巨大ポスター合戦 - ハンガリーの政治状況(下)
- 2017年 6月 3日
- 評論・紹介・意見
- ハンガリー盛田常夫
政権政党の反論ポスター
野党のポスター攻勢にたいして、政権政党であるFIDESZも反撃し、社会党は億万長者ソロスの支援を受け、JOBBIKはFIDESZから離脱しオルバン首相の政敵となった億万長者シミチカの支援を受けているという巨大ポスターを設置した。
このポスターの左には、社会党党首ボトゥカを操るソロスが、右にはJOBBIK党首ヴォナを操るシミチカが配置されている。野党の活動資金を提供しているのは、これらの億万長者だというキャンペーンである。
シミチカはオルバン首相の僚友として、長らくFIDESZのメディア網構築を一手に引き受けてきた。その結果、Hir TVや日刊紙Magyar Nemzet、高速道路建設会社Kozgep、街中の広告塔管理会社Mahirなどを所有し、巨額公共事業を受注し巨額の富を築いてきた。しかし、その成功は、皮肉なことに、オルバン首相との権力争いを勃発させることになり、シミチカは政権政党FIDESZを離れ、反オルバンの姿勢を示すようになった。
ソロスが社会党党首ボトゥカを、シミチカがJOBBIK党首ヴォナを
操っているという風刺ポスター
今次のJOBBIKのポスター作戦では、シミチカ所有の広告塔会社Mahirがポスター設置の仕事を請け負った。そこから、JOBBIKのポスターキャンペーンの資金は、シミチカから出ているのではないかと囁かれている。そこからこの反論ポスターが生まれた。
他方、社会党党首ボトゥカにたいする風刺は、党首に選ばれたボトォカが、「富者がもっと(税を)負担して、公正を実現しよう」というポスターをもじったものである。「億万長者に支えられているのが野党ではないか」というキャンペーンである。
社会党は旧態依然として、貧者の味方を自認して、所得税の累進課税などを主張しているが、政権政党と同様に、野党も現在のハンガリー経済の基本問題の所在を理解していない。だから、相互にちぐはぐなポスター合戦になっている。
来年の総選挙に備えた前哨戦が、巨大ポスターによる中傷合戦として展開されているのが、今のハンガリーの政治である。
(関連する記事は、http://morita-from-hungary.comを参照されたい)
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