治安対策を色濃くした精神保健福祉法の改悪が今進められている!
- 2017年 5月 21日
- 時代をみる
- 堀 利和精神保健福祉法
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を「改正」する法律案が、4月7日に参議院本会議で審議入りした。当初は4月19日の本会議で可決の予定であったが、審議は紛糾し、5月17日の本会議で可決、衆議院に送られることとなった。
というのも、参議院に提出された法律案の趣旨説明としての概要「改正の趣旨」では、冒頭に「相模原市の障害者施設の事件では、犯罪予告通りに実施され、多くの被害者を出す惨事となった。二度と同様の事件が発生しないよう、以下のポイントに留意して法整備を行う」とあった。これは明らかに相模原事件を法案「改正」の根拠・理由としたものであり、防犯対策のために措置入院者の退院後の処遇を検討するための法案内容になっている。事件と措置入院者との因果関係を無理やりに結びつけて、治安対策を色濃くしたものとなっている。民進、共産、社民など野党はこの点を追求した。
政府厚労省は13日朝、突如、「改正の概要」の差し替えを求めたが、野党は反発。結果、追加資料という扱いになった。差し替え資料は冒頭の文章の削除であった。つまり、削除は法案「改正」のための根拠・理由を失うものであり、野党は当然法案の取り下げを要求した。なぜなら、もはや本法案の「立法事実」がなくなったからである。塩崎大臣は国会でそれを謝罪したが、にもかかわらず与党は委員会審議を強引に進めた。
そこで、野党は、警察庁も参画した相模原事件の「検証チーム」の議事録の開示を求めたが、政府は黒塗りにするしない、非公開の議事録は開示できないとして紛糾し、結局十分な審議は得られなかった。
法案の問題点を簡潔にまとめると、
① 措置入院患者の退院時とその後の対応については、代表者会議と精神障害者支援地域協議会(個別調整会議)の参加者に、警察が関与すること
② 個別支援計画の作成にあたっては条文上家族や本人の参加が認められておらず、作成された支援計画が本人に交付されるということ。
だが、審議入りから一か月余過ぎた5月16日に委員会で採決が行われてしまった。本則の原案には、民進、共産、社民が反対し、また民進は「附則第十条関係」の修正案を提出して賛成多数で可決となる。修正案は施行後5年の見直しを3年とし、また措置入院者等及び医療保護入院者の退院後の医療その他の支援の在り方、当該支援に係る関係行政機関等による協議の在り方、自発的意思に基づかずに精神科病院に入院した者(以下「非自発的入院者」という。)の権利の保護に係る制度の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることというものである。主な点は以下の通り。
① 新法第五十一条の十一の二第三項の合議体への参加を含む措置入院者等及びその家族による当該措置入院者等に係る退院後支援計画の作成に関する手続きへの関与の機会の確保
② 措置入院者等及びその家族による当該措置入院者等に係る退院後支援計画の内容及びその実施についての異議又は修正の申出に係る手続きの整備
③ 非自発的入院者に係る法定代理人又は弁護士の選任の機会の確保
(5月18日付)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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