世界を滅亡の淵に道連れか
- 2018年 4月 20日
- 時代をみる
- 松元保昭
証拠もなしに振り上げたこぶしに(ネオコンタカ派とイスラエルのために)「辻褄を合わせた」米英仏でしたが、国連憲章にも安保理にも違反するシリア攻撃もさることながら、「ひどい」のは日本の報道姿勢。
日米(欧)同盟一辺倒では、とても世界を公平に見る眼は養われない、自主独立の気概も生まれない。日本の主要メディアで今回のニュース・ソースのホワイト・ヘルメット(自称シリア民間防衛隊)に疑義を呈したものはひとつもなかった。
シリア紛争における化学兵器問題の歴史を詳しく跡付けたものに、田中宇の国際ニュース解説がある。https://tanakanews.com/
以下は、今回の化学兵器「物語」にかんする拙訳2篇です。遅まきながら、ご参考に。
■世界を滅亡の淵に by リック・スターリング
■ホワイト・ヘルメット:ヒューマニストを装うテロ組織の飾り窓 SANA通信
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世界を滅亡の淵に道連れか
リック・スターリング(松元保昭仮訳)
2018年4月10日
グローバル・リサーチ誌
序
西側ネオコンとタカ派は、国際状況を緊張と危機の増大へと操っている。虚偽の非難に基づくイラクとリビアの破壊に飽き足らず、彼らは現在、米国のシリアへの直接攻撃を迫っている。危険な前兆は、レバノン空域を飛行するイスラエル戦闘機がパルミラ西方のT4タイアス空軍基地に対してミサイルを発射したことである。
予測されていた
タス通信で報道されたが、ロシア軍参謀総長ワレリー・ゲラシモフは、ほぼひと月前に最新の事件を予測していた。3月13日のその報道は次のように語っている。
「政府軍による民間人に対する化学兵器使用計画を準備することにかんしてロシアは動かしがたい事実を把握している。」そう挑発したあと、「米国は化学兵器を使用するシリア政府軍を非難する計画だ……いわゆる「証拠」を備えて……また、ワシントンはダマスカス政府の地域に対してミサイルおよび爆撃によって攻撃を加える予定だ。」
ゲラシモフは、ダマスカスのシリア防衛軍の施設内にはロシアの軍事顧問団が滞在していると指摘した。また、「わが軍事顧問団らの命が脅かされる事態になれば、ロシア全軍は彼らのミサイルや爆撃機を標的とした報復処置に出ることになろう。」
状況は、国際紛争さらには第三次世界大戦に連動しかねないリスクをともなって明らかな危機にある。そうしたことが起こるなら文明の消滅を意味するだろう。これらすべては、国際法と国連憲章に違反する…アサド政権転覆に努める狂信的武装グループを支援する…西側がしていることだ。
世界最強国は、現在、政治経験のない不動産、ホテル、娯楽の大物によって導かれている。その舞台裏には、米国の単独行動主義的な世界「覇権」の維持、再生を断固堅持している強力な外交政策官僚がいる。彼らは、米国が世界における影響力、威信、支配力を失っているという事実を受け入れがたい。とりわけイスラエルとサウジアラビアは、地域支配の彼らの計画が頓挫させられ予想は覆されている。
東グータ、ダマスカス
東グータは、ダマスカスの東北郊外に隣接する街と農場地域である。過去6年間、さまざまな武装グループが入れ替わり地域を支配していた。彼らは、ほぼ毎日のようにダマスカス市街地に迫撃砲や砲撃ミサイル攻撃を仕掛けており、何千人もの人々を殺害している。筆者は、2014年4月個人的に、こうした2つの迫撃砲攻撃を目撃した。
3月末には、東グータの大部分が政府軍によって奪還された。武装戦闘員の平和的な撤退とともに、大勢の民間人が人道回廊に殺到したので、政府は避難民のためにテントを設営した。その一連の軍事行動は、ロシア調停官が(武装勢力の)戦闘員は小火器を携行して北部のイドリブに移送してよいと許可した協定を取り決めたことで、最小限の犠牲者で迅速に進行した。彼らが最終的には脱出劇を安全に成し遂げたと、ベネッサ・ビーレイは多くの民間人の安堵と喜びの状況を書き残している。ひとが「生まれ変わったようだった」とその感動を書き記した。現場にいたロバート・フィクスは、「見張り」という記事のタイトルで戦禍の東グータから避難してきたイスラム主義戦闘員とおなじく、最初に見たことをリポートした。こうしてみると、グータ包囲をめぐって非難し憤慨した西側の遠吠えは、むなしく聞こえる。
ロシアの調停センターが報道したように、3月末までに、13,793人の戦闘員プラス23,433人のその家族が北部に移送されたのと同時に、105,857人の民間人が政府のコントロールする地域に移動を済ませた。かつての戦闘員をふくめて留まりたかった人々は、喜んで受け入れられた。彼ら彼女らは、他のシリア人と同様の権利と義務をもってシリア社会の一員として再統合された。
最後に残る反対派の拠点は、サウジに支援される(ヌスラ戦線と連携するスンナ派武装組織)ジャイシュ・アル・イスラムに支配されたドゥーマの町だった。ジャイシュ・アル・イスラムは別の反対体制武装グループ、ジャブハット・アル・ヌスラまたの名はハヤット・タハリール・アル・シャームに支配されるイドリブには行きたくなかったので、交渉は長引いた。
化学兵器事件
4月7日土曜日、ドゥーマの化学兵器攻撃を告発するビデオと報告が放送された。ビデオは多数の死んだ子供たちを明らかにした。日曜日には、その報道が西側の主要メディアの見出しを飾った。米トランプ大統領は、すばやく結論に達した。「怪物アサドを支援するロシアのプーチン大統領とイランは責任がある。大きな代償を払わねばならい。」
客観的な調査はいっさいなかった。メディアの主張は、シリア・アメリカ医療基金(SAMS)とホワイト・ヘルメット(シリア民間防衛隊)メンバーからの声明とビデオに基づく。シリアでの西側介入を要求する双方の組織は、米国政府からかなりの資金提供を受け取っている。
化学兵器は、迅速かつ容易に攻撃を正当化する理由として登場した。一年前の2017年4月、その事件はハンシャイフンで起きた。数日後にはシリア空軍基地を米国が攻撃する結果となった。その後の調査は、事件が起きた「前に」犯行現場から100キロも離れた異なる場所のいくつかの病院で犠牲者の多くが発見された、と明らかにした。不思議なことに、調査チームのバイアス(偏見)をほのめかすのだが、この欺瞞の警告ポイントにはさらなる調査はなされなかった。わずかな犠牲者あるいは一つの場所であったなら、それは記録保存のミスであるかもしれない。しかしこの場合、複数の場所で幾つもの不一致があったわけで、明らかに欺瞞の可能性をもたげている。
いま私たちの前にはダマスカス郊外の町ドゥーマの事件がある。武装反体制派は退却のさなかにある。彼らは、2012年以降、米国およびNATOに直接介入の圧力をかけ続けてきた。彼らは東グータで化学兵器をその動機とともに入手した。彼らはまた、何千人もの前科者である。この者たちは、前科者や女、子どもたちの何百人をドゥーマの通りに面した檻の中に収容した集団である。
だれが得をするか?
また、化学兵器事件のタイミングに注目すべきだ。すでに文書化されているように、一年前の2017年3月30日、ヘイリー国連大使は、もはや米国はアサド追放を目的にはしていないと語った。5日後、ハンシャイフンで化学兵器事件が起きた。すぐにシリア政府が非難され、そして米国の攻撃、「アサドは出て行け」という要求の復活が続いた。3月29日に、米軍は「もう間もなく」シリアから撤退するだろうとトランプは語った。これは、メディアおよび政治支配層からの抗議で引き継がれた。現在、土曜日の化学兵器事件が引き続き、米国が直接介入すると再度脅迫している。化学兵器事件は、常にシリアに対する敵意を変更しては修正しどんでん返しを繰り返してきた。
ネオコン(新保守主義)と「体制転換(レジーム・チェンジ)」外交政策の支持者たちは、アサド政権が化学兵器攻撃を実行することにはさまざまな意見がある。ジョン・マケイン上院議員は、シリア大統領は以前のトランプ声明によって「大胆に」なった、と語った。
2011年のリビア襲撃を促進した人物で研究者のファン・コールは異なる見解を持っている。彼は次のように述べている。
「化学兵器は、敵の数が上回っているかあるいは自分の兵士に犠牲者を出したくないか、いずれにせよ自暴自棄の政権によって使われる。化学兵器を含んだ樽爆弾投下のドゥーマでは、この理由で戦術として政権に訴えたと思われる。ドゥーマの住民を脅してイスラム軍(IS)の離脱を仕向ける可能性があった。」
彼の見解と対照的に、化学兵器は米国によってしかもけっして絶望的でなかったときにベトナムやイラクで大規模に使用されてきた。シリア政府が掌握する地域への民間人の流入量を証拠として、一般市民の大部分は宗派間暴力とイスラム軍(「ジャイシュ・アル・イスラム」)から解放されて喜んでいる。ベンガジでのさし迫った大虐殺にかんするセンセーショナルな主張が、あとで欺瞞だと示されたリビアのように、まさにコールはずさんで不正確な西側メディア報道に、彼の見解を基礎づけたように思われる。
化学兵器事件にかんするセンセーショナルなメディア報道から利益を得るのはだれか、明らかだ。シリア政府とアサド大統領の悪魔化に努める人々、そしてまた米国政府の軍事介入を欲する人々、である。事件があるたびに、何年もの間シリアの「体制転換(レジーム・チェンジ)」捜し求めてきた政府と組織によって、それはすばやく受け入れられそして使われてきたのである。
世論操作
捏造事件を利用するシリア紛争にかんする西側の世論操作は、理屈ではない。それは証明された。ふさわしい例は、2012年12月のNBCリポーターのリチャード・エンゲルによるでっちあげ誘拐事件である。エンゲルと彼のメディア・チームは、報道されたところによるとシリア大統領の支援者「シャビハ」によって死の恐怖に晒され誘拐された。数日後、監禁状態でアメリカ人チームが自由シリア軍「反乱軍」によって銃撃戦ののち恐らく救出された。2015年には、これは自由シリア軍(FSA)と彼らのアメリカの後ろ盾がしでかしたでっち上げの犯行だったと確認された。「反乱軍」によって実行された丸ごとのパロディーであった。目的は、アサド政権とその支持者たちの悪魔化であり、また反体制武装勢力の美化と支援増強であった。何年か後に、欺きによる二枚舌と共謀を指摘されそのほとんどが暴露されるまで、エンゲルもNBCもどちらもその事実を白状しなかった。
4年半前、2013年8月21日、もっとも有名な化学兵器事件が起きた。シリア政府は、何百人もの子どもや民間人を殺害したサリン攻撃を開始したとただちに非難された。その6か月後になってから調査が実行された。シーモア・ハーシュ、ロバート・ペリー、および調査サイトwhoghouta.comの結論は、その攻撃はほぼ疑いなく政府によるものでは「ない」が、実際にはトルコ情報機関の支援をともなう「反乱軍」の派閥の一派によるものだったと結論づけた。トルコ国会議員の2人の代理人が、証拠の一部を記者会見で公に明らかにした。その意図は、現在も同様、米国とNATOに直接介入の正当化と挑発を提供することだった。
結論
現在、明らかに偏った出所からの疑惑に基づく大規模な攻撃の差し迫った可能性がある。国際法やしかるべき法的手続きにこれまで何が起こったのか?化学兵器事件の厳格で客観的な調査の前に、なぜ脅迫される暴力なのか?シリアに対する告発が真実であれば、とりわけ現在(4月9日)、その地域は解放され出入りの安全が確保されているというのに、なぜ厳格な調査がなされないのか?
戦争のドラムが打ち鳴らされている。1年以上のロシアへのバッシングと偽情報の後、世間の準備はシリアを越えてロシアと戦争に突入したいのか? ネオコン・タカ派と彼らのイスラエル/サウジ同盟はこれを望んでいるようだ。イラク、リビア、イエメンに対する彼らの計画と予測は、人々と彼らの国々によって血で支払われ、同じくアメリカによっては宝物で支払わられる妄想的なファンタジーであった。悲しいかな、これらの戦争を開始し促進したメディアと政治指導者には何の責任もなかった。現在、彼らは、限りない流血を引き起こすシリア攻撃によって反撃に直面させ危険にさらし攻撃性をエスカレートさせることを欲している。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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