ありがとう 金正恩様
- 2017年 9月 25日
- 評論・紹介・意見
- 北朝鮮小原 紘朝鮮
韓国通信NO535
北朝鮮の核実験と相つぐミサイル発射で安倍内閣の支持率が「回復」した。国民を不安にさせ、落ち目の人気が回復するなんて安倍晋三は運のいい人だと思う。こんな感想は不謹慎かと思っていたら、9月11日付ハンギョレ新聞の見出し「아베 ‘아리가토 김정은’…‘북풍’에 지지율 살아나」(安倍「ありがとう金正恩」…「北風」に支持率が上がって)の記事に驚いた。私の感想がズバリ、記事になっていた。「金正恩のおかげで支持率回復」を指摘したわが国のマスコミ報道はあっただろうか。
「敵」のおかげで今や首相には「こわいもの」がなくなったように見える。
わが国を守ってくれるアメリカと一緒に戦争をするのは当然だ。平和憲法はいらない。原発再稼働や辺野古基地問題、まして「森友学園」「加計学園」の問題などは取るに足らない小さな問題と言わんばかり。
責任は「あなた」にある
2002年の平壌宣言以降、「拉致問題」を奇貨として北朝鮮を嫌悪し続け、首相の地位まで登りつめた安倍首相に北朝鮮を非難する資格はない。「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明」し、「核問題の解決と国交正常化」を約束した平壌宣言が実行されていれば、今日のような事態はなかったはず。2002年以降、「拉致」に対する怒りで国が一色に染まった。すさまじい反北朝鮮キャンペーンに乗った国民にも責任の一端はあるとしても、やはり「あなた」の責任はあまりにも大きい。
共謀罪の廃止を求める大集会(9/15)
戦前の治安維持法の復活、共謀罪法が施行されてから2カ月たった。安倍政権は「秘密保護法」「戦争法」「共謀罪」と立て続けに憲法をないがしろにする悪法を次々に成立させた。最終ゴールは「憲法改悪」。この流れを断ち切り、悪法の廃止をめざす市民たちが集会を開いた。成立すれば「諦める」はずと政府はタカをくくっている。
実は私も低調な集会を予想してでかけたが、主催者も参加者もビックリするほどの人が集まった。日比谷野外音楽堂は3千人を超す市民たちの熱気で溢れた。
主催はアムネスティ・インターナショナル日本の他、わが国を代表する人権団体が名を連ねた。最近、アトラクションばかり目立つ集会が多いが、この日は違っていた。政党代表と各団体の挨拶だけでたっぷり2時間、参加者たちは熱心に耳を傾けていた。落ち目とはいえ、息を吹き返した安倍政権を追い詰める絶好の時期に民進党の元気がないのが不安材料だが、ここで市民が踏ん張らなければという思いが会場から伝わってきた。
共謀罪との関係は不明だが、抗議行動、集会への警察の介入が多発しているという報告があって共謀罪に負けない運動の大切さが確認された。
そういえば集会所周辺には公安関係らしい目つきの悪い集団が目についた。入り口で<保存・携帯用>「警察対応について」と書かれた小パンフが配布された。職務質問を受けた時の対応の仕方から弁護士への連絡方法までが詳しく説明されていた。治安維持法のあった戦前にタイムスリップしたような気分だ。公安は集会やデモ参加者の写真をとりまくっては威嚇する。参加したら顔写真くらいは覚悟しなければならなくなった。スノーデンのいう監視社会が確実に広がっている。写真から運転免許証、パスポートの写真と照合すれば住所と氏名くらいは割り出しが可能なはずだ。皆で「安倍政権打倒!」と声をあげれば、共謀者と見なされかねない。私からメールを受け取っても「共謀」になるかも。集会の模様をテレビや新聞でジャンジャン取り上げてくれると運動も盛り上がる気もするが、頼りにならないものをいつまでも頼りにしてはだめだ。
この集会があったこと、ご存知でしたか? 新聞が報じない当日の宣言を紹介する。
―――集会宣言――
今年6月15日、共謀罪法が国会で強行採決され、異例の早さで7月11日に施行されました。国会提出から3カ月足らず、実際に議論が始まってから僅か2カ月たらず、審議すればするほど多くの疑問が湧く中、国会法の趣旨を踏みにじる乱暴な手続きでの成立でした。
政府は、共謀罪を「テロ等準備罪」と言いつのりましたが、テロ集団の定義もありませんでした。刑罰法規の明確性の原則に照らして問題あり、とする国連特別報告者の指摘にも耳を貸しませんでした。共謀罪法なしでも「国際組織犯罪防止条約」を締結できる、とする専門家の意見も無視されました。
近年、特定秘密保護法により知る権利が狭められ、通信傍受法の大幅「改正」で通信の秘密も危うくなっています。さらに共謀罪法の施行により、言論・表現の自由に対する規制が急速に進んでいます。
このままでは、民主主義のプロセス自体が破壊されてしまいます。
こうした認識を共有する私たちは、本日ここ日比谷野音に集まり、共謀罪廃止に向けた第一歩を踏み出しました。私たちの共謀罪廃止の闘いは、その実現まで決して終わることはありません。
以上、宣言します。 共謀罪は廃止できる! 9.15大集会参加者一同
身近にあった朝鮮人虐殺
「あったことをなかったことにする」のが、美しい日本を取り戻す人たちによる歴史改ざんの手口だが、小池都知事が関東大震災朝鮮人虐殺事件にソッポを向いて無視を決め込んだ。
わが町我孫子市では震災直後の9月4日、三人の朝鮮人が撲殺された。最近、『我孫子市史』を図書館で読んで知った。市史は「政府は、偏見と誤情報がもたらした大混乱と恐怖の要因を問うこともなく、9月20日頃から、朝鮮人殺害にかかわった自警団関係者等の検挙をはじめた」と記し、最後に「我孫子の暗い闇として、人々の記憶に濃いよどみを残したまま、時の忘却にまかされていく」としめくくっている。知らなかった地元の恥部悲劇を『市史』によって知りえたこと、また自警団を殺人に駆り立てた政府の責任を問う市の姿勢に救われた思いがした。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6978:170925〕
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