大多数がクルド国家独立に賛成 - 初めて独立の可否を問う住民投票を実施 -
- 2017年 9月 27日
- 評論・紹介・意見
- クルド人坂井定雄
2千年以上におよぶクルド人の歴史上初めての国家独立の可否を問う住民投票が、25日、イラクのクルド人自治区と隣接のキルクーク県で行われた。すでにドイツをはじめ在外クルド人のインターネットを利用した電子投票は実施されている。選挙管理委員会26日未明の公式発表によると、投票率は72.16%。登録有権者総数4,581,255人、有効投票3,305,925。投票率72・16%。賛否の公式発表はまだだが、独立賛成が多数を占めることは確実と思われる。
賛成票多数を得たクルド人自治区の最高指導者バルザーニ議長は、投票前日の国際記者会見で、大多数の“イエス”を期待し、住民投票による国家独立の決定を“キャンセル”することはあり得ず、いかなる条件の提案も「アルビルをイラクに留めることはできない」と明言した。そして、独立実施へのイラク政府との交渉を直ちに開始したいと表明、交渉は2年間以内までの期間を予想しながらも「もっと早く決まることも、もちろんある」と述べている。交渉が全く進展しなければ、クルド側が一方的に独立を宣言することもあり得る。
前回紹介したように、国連と英、仏、米の共同代表団は自治区を訪問し、クルド人の自決権を認める一方で、現情勢下の独立投票を延期するよう強く求め(トランプ政権はその後、延期ではなく中止を要求)ている。まさに中東の現情勢とクルド自治政府の難民支援、クルド武装勢力ペシュメルガの対イスラム国(IS)作戦での大きな貢献は国連も欧米・周辺国も認める現実であり、当事国イラクも周辺国そして日本を含む国際社会も、平和的にイラク・クルド人の独立を受け入れ、支援すべきだ。
しかし、イラク政府の立場は、イラクからクルド独立国家が分離することを憲法違反として、真っ向から反対しており、政府が交渉には応じても難航することは必至だ。
クルド側が実効支配している政府との帰属係争地域、世界的な産油地域のキルクークでも投票が実施され、78.77%の高い投票率となった。これに対して、イラク政府のアバディ首相は、キルクークの支配を回復するため、政府軍を派遣すると表明した。
国内のクルド人の民族意識の高まりを恐れるトルコ、イランも独立投票そのものをつぶそうとした。とくに国民人口の少なくとも10%以上1千万人程度のクルド人がいるトルコ政府は厳しく動き、クルド人多数地域のイラクとの国境閉鎖、イラクとの合同軍事演習、現クルド人自治区の財政収入の大部分を占める原油輸出の出口トルコのジェイハン港の使用禁止まで脅した。
クルド人の自決権を国際社会は否定できない。歴史的な独立投票の成立が新たな国際紛争を発生させないよう、いま、国際社会の責任は大きい。
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