大学設置審は、断固として「認可不相当」の答申をせよ。
- 2017年 7月 27日
- 評論・紹介・意見
- 澤藤統一郎
昨日と一昨日(7月24日・25日)、衆参両院での予算委員会閉会中審査が行われた。国家戦略特区制度を隠れみのにした、総理の友人への利益供与という加計学園疑惑。その疑惑が解明に至ったと白々しく言う者はないだろう。疑惑の核心に手が届いていないというもどかしさが残るばかり。新たな疑惑の深まりもある。この問題に幕を引くことはできない。幕引きを許してはならない。
「公正であるべき行政がゆがめられたのではないか」「その理由は、認可を申請する事業者が総理のオトモダチだったからではないか」。具体的な問題点を整理して、適切な証人を選定して、再度の追及が必要である。「どうせこれ以上は水掛け論」と、追及の手を緩めてしまえば、民主主義の敗北となる。
そもそもこの閉会中審査は、安倍晋三のイニシャチブで実現した。政権側の思惑としては、支持率低下に慌てて「行政私物化疑惑」「えこひいき疑惑」を払拭して国民の信頼をつなぎ止めようという舞台だった。政権延命のために、プライドを捨てて低姿勢に徹した安倍晋三だったが、所詮は形だけ。疑惑の払拭にも解明にも至らなかった。思惑外れであり、期待の内閣支持率回復はありえない。
次の注目舞台は、横浜市長選と、閉会中審査の安保委員会となる。選挙は民意の動向を表す場であり、安保委員会は政権の綻びを解明する場となる。後者は、稲田朋美防衛相による陸自日報隠し了承疑惑が焦点。稲田が居座ろうとも罷免されようとも、安倍政権に大きな打撃となることは必至である。
安倍内閣は既にアウトだ。少なくとも、レームダック。何かをなし得る力は既にない。9条改憲などもってのほかだ。安倍失脚後の安倍改憲政策の生き残りは、常識的にはないだろう。
安倍内閣のアウトは、岡山理科大学獣医学部設置認可の目は完全になくなったことも意味する。この2日間の質疑で明らかになった杜撰な関係省庁の審査は、新学部設置準備の杜撰をも物語っている。これで、新学部設置認可が可能とはとうてい考え難い。8月末日までに結論を出すという文科省の大学設置審議会が、まさか認可相当の判断をするとは考えられない。森友学園と同様、設立認可が得られないまま、校舎は取り壊しに至る公算が高い。
国家戦略特区における獣医学部の新設「4条件」(石破4条件)の充足すら具体的に検討されていない。加計問題として話題にならず、総理のご意向や忖度が幅を利かせた昨日までならともかく、今や国民の目が光っている。メデイアも手ぐすね引いている。ハードルは俄然高くなっているのだ。
「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討課題」は次の4要件である。
1.現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
2.ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、
3.既存の大学・学部では対応困難な場合には、
4.近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。
だから、加計学園による、既存獣医師養成ではない独創的な獣医学部設立構想が具体化していなければならないが、そのような構想の説明も、審査の発表もない。
また、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかにされなければならないが、そのような調査も説明もなされていない。
さらに、上述の構想が、既存の大学・学部では対応困難でなくてはならないが、そのような調査が行われていないことが明確になっている。
最後に、「近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、検討を行わねばならない」ところ、むしろ近年の獣医師需要は減少し続けているというのが、所轄の農水省の現状認識である。
報道によれば、加計学園の教員確保も、教育条件整備も困難であろうというのが実情を知る者の見解である。総理のオトモダチに、不当な利益を享受させてはならない。大学設置審は、総理の意向の忖度などすることなく、岡山理科大学獣医学部設置認可申請に対して、「認可不相当」の断固たる答申をせよ。
(2017年7月26日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.07.26より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=8935
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