12月2日の新聞は、天皇の生前退位をどう報じたか
- 2017年 12月 6日
- 時代をみる
- 内野光子
一つ前の記事では、退位の日、2019年4月30日をどう表現したかについて触れた。ネット上での検索も含めてまとめると、読売、朝日、毎日、東京は、「2019年」であり、NHKは「再来年(2019年)」であったが、産経が「平成31年」であった。産経がスジ?を通していると言えば言えるか。
沖縄における、琉球新報、沖縄タイムズでは、関連記事自体が極端に少ない。12月2日の社説は、二紙とも昨年、うるま市の女性が米軍属に殺害された事件の那覇地裁の判決についてであった。
琉球新報:社説・元米軍属に無期懲役 地位協定の改定が急務だ
沖縄タイムス:社説・[元米兵に無期懲役]なおも残るやるせなさ
手元にある朝日、毎日、東京の三紙を読んでみると、まずは、今回の退位日程の政府と宮内庁の駆け引き、新元号や即位の儀式や日程についての記事が圧倒的に多い。同時に、社説とあわせ天皇30年間の足跡をつぎのような記事で報じている。
毎日:社説・天皇陛下の退位日決まる 国民本位を貫く姿勢こそ
苦楽国民に寄り添い おことば世論を動かす(付年表)
朝日:平成史 お二人の足跡「差別解消に力」「被災者に寄り添う」(付年表)
東京:社説・国民の理解とともに 天皇の退位と即位
慰霊の旅 平成築く 前侍従長川島さん象徴天皇制の意義語る
朝日の社説はまだ出ていないが、「耕論」欄において、「天皇と政治」のテーマで御厨貴「退位 官邸と宮内庁のバトル」、河西秀哉「能動的象徴 利用される危険」と語らせている。もっとも朝日は、かねてより「皇室と震災」のシリーズで、連載をしている。
うねりのような、こうした流れの中で、少しでも異議をさしはさむことが困難な時代になった。1977年生まれの河西秀哉は、慎重な言い回しでつぎのように語った(上記「天皇と政治」『朝日新聞』2017年12月2日)。
「天皇が進んで被災地を訪れていますが、政治がそれを利用しようとする気になれば、結果的に被災者の政治への不満を天皇が和らげ、政治の不作費を覆いかくしてしまうことにもなりかねません」
「昨年8月の『おことば』にこめられた今上天皇の思いは、半分は政権に受け流された感じがします。国事行為の縮小や摂政の設置を否定するなど政治性を小保田『おことば』は結局、政権によって政治的に処理されたのかもしれません」
また、原武史は、「連休で<歓迎>演出か」の見出しで、日程についての政府の思惑、皇室会議の議事録非公開、「おことば」の政治性、上皇設置による二重権威化を指摘していた(『東京新聞』2017年12月2日)。
今回の衆議院選挙においても、若年層の保守化が著しい傾向が明らかになった中で、上記のような中堅世代の活発な発言を期待したいし、私たち高齢者も戦中戦後の体験と天皇の果たした役割を、きちんと整理して伝えていきたい。
初出:「内野光子のブログ」2017.12.2より許可を得て転載
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〔eye4259:171206]
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