HOWS講座のご案内 ロシア革命100周年を記念する文化芸術講座 映画『母』(1926年・ソ連 87分 監督:フセヴォロド・プドフキン)上映と討論
- 2017年 8月 23日
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映画『母』(1926年・ソ連 87分 監督:フセヴォロド・プドフキン)上映と討論
解説=立野正裕(元明治大学教員)
日時=9月2日 ? 13時~16時30分
会場=本郷文化フォーラム(略称 HOWS)ホール(本郷3丁目徒歩3分)
URL:http://www.hows.jpn.org/
e-mail:hows@dream.ocn.ne.jp
今年はロシア十月社会主義革命から100年目をむかえる。そこで本講座では、革命はいかにして準備されたかを、映画『母』(フセヴォロド・プドフキン監督)をとおして考える。
ゴーリキー作『母』をプドフキンが映像化したのは1926年。前年には、エイゼンシュテイン監督の『戦艦ポチョムキン』が世界に衝撃をあたえたばかりであった。『ポチョムキン』と同じく『母』も1905年の第一次ロシア革命の時期を舞台にしている。
映画は、ある貧しい労働者街の、ある貧しい家庭の家常茶飯から導入される。そこで目撃するのは、ひとつの社会階層を端的に表わす家族の姿である。酒びたりの、酒をのむ金のない父ミハイル。凶暴な夫から生活を守ろうとする母ニーロヴナ。息子のパーヴェルは、革命運動に「明日」のたしかな光をみるが、疲れはてた母の目には、息子は血のつながった息子であるから愛おしい。その母親が変わっていく。息子はストライキの首謀者と目され投獄された。ニーロヴナもまた警察の甘言に誘導されて、息子の逮捕を手助けすることになってしまった。しかし、ここでの一連の経験が彼女の目をひらかせていく。
映画のクライマックスはメーデーである。デモ隊と、かれらを弾圧する騎馬隊の衝突。古きものと新しきものの闘争。そこに雪どけの河のカットが重なる。闘いは全ロシアに波及していくことを予感させる。われわれは、その激流のただなかに、ひとりの息子の母からひとつの階級の母へと変貌したニーロヴナをみる。
本作のDVDパッケージ(2005年発売)に、『母』は「社会主義リアリズムの代表作であり、演出構成と演技はイディオロギーを超越して80年も語り継がれてきた」とある。しかし、その「演出構成と演技」を「イディオロギーを超越して」眺めることで、はたして映画の本質はとらえられるだろうか。「演出、構成と演技」の中核をなすモンタージュの理論にしても、モンタージュとは「二つの異なった場面を対照することによって相互を強調する」ものにちがいないが、「二つの異なった場面」とは、二つの異なった階級のことであり、その認識のうえにたってはじめて、映像は意味をもって観る者に迫ってくるだろう。その意味がわれわれの眼差しとして獲得されるとき、現在地をみさだめ、歴史を前進させる武器になるはずだ。『母』をあいだにおいて、皆さんとの活発な討論をたのしみにしています。
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