タイ洞窟からの少年とコーチ救出劇に見る彼我の差異
- 2018年 7月 12日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
先の拙稿「帝国に迫る夕闇の中で謳うトランプ」では、編集上の都合に依りまして、章句を全て一遍に纏めて掲載されました結果、読者各位におかれましては、非常に読み取り難い文面になりましたことを、まず以て御詫び申し上げます。
さて、本稿では、昨今、世界的に報道されましたタイでの洞窟遭難者救出に関わって彼我の対比を少ししてみたい、と思います。 人命に関わることなのですが、この国においては特異な現象が見られることが多いからなのです。
タイとミャンマー国境に位置する洞窟における世紀の救出劇に関わる一部始終は、世界に報道されましたので此処では繰り返さずに、下に参照先を記します。
タイ洞窟から少年とコーチ、全員無事救出 BBC NEWS JAPAN
https://www.bbc.com/japanese/44789754
事実経過は、以下を参照。
【写真で見る】タイ洞窟 少年らの行方不明から救出まで BBC NEWS JAPAN
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44789853
少年とコーチが洞窟で遭難してから今まで、この国で発生したならば、必ずや見られる処の現象が報道されない現実に注目していましたが、それに気付いた報道機関は少なかったようでした。
それは、国外のテロに巻き込まれた人に対しても、山野で遭難された人に対しても、冷酷に向けられる「自己責任論」の非難合唱です。 昨今では、犯罪の被害者に対しても向けられる場合があります。
即ち、戦後にも裁判所の判例として残る「村八分」の延長の如く、村の典例に無い事例を除くために、村の一員としての資格を認めないで、除外する制裁を加えるのです。
国が認めない何がしかの言動をすることを咎めて「非国民」の烙印を押した戦前の国家主義思想の片鱗が未だにこの国の民の脳髄には残っているかのようです。
処が、タイでは、それが無く、住民も為政者も少年達の救出に一致団結しているようでしたので、「軍事政権の人気取り」とまで悪口を叩いていた報道もありました。 しかし、少年達の救出には、欧米を始めとして世界中から専門家が集まり、一致団結して救助活動がなされていました。
例えば、オーストラリアからも救出援助のために二十名が現地入りしましたので、ABC放送でも日々報道されていました。 そして、援助にタイまで行かれた医師は、実父が亡くなられた事実を告げられたのでした。
Thai cave rescue: Australian doctor who was last one out praises boys while grieving father’s death ABC
自己責任論の合唱に紛れて政治家の責任も問われることが無い、と嘯いたのか、この国の政権にある人達は、世紀の豪雨が予報される中でも酒席に出られます。 報道する方も政権の無責任に馴れたのか、非難の仕方が悠長です。 未だ百人を超す死者が出ていない時期の報道ですので仕方がありませんが、その時点で抗議しても当然なのではないでしょうか。
近畿で避難指示出るなか…安倍首相、死刑執行前夜の上川法相ら宴会で「いいなあ自民党」
J-CASTニュース 2018/7/ 6 19:54
https://www.j-cast.com/2018/07/06333270.html?p=all
本日(7月11日)現在で、169人の死者、不明が79人ですから、恐らく、死者は200人を超す訳です。
西日本豪雨の死者169人、不明79人に 断水25万戸 朝日新聞 Digital 2018年7月11日13時20分
https://www.asahi.com/articles/ASL7C2S6BL7CPTIL003.html
治山、治水を考えずに至る処を開発して建築物を建てさせて、山野は挿し木の植林で一杯の上に輸入材に負けたせいで森林は剪定もせずに倒木待ちの状態では、大雨が降れば災害が必至です。
地震も全国で起っていますし、気候変動の境界上にある今日においては、国土と人命を如何に守るかを始めから考え直さないと、災害は何度も襲う、と言わねばなりません。 それともこの国の為政者は、全て自己責任で逃れる目論見なのでしょうか。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion7818:180712〕
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