2017年ドイツ紀行(3) テレビで見るハンブルクは市街戦だ!
- 2017年 7月 11日
- カルチャー
- 合澤 清(ちきゅう座会員)
G20の会場があるハンブルクは、まるで60年安保、70年安保の様な戦場だ
ここ数日間にわたり、テレビニュースでG20の模様が報道されていた。一見和やかそうな世界中のお歴々の顔ブレとは別に、ハンブルク市内では、市民・学生らによる「反G20」を掲げた闘争が激烈に闘われていた。日本のNHKと違って、こちらのZDFはその模様を毎回のニュースでも克明に放映している。この闘いの一端でも、日本のメディアは報道しているのであろうか。
「臭い物にふたをして」いつまでも逃げられると考えるほどこの世界は甘くはないだろうと思いたい。
アベシンゾーは、どの画面にも登場せず、プーチンとトランプの会談の模様、あるいは歓迎レセプションの一つなのだろうか、クラシック音楽演奏会の会場の光景では、メルケル、プーチン、トランプ、習近平、マクロンなどの姿はテレビに映されているが、アベシンゾーはついに影も形も見えず仕舞いだった。また例の腹痛を起こして欠席したのかもしれない。
ドイツは「職人」(マイスター)の国だ
かつて日本には多くの「職人」がいた。「職人」とは真の意味でその道のプロであり、彼らが専門としている仕事に対しては、素人には一切口出しさせない自負と責任を持っていたものである。今でも、確かに「刀鍛冶」だの陶芸家などの特殊な世界には、こういう職人が残っているのは事実だ。しかし、近頃見かける大工だとか内装屋(壁紙の張り替え、塗装、電気工事、床板の張り替え、…)庭師、などを見ていると、なんだか頼りなげで、金槌や鉋や刷毛や鋏一つ満足に扱えない「エセ職人」が増えたと情けなく感じることが多い。
ここには確かに技術の発達があり、かつて大工の棟梁たちが苦労して建てていた建築物も、今では組み立て式で骨組みを、また貼り合わせ式で壁や屋根を簡単に作れるし、ホッチキスを打つように釘を打ち、自働機械で鉋をかけることもできる。職人仕事など古いと言われるであろう。
ところが、ここドイツでは、未だに「職人」が生きているのである。あらゆる分野に依然として「マイスター」が存在し、ある種の権威とプライドと、それに伴う責任とを持って仕事をしているのをよく見かける。びっくりさせられたのは、腕時計の電池交換で、頼んだ途端に、ものの1分もかからない程度の早さで、まるで手品か何かのように「はい、できました」と返ってきた。
アインベックのビール工場を見学した後、工場内のケラー(地下のホール)で、出来たてのEinbecker(5月に仕込む「マイボック」ビールも含めた数種類のビール)を振舞われた時のこと。立派な髭をたくわえた年配の人が、見事な泡を作りながら各自のマグカップ(ドイツ語ではSeidel)にお好みのビールを注ぎ分けてくれる。まさに「職人技」である。
序でに触れるなら、この見学後のケラーでの試飲会は、一人5ユーロで1時間、つまみのチーズなどもついて飲み放題である。大抵出来上がってしまう。
ところでこの「職人」(マイスター)という発想は、何も大工や庭師などの技芸分野に限られるものではないだろう。一般的には専門家と呼ばれる人たち全般に通ずるものではないだろうか。よく聞くのは、学者の世界である。かつては「専門バカ」などと批判されたこともあり、自分ひとりの専門分野内に閉じこもり、それ以外に関して「吾関せず焉」との態度を取り続ける事が指弾されたものである。
しかし、今の特に日本の政治家たちに対しては、逆に「もう少し専門家であってほしいものだ」と思わずにはおれないのである。国会の議場での居眠りなどは可愛いもので、金田何某とか言う法務大臣や、稲田何某とかいう防衛大臣、等々、数え上げればきりがないほど自分の仕事に対する無知と無責任、何の誇りも感じさせることもなく、ただ官僚の書いたものを読みあげるか、あるいは彼らの口うつしのセリフをまねるか、これが日本の政治家たちのおぞましい実態である。
時々自分の言葉で何か語ろうものなら、「僕の能力を超える」だとか「自衛隊も自民党を支持している」だとか、訳の分からないことを喋りはじめることになる。後で責任を追及されても、自分の本意はそうではなかったなどと白々しい言い逃れに終始する。
大臣どころか、政治家としても、また専門職にある責任者としてもその自覚に欠ける。責任ある者たらんとすれば、いつでも責任を取って辞職する覚悟を持っていてもらいたいものであるが、こんなことを期待する方が虚しいのが今日の日本の政治の貧困さの現状である。こんな貧相な輩を選ぶ方にもそれ相応の責任があることは言うまでもない。
ドイツの市民運動に学ぶ点が多いように思う。
ゴータの博物館
ハレのマルクト広場
(2017.07.11記)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔culture0505:170711〕
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