国会・首相官邸前にローソクが…
- 2018年 4月 3日
- 評論・紹介・意見
- 安倍小原 紘韓国
韓国通信NO552
3月30日、首相官邸前にローソクの波が揺れた。
「政府はウソつくな」
「安倍昭恵を喚問しろ」
「安倍内閣は総辞職しろ」
国政の「私物化」と事実の「隠蔽」に怒りの声があがった。身動きがとれないほどの人で通路は溢れた。午後7時過ぎ、金曜日の反原発デモに勤め帰りのサラリーマンたちが続々と合流、周辺一帯は肌寒さが吹っ飛ぶような熱気で包まれた。
多くの参加者が手にしたローソクが韓国の「ローソクデモ」を連想させる。友人と私は6時半から3時間、異様な興奮に包まれながら声を上げ、その場に立ち続けた。
集まった人たちの思いはとてもシンプル。前国税庁長官の国会喚問が茶番劇だったことへの怒り、崩壊寸前の民主主義に対する危機感で溢れていた。<写真/首相官邸前30日/上写真のローソク見えますか>
「主権者は私たち」という確信、「黙ってはいられない」という思いが爆発した。
市民の怒りに政府は危機感を感じたのだろうか、これまで見たことのない多数の機動隊員が動員された。随所から「過剰警備」へ怒声が飛んだ。
私たち70代のオジサンには3時間が体力の限界だった。9時半過ぎ、私たちが帰宅に向かう下りエレベーターと逆にこれから参加する人たちの姿が上りエレベーターに見えた。
「明日も7時からお集まりください」という「お知らせ」もなければ、何時に「解散」という声も聞かれない。終電車まで、いや夜通しでも抗議が続きそうな気配だ。自然発生したとしか思えない熱い抗議の集会から安倍政権の終わりと新しい時代の始まりを予感した。
腹が減ったので友人とお茶ノ水駅近くの中華そば屋に入った。彼は興奮気味に「悪いことをしたら大統領でも逮捕した韓国を見習うべきや」「何でもウヤムヤにする日本は進歩が期待できへん」と関西弁で感想を語ってくれた。関西弁は迫力がある。彼はその日、機動隊員を「うるさい、静かにせんかい」と怒鳴りつけた。彼からローソクデモに参加した韓国市民に近い迫力と発想を感じた。安倍首相が辞めて済む問題ではない。「安倍マフィア」たちの逮捕も考えられる深刻な問題にもかかわらず、深夜のテレビニュースは「お花見情報」「プロ野球開幕」を伝えたが1万人を超す市民たちの怒りの集会は無視した。この日、友人は「市民デモ」のデビューを飾った。
<「憲法改正」の執念にしがみつく安倍首相>
高まる安倍政治への不信感。「安倍はやめてほしい」という声が巷に溢れている。
外交面でも醜態続きだ。ゴルフ友だちの盟友トランプ大統領から「もう甘やかせんで」と突き放され、プーチン大統領との「お友だち」関係も雲行きが怪しくなってきた。
首相自らが騒ぎ立てた北朝鮮脅威も平昌オリンピックを境にして、さま変わりになった。制裁一辺倒の方針を支持したマスコミも影を潜めた。気まぐれトランプ大統領が変数要因だが安倍首相の「戦争路線」が破綻する可能性は高い。そうなればイージス・アショアをはじめとする高額武器の買い付けは憲法九条を変える理由とともに根拠を失う。今頃になって北朝鮮と会談したいとは「引かれ者の小唄」にしか聞こえない。北朝鮮はよけいなことを言いそうな安倍に構ってはいられない。米国も中国も韓国も安倍首相に構ってはいられない。
どう見ても「死に体」内閣だが、九条改憲への野望は捨てていない。戦争を放棄した日本こそアジアの平和、なかでも南北朝鮮の和解に貢献できる好位置にあった。2002年の平壌宣言はその絶好の機会だった。それを壊したのが日本の「勇み足」を怒ったアメリカと小泉首相に平壌まで同行した安倍晋三官房副長官(当時)だった。「戦争は絶対に起こさせない」と努力した韓国政府と、改憲に執念を燃やす安倍首相は真逆の夢を追い求めている。憲法を変える状況も大義も無くなった以上、安倍首相が目指すのは改憲のための改憲に過ぎない。
<憲法改正で揺れる韓国>
韓国でも憲法改正政府案が発表され本格的な議論が始まろうとしている。国民の幸福と公正な政治が中心テーマである。これは文在寅大統領の選挙公約だった。改憲の概要は―
①大統領の権限縮小と議会の権限拡大―大統領に権限が集中しすぎたために起きた弊害をあらためる。 ②地方自治体への大幅な権限移譲 ③国民の基本権拡大―国民の生存権保障を中心に福祉社会の実現 ④大統領任期4年制と一回の再選を認める―政権の持続による政策の継続を求める。ただし提案をした大統領には適用されない。 ⑤比例制を中心にした国政選挙改革などである。
これに対して韓国の最大野党である自由韓国党(旧セヌリ党)は経済成長を犠牲にする市民本位の改憲をポピュリズムつまり人気取り改憲だとして反対する。さらに主要新聞各社(朝鮮日報、中央日報、東亜日報)も異を唱えている。「積弊清算」を掲げた新政権の前に立ちはだかる李明博元大統領、朴槿恵前大統領支持層、マスコミ・官僚・財界の力はあなどれない。無血市民革命だったため無傷で生き残った巨大な力が新政権を阻む構図だ。彼らの主張をつぶさに見ていると、情けないことにわが国の自民党と産経新聞、読売新聞の主張と似通っていることに気づかされる。
<시작이 반이다 シジャギパニダ(始めたら半分達成されたようなもの)>
私には忘れ難い韓国の諺である。韓国語の勉強を始めたばかりの頃「学習は半分達成されたようなもの」と韓国人の先生からこの諺を紹介された。韓民族の楽観主義と積極性に驚いた。志して始めたら半分まで来たとは、何と大胆な発想ではないか。ローソク革命も南北関係の改善も「始まった」ばかりだが50%成功したようなもの。あとは驀進するのみというのが「韓流」である。公正で不安のない社会作りを約束した政府を支え協力をするのはローソクを掲げた無数の市民たちの存在。その市民たちが目指す国家保安法の廃止、徴兵制の廃止、脱原発への具体的な道筋づくりにも注目したい。日本にもローソクの力が生まれている。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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