宮崎県「口蹄疫」被害と芸能人知事・議員の横行
- 2010年 6月 1日
- 評論・紹介・意見
- 伊東恵介口蹄疫
宮崎県で発生し、ひろがっている家畜の伝染病、「口蹄疫(こうていえき)」被害が止まらず、その影響が深刻になっている。
<宮崎県、国の対応は後手>
宮崎牛拠点で「口蹄疫」の疑いが出たのは、今年の4月20日、宮崎県都農町で感染が疑われる牛が確認され、その後続いて隣接する川南町などでも感染疑いの牛が出るなど、国内で10年ぶりの事態となった。さらに4月28日には、県境のえびの市でも豚への初めての感染疑いが確認されて後、豚感染もひろがり、殺処分対象が3万頭近くに及んだ。
このような深刻な事態が進展していたにもかかわらず、宮崎県などの対応は後手のままとなっている。宮崎県はやっと発生から約1ヶ月近くたった5月16日、宮崎牛の種牛を一括管理する唯一の供給拠点・宮崎県家畜改良事業団(宮崎県高鍋町)で、家畜の伝染病、
「口蹄疫」の疑いのある飼育牛5頭が見つかり、種牛49頭と飼育牛259頭の計308頭すべての殺処分を決めたと発表した。
宮崎県やJA宮崎経済連によると、宮崎牛は年間1万2,000~1万3,000頭出荷されるほか、県産の子牛が松阪牛(三重県)や近江牛(滋賀県)、佐賀牛の産地など県外にも年間約3万頭出荷されており、宮崎牛ブランドだけでなく、その影響は全国に及ぶおそれがある。
口蹄疫は、牛をはじめ豚、ヤギ、ヒツジなど偶蹄類動物を冒す家畜法定伝染病で、伝染力はきわめて強く、乳牛では乳量が激減する。防除は困難で、患畜は迅速に焼却処分される。
なお人への感染はないとされる(百科事典『マイペディア』)。
<広範囲で、深刻な影響>
感染が拡大した宮崎県内では、約15万頭の牛や豚などが殺処分の対象となった。JA宮崎中央会は5月15日までの経済的損失を160億円と試算している。
口蹄疫の影響が出始め、発生地域などでの外出自粛、公共施設の休館、各種イベント・行事等の中止、といった暮らしの混乱だけでなく、値上がり・競り中止といった生産サイクルの混乱へとその影響は深刻さを増している。
それに対して宮崎県や国の対策がスムーズに進んでいない。初動対応の遅れも判明し、宮崎県と政府が互いに責任をなすりつけ合うだけで、対応は後手に回っている。宮崎県では、2~3日前から種牛の発熱が出ていたにもかかわらず、農林水産省への報告が遅れるなど対応の“ずさんさ”が目立っている。
<選挙での芸能人・スポーツ選手の擁立>
一方このところ参院選の立候補予定者として、五輪メダリストの名が出たり、元プロ野球選手や俳優が登場したり、と「有名人」擁立が目立っている。政党の不人気を「有名人」人気で覆い隠そうという苦肉の策としかいえず、国民を馬鹿にしている。
今はどの政党にも、日本の針路に関わる大きな問題について、全体的な視点から考えられる政治家が少ない。日本の長期的成長戦略を構想し、停滞からの早期脱出が求められている。今まさに最も必要とされるのは、そんな人材であるはずだ。然るにスポーツ、芸能界などからめぼしい人物を物色してきて、ただ票を稼ごうという魂胆は情けない。
それにしても当の東国原英夫宮崎県知事もタレントから知事職についたものの、やたらと従来どおりテレビの娯楽番組などに出演し、精力を他業務に費やして、知事という本来業務に専念しているとはとても思えない。宮崎県民にはどう映るのか。
そうした「二足のわらじ」体質が今回の不祥事で、事態の悪化へと混乱の収拾を遅らせる結果となっている。ただ一時的な“タレント人気”、“スポーツ人気”、“芸能界人気”だけで、政治・経済・社会を正しい方向に導く中・長期的かつグローバルな問題解決はできるのだろうか、と首をかしげたくなる(2010年5月17日~30日付け朝日新聞などを参照)。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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