「北朝鮮への圧力強化」で、疑惑・争点を隠す安倍自民党
- 2017年 10月 13日
- 評論・紹介・意見
- 坂井定雄安倍選挙
安倍首相と自民党は「北朝鮮への圧力強化 国民を守り抜く」(朝日新聞の「衆院選8党の公約」の見出し)を、選挙演説の冒頭にしゃべっている。北朝鮮への国民の敵意を煽り、利用し、国際社会の圧力強化への努力を、日本政府の手柄のように宣伝する大嘘。安倍政権への国民の支持を一挙に失わせた森友・加計疑惑を、選挙の争点から逃げとおし、憲法改悪、増税、原発再開などの重要争点をぼかす戦術。ひどい総選挙だ。
北朝鮮の核開発、悪しき独裁体制には、自民党から共産党まですべての政党が強く反対し、相違はない。核開発を中止させるために、国際的圧力を強化する点でも日本の各政党だけでなく、世界各国が共通している。世界各国の努力は、国連安全保障理事会の決議による経済制裁が行われているとともに、制裁を徹底するよう、国連も主要国も中国に働きかけている。安倍首相は「北朝鮮への圧力強化」を宣伝文句にするが、日本は独自にやれることはもうなく、国連の場で、安保理決議の文言に注文をつけるぐらいだ。北朝鮮が崩壊しないように、暴発しないように制限した支援を続け、物資の密輸出入を見逃している中国に対して、支援をさらに縮小するよう求める主要国の中では、対中関係が最も悪い日本は、その役割が果たせない。歴代政権のなかで、安倍政権は対中関係が最悪だ。
まるで世界をリードして「北朝鮮への圧力強化」しているかのような自民党選挙スローガンは、大嘘と言わねばならない。「国民を守りぬく」なんてスローガン、北朝鮮が日本を核攻撃してくるような文句で、国民の危機意識を煽るのは、国民の良識と判断を狂わせる、危険な独裁者の常套手法でもあった。
ただし、米国のトランプ大統領だけは、北がどうしても核開発をやめず、米国攻撃の可能性が現実的になれば、あらわな言葉ではないが、2千5百万人の国民がいる北朝鮮を核攻撃して全滅すると発言している。そのトランプが大統領選挙に当選した直後、就任前にお祝いに駆け付けたのが安倍首相だった。トランプ政権の対北朝鮮行動を無条件支持が、「北朝鮮への圧力強化」だと安倍首相は思い込んでいるのかもしれない。
日本政府が北朝鮮への圧力強化のために、もっともやらねばならなかったことは、今年のノーベル平和賞を受賞した核廃絶を目指す国際NGO「ICAN」が成立に尽力した、核兵器禁止条約に賛成し、加盟することなのだ。日本政府は国連での条約成立に他の核保有国とともに反対した。米国の核抑止力に依存しているので反対した、というのが日本政府の言い訳だった。しかし、唯一の戦争核被爆国で広島、長崎で巨大数の死者を犠牲にした日本は、米国の核抑止力に依存していても、いなくても、核兵器の禁止に努力しなければならないし、その権利がある。米国ですら日本の立場を尊重して反対しきれないはずだ。安倍政権は、北朝鮮の核保有に反対する以上、核兵器禁止条約に賛成し、参加すべきなのだ。
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〔opinion7028:171013〕
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