【報告】「イージス・アショア」閣議決定に官邸前抗議(連帯メッセージも)
- 2017年 12月 21日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
12月19日午前、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の閣議決定が強行されました。閣議決定直前に行った「イージス・アショアの閣議決定をやめろ!官邸前緊急行動」(呼びかけ:大軍拡と基地強化にNO!アクション2017)には約20人が参加。生活保護費を3年間で160億円削減する一方で、2000億円を超える巨額の武器購入によって米国の「軍産複合体」に貢ぐ最低の政治に「NO!」の声をあげました。配備候補地の人々とも連携しながら、取り組みを進めていきたいと思います。
22日には政府予算案が閣議決定されます。年末のどさくさに紛れて、イージス・アショア導入を閣議決定し、「専守防衛」を逸脱する敵基地攻撃兵器(巡航ミサイル)の購入予算を突然計上する。憲法9条の制約を取り払う攻撃の最終段階です。関連予算を削除させる本気の取り組みが求められます。ここで食い止めなければ、明文改憲の企ての手前で、憲法9条はボロボロになってしまいます。
ちなみに、当日のマスコミ取材はTBSと秋田魁新報のみで、関心の弱さも浮き彫りになりました。そうした中でレイバーネットがしっかり報じてくれましたのでご紹介します。
イージス・アショア導入反対!官邸前行動(12月19日、labornetTV、7分)
https://www.youtube.com/watch?v=UdREfcqPwYs&feature=youtu.be
軍拡ニッポンでいいのか!/陸上イージス「閣議決定」反対の声上げる
(12月19日、レイバーネット 写真速報)
http://www.labornetjp.org/news/2017/1219shasin2
官邸前行動では、「ミサイル防衛」や宇宙軍拡などに反対するNGOの国際ネットワークである「宇宙の軍事化と核戦場化に反対する地球ネットワーク」( http://space4peace.org/ )からの連帯メッセージも紹介しました。同ネットの共同代表であるイギリス在住のデイブ・ウェブさんと、日本理事である京都在住の藤岡惇さんが共同で書かれたものです。
メッセージは「ミサイル防衛というシステムは、先制攻撃すると反撃されるという恐れから米国を解き放ち、米軍が安心して先制攻撃を行える態勢をつくることに眼目」があると指摘しています。国内で報じられていない視点が盛り込まれています。後ろに付けましたので、ぜひご一読ください。
<参考>
陸上イージス「軍拡につながる」 都内で反対集会(12月20日、朝日)
https://www.asahi.com/articles/ASKDM5QZFKDMUTIL051.html
陸上イージス配備、候補地知事「何も説明ない」(12月20日、読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20171220-OYT1T50058.html
「イージス・アショア」導入を閣議決定、“北朝鮮の脅威”に揺れる町は
(12月19日、TBS NEWS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3243899.html
イージス・アショア その仕組みと運用とは(12月19日、NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171219/k10011264191000.html
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◆陸上イージス基地設置反対集会への連帯メッセージ
http://kosugihara.exblog.jp/238095930/ (← 英文も掲載)
「宇宙の軍事化と核戦場化に反対する地球ネットワーク」は、東京の首相官邸前で開かれている集会に、連帯の挨拶を送ります。
安倍内閣は、秋田県と山口県に20億ドルもの巨費を投じて、2つの陸上イージス基地を建設するという決定を行おうとしていますが、この決定は決して認められません。なぜならば、いわゆるミサイル「防衛」システムというのは、日本の市民の安全を高めるものではなく、北朝鮮・中国・ロシアなどのミサイルからグアム・ハワイ・米国本土に展開する米軍の軍事拠点を守り、米国側が先制攻撃を展開できる態勢を築くものだからです。陸上イージス基地を日本に作り、ここにSM3ブロック2Aミサイルを配備しておけば、仮に北朝鮮が核ミサイルを打ち上げても、これを確実に撃ち落とし、日本の市民の命と財産を守ることができると聞かされていますが、これはまったくの偽りです。
米国の迎撃実験の過去の実績から判断すれば、弾道ミサイルを撃墜できる可能性は小さいものですが、SM3ミサイルが首尾よく、北朝鮮の核ミサイルを撃墜する勢いで接近できたと仮定しましょう。北朝鮮側に対抗手段がないのでしょうか。いやあります。迎撃ミサイルの接近を感知したら、ただちに核爆発を起こせる感知装置、いわゆる「近接信管」と言われる装置を核ミサイルに搭載しておけばよいのです。核反応は化学反応よりも1千倍も速いスピードで進みます。核爆発が始まり、終わるまでには、わずか10万分の1秒しかかかりません。米国の迎撃ミサイルが秒速10キロメートルで接近するとします。あと1メートルまで近づいた地点で、接近を感知し、核爆発が始まったとすると、迎撃ミサイルはわずか10センチメートルだけ近づいたところで、核爆発は終わってしまうのです。
陸上イージス基地の位置からして、核爆発は、日本のはるか上空、100キロから1千キロの宇宙空間で起こることになるでしょう。この種の核爆発は、巨大な電磁パルス波を発生させ、人工衛星の各種機能をマヒさせ、日本全土の電気回路、コンピュータネットワークを大混乱させるでしょう。電気通信や交通は途絶し、GPSはマヒし、停電が続き、冷凍食品は腐り、疫病がまん延するなど、日本全土は、「核の冬」ならぬ、「核の闇」に長い間、閉ざされてしまう可能性があります。
日本政府は、陸上イージス基地は、日本の自衛隊が担う活動だと強弁し、その活動と使用に米軍の戦略司令部が密接に関与していることを隠しています。しかし実際には、陸上イージス基地は、米国が巡航ミサイルなどを先に発射し、北朝鮮・中国などに先制攻撃を仕かけるための盾として用いられるのであり、北朝鮮や中国にとっては「脅威」以外のなにものでもありません。このようなものとして、陸上イージス基地は、中国やロシアを包囲し、封じ込める基地群の連鎖の一環なのです。したがって、この新たな基地は、米国が目指す地球規模の圧勝態勢づくりの一環に日本をより深く組み込むことになるでしょう。
私たち地球ネットワークは、欧州・太平洋地域においてミサイル「防衛」基地を建設する企てに長年反対してきました。なぜならミサイル防衛というシステムは、先制攻撃すると反撃されるという恐れから米国を解き放ち、米軍が安心して先制攻撃を行える態勢をつくることに眼目があり、それゆえ国際緊張を不必要に高め、軍拡を促進し、核の先制使用攻撃を可能にすると警告してきました。北東アジア地域では、今日、緊張が最高度に達し、核紛争が起こるかもしれぬという恐怖が渦巻いています。この地域に今、陸上イージスという基地を設置することは、この緊張の火に油を注ぐだけであり、実に無謀だと言わねばなりません。日本政府がなすべきことは、軍事的緊張を緩和し、核の破滅を避ける道を探るための外交的措置をとることだと信じます。
緊張を緩和させるために私たち市民は、今、何をなすべきなのでしょうか。日本の人々は、地球上のどの国民よりも核兵器が使用されたらどうなるかという痛ましい体験と記憶をお持ちです。今、日本政府には素晴らしい選択の機会があります。陸上イージスという、米国の挑発的で好戦的な基地の建設を拒否するならば、平和な世界を作り、いのちの惑星を保全する事業に日本政府は立派な貢献をなしたという栄誉を与えられるでしょう。あわせて核兵器禁止条約に署名するという勇気ある決断をなすならば、世界の人々は心からの感謝に満ちた万雷の拍手で迎えることになるでしょう。この決断こそが、もっと平和で持続可能な、しかもはるかに安価な安全保障の世界に日本の市民を導いていくでしょう。
この瞬間にも、私たち地球ネットワークのコーディネイターのブルース・ギャグナンと理事メンバーのウイル・グリフィンは、「平和のための米国退役軍人会」(ベテランズ・フォー・ピース)の一員として、沖縄に滞在しています。沖縄の人々と力をあわせて、大浦湾の素晴らしい景観と海の生物のすみかを破壊する米軍の基地建設に抗議する運動に参加しているのです。東京の地では、皆さん方とご一緒できませんが、地球ネットワークは、陸上イージス基地の建設という軍拡競争に抗議する皆さん方の運動とともにあります。そして軍国主義と戦争のまん延に抗議し、いのちの惑星=地球の自然と社会を守り、宇宙核戦争を起こさせず、この「希望の惑星」を核汚染から守り抜く運動において、連帯していく決意を新たにしています。
平和と私たちの安全の真の保障のために。宇宙を核の戦場にするな。地球上の戦争は許さない。
2017年12月19日
宇宙の軍事化と核戦場化に反対する地球ネットワーク
The Global Network Against Weapons and Nuclear Power in Space
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion7205:171221〕
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