朝鮮半島でのディール(取引)が進行中
- 2018年 5月 4日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
韓国と北朝鮮の首脳会談は、平和への第一歩としては大成功であったようです。
そしてトランプ大統領は、ご自身の公約どおりに金正恩委員長とハンバーガーを食べることが出来るのでしょうか。
この国の多くの民とは違った見方で北朝鮮を見る世界の諸国、中でも金融関係の業務に従事する者の多くは、米朝関係が緊張から解放されて、直接的には、新規投資の開拓地として世界に解放される期待を抱き、間接的には、開戦の危機から解放されてマネーの緊急避難を要される危機から脱した安ど感に浸っているのかも知れません。
遠慮会釈無く明言しますと、世界の先進諸国、就中金融先進諸国にとって、北朝鮮は、投資対象として魅力的なのです。
金融先進国のイギリスは、とっくの昔に北朝鮮と国交を開き、相互に大使館を設置していますし、イギリスには、対北朝鮮の投資ファンドもあり、地下資源が豊富な対北朝鮮投資で自国が潤う算段です。 多くの欧州諸国も同様です。 日本のように未だに産業構造が製造業中心では無いからです。 例えば、既に、イギリスには自動車製造業では自国ブランドは無いのです。 彼等にとっては、「黒い猫でも、白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫だ。」と言う訳です。
大統領になられたにしても、実業家のトランプ氏が、そうした実業界の実際に疎い筈がありません。 金正恩委員長も西側に留学もされていたのですから、既に、先進諸国の産業構造が製造業から構造転換が為されている事実を承知されている筈です。
とすれば、現下の事情が北朝鮮の開国前夜と理解出来ます。 何のか、と言えば、資本への、です。
安倍政権の硬直した現状認識と憲法改悪への地ならしとして活用する役割の付与のみに特化した北朝鮮を見慣れたこの国の民には、報道機関の鎖国的実状と相まってその間の事情は理解不能でしょうが、外国通信社の報道では、その間の実情を物語るものがあります。
例えば、10年前に北朝鮮初の携帯電話会社コリョリンクを設立したエジプトの富豪サウィリス氏が、その利益を容易には国外に移すことができない現状で、米朝で和平が成立すれば、同氏は利益の一部をようやく手にすることができる、と報じられていますし、同氏は、トランプ大統領に助言もされたそうです。
大統領ご自身も、長年の間ビジネスに従事されているのですから、北朝鮮のビジネスに占める重要性も承知されていることでしょう。
安倍首相の進言よりも貴重な助言であったことには間違いが無いこと、と思われます。
株暴落を予想する富豪投資家、資産の半分を金投資-北朝鮮が救いか Bloomberg Tamim Elyan、Manus Cranny 2018年5月2日 6:18 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-05-01/P81SRC6JTSE801
従って、米国も、昨年からの米韓合同演習に当ってさえも、決して開戦必死と金正恩委員長に受け止められることの無いように、と留意されていたようです。
それは、今やトランプ大統領の全幅の信頼を得たマティス国防長官が再三再四、解説をされていることからも明らかです。
ミサイル実験にあたっても「北朝鮮のミサイル発射実験自体が『われわれを戦争に近づけるものではない』と諭し、更に、「いかなる軍事的な解決も『想像を絶する規模での悲劇』を引き起こすとし、米政府は外交的な解決の模索に向け日中韓などと協力して取り組むとの意向」を示す、等です。
北朝鮮問題の軍事的解決、「想像絶する悲劇」引き起こす=米国防長官 Reuter 2017年5月20日 / 04:13 / 1年前
https://jp.reuters.com/article/north-korea-us-idJPKCN18F2A7
北朝鮮ミサイル発射、戦争近づけるものではない─米国防長官=CNN Reuter 2017年7月7日 / 08:14 / 10ヶ月前
https://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-mattis-idJPL4N1JX2LH
これからの予測ですが、朝鮮半島の非核化は、北朝鮮が持つ緩衝国としての意義からは、中国、ロシアとの関係に依り現実化するのか否か、と問わねばならない、と思っています。
トランプ政権は、中国が決定的な意義を持ち、その意向如何に左右される、と観ているようですが、米国と中国との現下の関係からは、金正恩委員長に対する説得が為されたのかも知れない、と観察しています。 中国としても緩衝国が無くなれば、直接米軍の脅威を受けるからです。 言わば、中国の存在は、保証人のようなものでしょう。 トランプ大統領としては習主席に説得をして貰ったかのようにも思えます。 そして政治と言うよりも実業のようなディール(取引)が進行中の今、この国のみが取り残されています。
このディール(取引)、日本を除き全てウイン、ウインになるのでしょうか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion7608:180504〕
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