アメリカの世界的威信の低下続く - トランプ大統領就任の1年で -
- 2018年 2月 1日
- 時代をみる
- アメリカトランプ伊藤力司
1月20日、ドナルド・トランプ・アメリカ合衆国大統領は就任後満1年を終えた。この間「アメリカ第一主義」つまり「アメリカのエゴイズム」を掲げたトランプ政権の米国は、国際社会での指導力を大きく落とした。
米国の世論調査会社「ギャラップ」が昨年3~11月に134か国の15歳以上の男女1000人ずつに質問した結果、米国の国際社会についての指導力については、「評価する」が30%、「評価しない」は43%という数字が1月19日に発表された。「評価する」はオバマ政権時代の2016年の48%から18ポイントも下落した。
ギャラップがこの調査を始めた2007年以降では、アフガン、イラク戦争を始めたブッシュ(息子)政権の2008年の34%を下回り、過去最低の記録となった。日本での調査では「評価する」が31%で、オバマ政権最後の2016年の47%から16ポイントも減った。評価しないは36%だった。
第2次世界大戦以降、米ソ冷戦時代は自由世界の、そして冷戦終結以後は全世界のリーダーとして押しも押されぬ存在だったアメリカがこの体たらくである。1960年代のベトナム戦争をはじめ1991年にアフガン戦争、2003年にイラク戦争を始めた「戦争国家」とはいえ、1776年の独立宣言以来の「自由」と「民主主義」のリーダーであることを自他共に許してきた国である。
トランプ大統領は、戦後70年余り続いたアメリカの世界におけるリーダーシップを自ら放棄することを宣言した。それが「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)である。その結果トランプ政権の1年は、外交・安保政策でも「独断」と「前例打破」の連続となった。
トランプ大統領は就任早々の昨年1月27日、2006年から10年越しの交渉で12か国がようやく合意した環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を宣言した。TPPはアメリカの国益に反するとして、TPP離脱は大統領選挙戦でのトランプ候補の公約だった。
ところが大統領はつい最近になって、再交渉を前提にアメリカはTPPへの復帰を検討すると前言を翻した。世界中の政財界の要人が一堂に会する今年のダボス会議に初出席したトランプ大統領は、1月26日の演説でTPPについて「すべての国の利益になるなら再交渉を検討する」と述べた。
米国以外のTPP11か国はこの1年間に、米国抜きのTPP再交渉をようやく仕上げたばかりだ。トランプ政権と11か国の再交渉が始まるのか現段階でははっきりしないが、再交渉に臨む意図は当然米国の通商上の利益拡大であり、米国に競争力のある農産物や医薬品などの問題で日本などはまた窮地に立たされるかもしれない。
さらにトランプ大統領は昨年6月、1997年の京都議定書から18年ぶりに2016年12月にようやく採択された地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの脱退を表明した。アメリカは2001年のブッシュ(息子)政権時代に京都議定書から離脱した前例がある。
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