謀罪」は、行為以前、準備だけで、死刑をもふくむ罪にされます。テロ等準備とある<等>も、曲者です。国家権力の恣意的判断によって、<等>に該当する、と決めつけやすいからです。
すでに政府自身、「正当な活動を行っていた団体についても、目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合は、組織的犯罪集団にあたる」と統一見解を出しています。
国会前のデモをテロと言ってのけ、教育勅語を<道徳>で取り扱ってもよいなど、戦前回帰の自公政権。都合の悪いことは、「他国への侵略」を「積極的平和主義」、あるいは「武器の輸出」を「防衛装備の移動」と言い変えたりもして。
現憲法が記している前文が、憲法第九条・戦争の放棄が、思想・良心の自由が、邪魔で邪魔で仕方がないのでしょう。
かつて治安維持法によって、どれだけ罪のない人びとが、捕らわれ、いたぶられ、殺されもし、そしてその親族までが深い傷を負ったことか。まだ、その復権もなされていない現在ではありませんか。
政権側が考えていることは、明明白白です。人びとを互いに疑心暗鬼にさせ、委縮させ、自分たちにだけ、親分の米軍産複合体にだけ、都合のよい政治をしよう、憲法改悪をしようとの魂胆でありましょう。
そんなことを許すなよ、騙されるなよ、かつての侵略戦争による彼我の犠牲者の声が聞こえてくる気がいたします。
「共謀罪」に反対します。
2017年 4月 16 日
朝露館館主 関谷興仁
朝露館につどう会 代表 石川逸子
東京琉球館 島袋マカト陽子
朝露館につどう会 吉川 光 水戸洋子 青山晴江 山田やす子 大道万里子
和田悌二 星野栄子 小原 紘 吉岡志朗 川見一仁 鈴木文子 根津公子 廣瀬克美小島久之 田澤義誠 薄田和子 磯部 浩 若林直樹 二村淑子 宍倉良江
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6635:170426〕
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