マンション生活で知り得た社会問題を考える(22) 私は仕掛けられた刑事告訴の経過・結果に納得していない
- 2018年 4月 13日
- 評論・紹介・意見
- マンション羽田真一
みんなと違う考えを持っている / ただそれだけのことで拘束され / 誰にも知られず、誰にも見えないところで / 問答無用に倒されてゆくのはどんな思いだろう (茨木のり子の詩「灯」から)
小さいコミュニティーの「管理会社マンション」で、住民として「管理費」を納めながら会社支配の不自由な管理が行われていた。それで、住民として批判・改善案などを文書配布・インターネット発信で提言すると、名誉棄損等の管理側の訴状に基づき刑事告訴され、村八分同様の仕打ちを受けてきた。そんな管理組合と約1年間近く戦い、「不起訴」処分となったものの、残念ながら羽田の公正な住民生活への要望は全く達成されないでいる。羽田は別にこの刑事告訴に勝つ目的で対処した訳ではないが、異分子を物言わせず権力に任せて排除して絶対権力を築いても、やがて彼らが手にした権力行使から生じる社会問題に潰されるであろうと確信している。
1. 刑事告訴捜査を受けたこの1年
この刑事告訴は2014年10月に当時の組合理事長F氏(次いで告訴担当専門委に就任)からの文書配布差止請求に始まり、住民の意見交換会、それに続く臨時総会による刑事告訴手続きの承認を経た後、告訴状が2015年4月に地元警察に受理され(理事会は1年遅れて2016年の定期総会で初めて発表)、受理から2年後の昨2017年4月に羽田の捜査が開始されたものである。それは羽田への突然の警察への出頭要請の電話で始まった。約半年ほど刑事による任意(限りなく強制的)取り調べが続き、検察に書類送検がなされ、昨2017年11月に検事による聴取を受けた後、12月に「不起訴」処分となり一応この件は無罪放免となった。しかし、ここに至る捜査の経緯に私は全く納得していない。下手に対処していたら心ならず「起訴・有罪」となり兼ねない状況の中で、羽田自身の「正しいことは正しい」との信念を貫く文書配布の実行と、2,3の賛同経験者の助けに救われたと思っている。警察司法の捜査に翻弄された1年であった。
2. 羽田が受けた警察・検察の捜査
法的弱者の羽田には警察の呼び出しを断る頭を持っていなかった。4月28日朝、警察署に出向いたら、いきなり取調室に導かれ、刑事2人から何の説明もなく「あんたのやっている行為(文書配布とインターネット)は名誉棄損・信用棄損になる。住民が皆迷惑しており、有罪になる。直ちに止めると約束しろ。」、羽田「納得できない。」。訴状と法律書をちらつかせ、私が認めるまで強い態度で何度もこれが繰り返えされた。そう迫られると無実の自信なく、最後には心ならずも認めたので放免された。刑事は直ぐ後を追ってきて、家族に身元引受を迫るなど逮捕の脅しを懸けてきた。夕方に電話をかけてきて5月2日に和解話し合いの場を設けるからと出頭を求めてきた。出頭するとその場に少し遅れてFが現れて、刑事の前で一方的に文書配布の被害を述べ、羽田に「文書配布の中止と住民への謝罪の一筆」を約束させて直ぐに帰っていった。警察での約束に逆らうことの怖さを感じながらも、今後のことを考え[文書配布を止める]理由はないと家族で相談し、5月6日にその決意の文書配布を実行した。その後の5月末に定期総会があったが、組合側はこの告訴問題を完全無視して進めてきたので、最後に羽田が発言し、出席していた住民に告訴の議論を喚起したが、Fは「この件は警察で捜査中」を盾に発表を拒み、総会議事録にも羽田の発言を載せなかった。
その後、8月まで数回にわたり訴状に添付された、過去に羽田が配布した要望書*を中心に聴取された。何度もかかってくる警察の電話に応えて出頭し、狭い取調室で数時間の尋問を受けて帰される捜査の繰り返しであった。当方は「訴因の文書配布よりも、何度訴えても無視してきた組合の会計不正疑惑を採り上げよ」と主張し、むしろ積極的に手持ちの資料を提出し誠実に対応したが、刑事は「会計には踏み込まない」と明言して捜査を進めた。
この聴取を一通り終えた8月初めに、突然刑事は「文書配布を止めると一筆書いて約束するなら、告訴側がこの告訴を取り下げてもよいと言っているが承諾するか。」と提案してきた。帰宅して家族で話し合い、唐突な提案とその手続きに疑問ありと判断しそれを断った。ところが8月下旬に再度同じ提案をしてきたので再び断りの電話を入れたところ、翌日呼び出され、刑事から「住民から民事訴訟を起こされたらどうするんだ。」などと翻意を迫られた。提案者を尋ねたら刑事が「好意的に住民のために提案している。」と発言したので、理事会を通さない提案は極めて危険と判断し勇気を奮ってそれを断った。すると、9月に「捜査調書を作成するから」との理由で呼び出され、連日調書作文が続いた。最後にそれを読み上げて同意のサインを求めてきた。羽田はもともと文書配布という告訴の訴因に納得していなかったので、理由を述べてサインを断った。それ以上に詰問されず案外簡単に終了し解放された。
その後しばらくして11月末に警察より「検察に出頭して聴取を受けよ」との電話があり、検察に出向くと、検事は警察から送検された調書を読み上げ、当方の言い分による補足修正を加えて約1時間尋問し、最後に「12月末までに呼び出しがなければ[不起訴]になると思ってよい」との意見がなされ、意外に穏やかに終了した。1月に電話により検事に直接[不
起訴]を確認した。その後、この告訴を起こしたFや理事会からは何の知らせもない。一住民組合員に刑事告訴という牛刀(諺「鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん」)を振りかざして苦しみを与えておいて、不本意な結果となったら知らぬ存ぜぬを決め込む組合側の態度に「それでもあんた達はまともな人間か」と言いたい。彼らは不都合な結果は公表しない過去があり、羽田の2013年簡易裁判所での [会計帳簿閲覧要求] 調停の結果の合意「見せる、方法は話し合う」を伝えなかった前例がある。
*上記羽田の組合への要望書の内容要約 →理事会は未だ全て無視し応答せず
① 組合資料で見つけた会計関係の誤り発見
・通帳に利子3円の記載→総会決算には記載0円 ・口座通帳残高証明添付なし
・組合出納用通帳1口座2通帳? (雑費用と役員報酬用)→改ざんコピーの疑い
・管理人報酬16万円+欠席理事報酬9千円過払い疑惑→理事会決定との不整合
② 管理人・会計理事による理事長報酬遅延工作 →指摘後の証明関係書類の改ざん工作の疑惑
③ 専門委の活動に支払われた、報酬以外の費用の公表なし
大規模修繕工事のほか工事にコンサルタントの補佐などの組合側仕事への
費用支払い規定あるも工事決算に記載なし(リベート支給か)
④ 不十分な総会資料予算決算データで住民が検算できず、種々の工作で規約にある会計資料の公開閲覧を妨害している→組合会計の不明朗
⑤ 店舗棟での内科診療所開設(2012年度)への理事会の関わり方
不動産屋の介在・建物等施設大幅改造費用・医療設備導入費用・人件費・薬局新設に関して理事長一任・高額費用調達、駐車場確保などに管理組合の便宜供与は規定逸脱の疑い
これらを順次調査した組合資料の中に発見し配布文書で報告したが、理事会はその正否には全く触れず無視してきた。
3. 「管理会社マンション」管理の実態
この告訴の背景に当マンションの強力な管理組織構造がある。それは、①管理会社(大手不動産系)と建築コンサルタントによる2重管理運営支配、②その子会社派遣の管理人、③理事会を中心とした専門委・有力OB等による会社従属的執行組織、④いつの間にか物言わぬ大半の住民組合員とで構成された一体化支配集団体制である。それが2.5年の準備期間をおいて種々管理規約を都合よく改正し、1999年より[(エセ)自主管理](これが問題の核心)として導入され、管理会社に予算決算・行動計画立案を任せ、会計管理を委託(密閉化、管理人を代理人)、コンサルタントに億単位の大規模修繕の計画・工事を独占差配させ、専門委等を中心に利権集団を形成し、一方で理事会は順番くじ引き役員選出で理事・監事などの機能を形骸化してきた。これが「管理会社マンション」支配構造の実態である。
このような組合運営の結果として、機密・秘密は当たり前、主な活動は管理会社の意向に沿って事後承諾、泣く子を起こすな (厄介ごとは採り上げず)の精神が基本、住民に詳細を知らせない組合会計(管理規約違反)、中身のない総会資料・理事会議事録による情報遮断操作、たらい回し的密閉役員人事などの巧妙な管理運営が行われ、物言う住民、羽田のような存在は排除の対象になっている。当時の理事長Fは羽田の配布文書の訴えを無視するとともに理事会の傍聴や資料配布の禁止を宣言した。その行きつく先が今回の刑事告訴である。自分の納めた管理費が自分への告訴費用の一部となる不合理ないじめをやってのけている。現実に刑事告訴の影響からか、役員(次期理事長候補)の就任拒否、一部理事たちの連続欠席などの問題が起こっている。それを警察でFは羽田の文書配布のせいと攻めたが、管理会社の「駒」とされ、いざとなると責任を負わされ、住民を刑事告訴するような管理組合の役目ご免の気持ちが起こっても当然であろう。管理事務所を占有して外部からの情報も独占し、不都合な情報は出さず都合よく情報操作するような非民主的管理組合は、結局、ガラパゴス化し自滅の道を辿ると予測している。
4. 羽田の刑事告訴捜査の問題点
理事会は管理会社の意向を受けて、Fが中心となってコンサル紹介の弁護士・マン管士に法的支援を委託し、警察と相談タイアップし、その威力で羽田を屈服させ、文書配布を断念さるために刑事告訴を進めた。初めの5月連休中2度の羽田への威圧的取り調べと、終り8月に2度の告訴取り下げの提案から、彼らの狙いが透けて見える。その間の聴取に警察が使った前述の羽田の要望書*は、告訴側にとっては「藪蛇(やぶへび)」となる組合会計不正疑惑の項目ばかりであった。訴状の受理があり、警察に捜査の権限があるとはいえ、取り調べは嫌に高圧的であった。捜査は受ける側の人権を尊重し、余計な心理的負担を少なくし、法的にも事務的にも公平公正なものに改める余地があると痛感した。羽田が発した配布文書は基本的に運営批判・改善案提案・資料調査結果などの集成であり、健全なマンション組合実現への要望である。社会秩序を守る名目で大企業管理会社を優先し、それに支配された不正な管理組合運営を見逃し守り、正当な意見を発する個人の存在を権力で抑えつけることが許される社会であってはならない。告訴状の受理に起因する一方的な捜査の在り方に冤罪に繋がる原因が存在すると実感した。羽田がこの刑事告訴を納得できないとする主な理由はそこにある。
文書配布は何人にも憲法に保障された「言論・表現の自由」の権利の実行であると考えている。当マンションではほぼ全体的支配体制が出来上がっており、その中では個人住民は自由な意見発露の機会を悉く奪われている。それを身近な公共機関に訴えても聞き置くだけで動くことはない。それで内外に広く実情を知ってもらいたく、個人に可能で有効・確実・速やかな情報の伝達手段と考えて文書配布を実行した。これと対照的に管理側は決まって匿名で脅し・嫌がらせの類のビラやインターネットで文書配布を止めるよう攻めてくる。現実社会にはビラ配布を迷惑行為をととる常識?がまかり通っているが、羽田は文書配布の許容度がそのコミュニティーのオープン度の指標であると考えている。書かれた内容をろくに読み込まず文書配布を否定するが、羽田の経験から、社会生活の参考意見として採り入れ、賛同を示してくれる人が少なからずいるのも事実である。羽田はこの「自由の権利」の行使は健全な社会に不可欠なものと考えている。文書配布は物言えぬ住民に代わっての情報発信的意義もあり、集団主義の弊害を打破するためには必須と思っている。
5. 「管理会社マンション」管理を打破するために
公権力まで利用し、強力な財力・組織力・経験力・法知識・情報力などを持つ「巨象」の管理組合が、個人住民の羽田「蟻一匹」をひねり潰そうとしたのが、この刑事告訴であったと見ている。「不起訴」となったものの悪質な「管理会社マンション」管理から脱出しなければ、当マンションの未来は開けないであろう。都市に林立するタワーマンションに象徴される高級マンション社会の裏に、当方と類似の「管理会社マンション」が多数存在することを疑わない。私たちは健全で公平公正なマンション生活を願っている。管理会社は委託契約内容の業務をきちんと果たすのが近代的契約の精神であり、管理に名を借りて住民組合員の精神的自由まで支配してはならない。することである。
現実には、管理規約の条項に組合員住民の1/5以上の賛同なしには、住民間の自由な話し合いの場も開けない規定が設けられており、自由な個人の住民活動の芽を抑制している。「管理会社マンション」管理の最善の解決策としては、何よりも「管理会社」と「コンサルタント」の超長期契約を解除して入れ替え、意に沿う「自前の管理人」を選び、自分たちの民意に適う「自前の管理会社」管理を実現することであろう。住民は〝しんどい〞けれど、共同生活の中で「自主・自由・自立」の精神を実現するよう努めよう。
羽田にとっては不本意にも昨2017年に承認されてしまった管理規約・細則他の改廃の経過を思い出す。それは「管理会社マンション」の象徴的出来事であった。その手続きは当マンションの主役である一般住民の意見が入り込まないように、コンサルタント紹介のマン管士が主導し、住民の意見を代表しない理事たち(順番くじ引きの理事たちは一般住民の意見を汲み上げる仕組みを持たない)を委員として進められた。その彼らの中ですでに承認した改正原案が住民説明会に初めて提示された。羽田が短期間にそれを読み込み提案した種々の刷新案:住民参加の役員投票選挙の採用とリコール制度の導入、オープンな理事会と会計と広報活動、各種監視監理委員会の設置、自由な住民異見交換集会などは悉く検討もせずマン管士が否定して新規約を承認してしまった。建て替えに関する条項が増え、やたらと住民の規約違反行為への罰則規定が具体的に強化されるなど、管理会社支配を強化するより一層の「管理会社マンション」に後退してしまった。一般住民も沈黙し、残念ながら用意周到なプロ集団の巧妙な手口に捻り潰されてしまった。
それでも「管理会社マンション」の克服は正しい道との確信は少しもゆるがない。マンション管理の正常化の問題は既存マンションでのマイナーな社会問題かもしれないが、その基本構造は現今の政治問題と極めて相似形の構造である。全国のマンション問題は横浜の傾きマンションの発生のように、いずれメジャーな社会問題となる要素を含んでいると予想している。
[第(22)報終り]
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion7557:180413〕
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