福島原発・作業員の放射能汚染と、さる大学教授の国外避難
- 2011年 3月 30日
- 評論・紹介・意見
- 作業員の放射能汚染大学教授の国外避難岩田昌征
昨日3月24日、福島第一原発の危機対処中に下請け会社の現場作業員が放射能で火傷した。東電の説明によれば、装着した警報器が現場に入った瞬間になったが、作業員が誤作動だと判断して、そのまま作業に入ったからという。さすがに作業員の自己責任だとまでは言っていない。これからは東電社員が付き添うようにするとしていた。精神と神経をギリギリ任務に集中させなければ仕事にならないはずの危険な現場で、放射線量の危機管理も作業員の仕事になっていた。平時のワンマンバスの運転手と同じように、一人二役を演じさせていたわけである。東京消防庁のレスキュー隊とは大違いである。東京消防庁の隊員間には指揮命令の機能的官僚制が働いていたが、社会身分的には平等の同志であったと思われる。原子力発電所の場合、東電の社員と下請け(協力)会社の作業員との間に社会的身分差が日頃からあって、それがこのような事故と作業中断を引き起こしたのかもしれない。そうでないことを望む。
3月19日の「ちきゅう座」「時代をみる」に孫崎享氏のTwitterに以下のメールが載っていた。
― 一大学教授より:妻と下の娘と3人で今日名古屋に移動。土曜日に東南アジアに向かいます。研究目的の海外渡航願を提出してきました。内外からの情報と外国の外交官と外資系企業ネットワークからの情報を集約分析した結論でした。 2011年3月17日 10:12:50 Webから。
私、岩田は、これを読んで、日本社会では大学教授がプロではあっても(?)エリートではなくなって久しいことを身にしみて実感した。エリートの条件の一つは、先憂後楽の思想と実践である。それが全く見られない。現場作業員は、この瞬間エリートであろう。事実上「先憂後楽」を実践している。
ここで私は、この大凶災が起こってから詠歌した四つの長歌「日の本なゐふる」の第四首を下に提示したい。私固有の表現があるので、注をつけておく。(1)社長と副社長、(2)本社社員、(3)下請け会社、(4)常民、(5)現場の労働者・技術者、(6)放射能、(7)東京消防庁隊員、(8)自衛隊員、(9)乱調原子炉、(10)電子メール、(11)上記の大学教授、(12)航空機、(13)原発事故
私は人間平等論者である。しかしながら、今この瞬間は、かの大学教授の旅のつつがなきを願うよりは、かの3人の現場作業員を含む現場の人々の無事と任務達成を何百倍も強く祈る。
平成二十三年弥生二十日
大和左彦(岩田昌征)
日の本東、なゐふる 四
かみすけ(1)の 下の(2)下(3)なる
とこひと(4)の 卒徒工匠(てひとたくみ)(5)は
目に見えぬ 禍津力(6)の
まなかにて 日継ぎ夜継ぎと
生命かけ みやこ火消し(7)と
みいくさ(8)の 力副へあり
禍神(9)に まつろはぬなり
かかる時 いかづち(10)文に
都なる 博士(11)のありて
わざはいゆ 逃ぐるを旨に
とつくにへ 鳥船(12)に乗る
とそあれば 吾は思ひぬ
今逃げよ とつくに人よ
みづからの 国へ旅立て
大和児の つとめは何そ
手人(てひと)等の 技師等(たくみたくみ)の
禍津火(13)に打ちてし止むを
待つのみそ 心乱ず
見守るにあり
反歌
てひと等のくにたみ救ふたたかひを
都博士や去りても忘るな
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0396:110330〕
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