9条改憲に強い懸念と危機感 - 2018年の年賀状にみる国民意識 -
- 2018年 1月 12日
- 時代をみる
- 岩垂 弘憲法改憲
2018年になった。友人、知人から来た年賀状を読んでいてひときわ印象に残ったことがあった。安倍首相と自民党が推進する憲法改定、とりわけ「9条改憲」に対する強い懸念や危機感を表明した年賀状が目立ったことだった。
私はこれまで毎年、多くの友人、知人と年賀状の交換をしてきたが、これまでの年賀状の文面といえば、「明けましておめでとうございます」とか「謹賀新年」とか「賀正」といった、いわば新年を言寿ぐ決まり文句や、自分や家族の消息や近況を伝える文面が大半であった。
が、ここ数年、内外の政治・社会状況や世相への感想や主張を表明した年賀状が増えてきたように思う。以前は、年賀状では政治的なことへの発言は控えるというのが一般的な慣習だったが、年賀状でも政治的なことに意見をはっきり述べる人が増えてきたということだろう。
今年は、日本国憲法に関する文面が目立った。例えば――
「昨年は、非正規雇用者が人間扱いされない社会や、9条改憲の策動などに憤怒する日常でした」(埼玉県熊谷市・会社員)
「昨年の衆院選で改憲勢力が3分の2以上を獲得したことで、安倍政権の暴走が止まりません」(神奈川県伊勢原市・元高校教員)
「今年は年初よりトランプの朝鮮民主主義人民共和国への挑発と武力威嚇による核戦争の危機、それに追従する安倍の策動と改憲の動きの加速が予測されます」(長野県諏訪市・大工)
「いよいよ改憲が目前に迫り、安倍政権の横暴さを何とかしたいと思う年始めです」(東京都中野区・元生協職員)
「平和憲法の危機 正念場の年です 『戦争をする国』に逆行させない 訴えつづけます」(東京都品川区・ジャーナリスト)
「沖縄、原発、そして憲法改悪、腹の立つことばかりです。平和憲法を護る、9条を変えることを許さない!」(東京都品川区・元国会議員秘書)
「安倍政権は、北朝鮮の脅威の名の下に長距離巡航ミサイル導入を検討、日本の防衛の基本方針である専守防衛を逸脱し、憲法を蔑ろにして軍国化が進められています。自衛隊を、憲法に基づいたものにするのではなく、軍隊と化した自衛隊に合わせて、憲法を変えようと本末転倒の流れを断ち切るために、今年も声をあげてまいります」(東京都立川市・女性)
「寒さ厳しくとも、冬の花は彩りを増し、子どもたちの瞳は澄み、輝いています。日々にこそ、平和あり。戦争をさせない。自衛隊の人たちの命を危険にさらさせない。私たちは憲法を変えることに反対します」(東京都国分寺市・弁護士とその妻)
「現政権は、自衛隊を明記して、専守防衛に徹するとかなんとか言って、平和憲法を装いながら、緊急事態条項を争点にしないように滑り込ませ、憲法を停止して、戦争を始めることができるような憲法にしたいのではと心配しています。緊急事態条項の無い今の憲法の方が、不備な点があったとしても、私たち国民にとって、はるかに安全であると思います」(東京都町田市・男性)
「武力では、守りは出来ぬ 世の平和 9条こそが平和を守る」(長野県諏訪市・元会社役員)
これも印象に残ったことだが、9条改憲に対する懸念、危機感は戦前生まれの人にひときわ強いようだ。
横浜市在住の元新聞記者は「1947年に新しい教育制度が発足し、社会科という教科も誕生して、その教科書『あたらしい憲法のはなし』には、武力による威嚇で屈服を迫る国にはならないとありました。新制中学1期生は、夢に賭けます」と書いてきた。
やはり元新聞記者(東京都東久留米市)から来た賀状には、こうあった。
「私の父は名古屋の下町で医院を開業して間もなく召集され、中国大陸へ軍医として三年間派遣されました。除隊後、医院を再開……それも三年ほどで終わり、今度は沖縄に派遣されて戦死しました。四十歳になる直前でした。まだ生まれない末子を含めて六人の子と妻を置いて、どんな思いだったか、涙なしには語り得ません」「父をはじめ先の戦争で犠牲になった多くの命と引き換えに戦後日本が得た平和憲法が今、弊履のような扱いをされることに耐えかねる思いです。未来を生きる子供たちのためにも何とか九条改憲は止めたいものと願っています」
では、どうしたらいいか。具体的な提案もあった。
「憲法九条と平和を守るため 国会だけに任せず 世論と運動を広げましょう」(愛知県豊田市・平和運動家)
「安倍極右政権は今年を『世界の至宝』たる平和憲法の改悪を具体化させる年にしようとしています。しかしどの世論調査でも、9条改憲に反対する声は常に過半数を超えています。『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』を成功させ、孫子の代に平和憲法を引き継ぎましょう」(東京都練馬区・ジャーナリスト)
『安倍9条改憲を阻止する3000万署名運動』とは、「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼びかけている「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」のことで、4月末に第2次集約、5月末に第3次集約を目指している。
新年早々、改憲をめぐる注目すべき動きや報道があった。1つは、安倍首相が1月4日の年頭記者会見で「今年こそ新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示する」と述べ、自民党の憲法改正原案を早期に国会に提示することに強い意欲を示したことだ。これにより、安倍政権による改憲作業が一層加速することが予想される。
一方、注目すべき報道とは、1月3日付の東京新聞の記事である。それは、同社加盟の日本世論調査会が12月9、10の両日に行った憲法に関する世論調査の結果で、それによると、戦争放棄や戦力不保持を定めた憲法9条の改定について「必要はない」が53%、「必要がある」は41%で、「必要がない」が過半数を占めた。安倍首相が加速を促す改憲の国会論議には、67%が「急ぐ必要はない」と答えたという。
これが世論とするなら、9条擁護派にとって前途は「望みなきにしもあらず」ということか。
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