財務省公文書偽造は「権力の私物化」を納税者が追いつめるチャンス!
- 2018年 3月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎安倍森友
2018.3.15 以下は、ある全国新聞の3月13日付け「主張」「公文書書き換え 国民への重大な裏切りだ 「信なくば立たず」忘れるな」です。長文ですが、引く意味があります。
「学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐり、財務省が売買の決裁に関するものなど14文書を書き換えていたことを認め、調査結果を国会に報告した。安倍晋三政権はこの1年、土地売却や財務省の対応などに問題はないと答えてきた。これを覆す事態である。 公文書とは、国などの行政機関の活動の基盤となり、歴史の証しともなるものだ。それを正しく取り扱うことは、民主主義の根幹を成す。だからこそ、偽造や変造は刑法上の罪にあたり、重い罰則が設けられている。
≪政権の問題ととらえよ≫ 驚くべきことに、国土交通省と会計検査院は、それぞれ財務省による書き換えに感づいていたという。中央省庁が不正を働き、見て見ぬふりをしていた。国が根底から揺さぶられているといってよい。書き換えの事実関係を解明し、信頼を取り戻すことに努めるしかない。安倍首相は「行政全体の信頼を揺るがせ、行政の長として責任を痛感している。国民に深くおわびする」と語った。信頼回復に向けて「全力を挙げて取り組む」という以上、関係者の国会招致などにも積極的にあたるべきだ。麻生太郎副総理兼財務相は謝罪した上で、書き換えの最終的な責任者として、すでに9日に辞任させた佐川宣寿前国税庁長官(当時の理財局長)の名前を挙げた。佐川氏は理財局長当時の国会答弁で、学園側との価格交渉は行っておらず、交渉記録は廃棄したと説明した。事実と異なり、その整合性をとるために、文書の方を書き換えたということなのか。都合の悪いことを隠すため、公文書をこっそりと書き換えるのは改竄(かいざん)というべきである。国会答弁を取り繕うために不正を働き、どんどんボロが出てきた。「役所の中の役所」ともいわれる財務省の官僚が、公文書の書き換えで公正であるべき行政をねじ曲げていた。お粗末ではすまない行いである。行政内部の問題にとどまらないのは、安倍政権が国会答弁や記者会見で、事実に基づかない説明を続けてきたことである。結果として、政権そのものに対する国民の信頼を傷つけたことを、直視しなければならない。国会議員に提示する文書の書き換えは、立法府の軽視である。与野党を問わず、厳しく対処しなければならない。……残された疑問で大きなものは、なぜ書き換えをしたか、なぜこの国有地売却を実行したかである。書き換えや土地売却をめぐり、佐川氏以外に政治家の働きかけなどはなかったのかを解明する必要がある。佐川氏の辞任は説明責任を逃れる免罪符とはならない。与野党は協力して、国会招致を実現すべきである。佐川氏を国税庁長官に起用した麻生氏の責任も重大である。佐川氏への疑問が拡大する中でも「適材適所」と擁護していた。日本は、北朝鮮核危機という国難に直面している。そのときに政権が国民の信頼を失うことが、いかに政策遂行の妨げとなるか。安倍首相には、重大な失政と認識して対処してもらいたい。」
種明かしをしましょう。これは、かの産経新聞の3月13日「主張」です。「公文書偽造」とまでいわなくても、3月2日に朝日新聞がスクープした「書き換え」ではなく、自民党幹部のいう「訂正」でもなく、「改竄」と認めています。「北朝鮮核危機という国難」で締めたり、消された安倍昭恵が出てこなかったり、他紙と比べればまだもどかしく、同日付産経紙面全体との齟齬もありますが、それでもこの産経「主張」は、まだジャーナリズムが生き残っている兆候でしょう。NHKが官邸前の抗議行動をようやくニュースにし、朝日新聞の14日朝刊は「今後の開示請求に備えて」財務省理財局が犯罪に手を染めたプロセスの、秀逸な調査報道です。朝日・毎日に負けじと、読売も自殺した財務相近畿財務局職員のメモをスクープしました。次は、日経新聞の番です。3月13日「社説」は「行政の信頼損なう「森友文書」の解明急げ」と悠長な筆致ですが、労働時間の統計データばかりか、首相夫人の関与で国有財産の8億円もの値引きが行われているのですから、こんなトップが居座る政府の元で、本当にまともな経済活動ができるかどうかを、ぜひ財界首脳に広く質してもらいたいものです。ちょうど春闘の時期、日本の民主主義と共に、アベノミクスの根底が崩れる事態です。
国際情勢も、朝鮮半島南北首脳会談から米朝会談の方向へと、劇的な展開です。5月までの事前協議・開催場所、米国国務長官の解任と前CIA長官の就任、中国・ロシアの対応など、まだまだ不安定なところはありますが、「圧力」から「対話」の流れ自体は、疑いありません。この間確実なのは、東アジアのもう一つの当事国である日本の安倍内閣は、威勢のいい「圧力一辺倒」の危機アジリだけで、世界の趨勢から取り残され、蚊帳の外だったことです。思い起こせば、昨年10月総選挙での与党の圧勝は、野党の分裂・解体ばかりでなく、北朝鮮との戦争切迫の危機感、森友・加計問題の国会審議引き延ばし・逃げ切りの結果でした。その二つの条件が、二つながら崩れた安倍独裁の内憂外患の危機ですから、野党と心ある市民にとっては、権力の私物化とファシズム化にブレーキをかける、絶好のチャンスです。世論と、市民の運動の出番です。
私にとって、例年この時期は、海外での調査と所得税の確定申告が重なる憂鬱な時期です。国家公務員だったある時期から印税・講演料などがあって、源泉徴収があっても確定申告が必要になり、いったん税務署に提出すると、勤務先が変わったり年金生活に入っても、毎年税務署は追いかけてきます。近年は医療費もかさむようになり、控除のために領収証を保存し申告するようになりました。電子申告e-taxが導入された時には勇んで試みたのですが、当初はすべてwindows 仕様で、mac 族は特別の機器とソフトが必要なことがわかり、ばかばかしくてやめました。そのうえ今年からマイナンバーが必須で、しかも医療費控除の申請方法が変わり、何より国税庁長官があの佐川宣寿であったことから、投げ出したくなりましたが、やむなく貴重な時間を割きました。高福祉高負担の北欧はもとより、アメリカでさえも、税の自己申告とその使途の監視は、taxpayer の権利行使・異議申し立ての重要な要件です。佐川国税庁長官の辞任と8億円背任容疑、行政府中枢での公文書偽造が、この憂鬱な時期に重なりました。日本において、納税者一揆が、永田町・霞ヶ関を動かせるか? 週末からしばらくイギリスですが、桜の便りよりも、国会前と世論の変化に注目しようと思います。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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