安倍官邸・旧科技庁官僚にハイジャックされた日本の大学教育と科学技術政策!
- 2018年 8月 4日
- 時代をみる
- アベ加藤哲郎官僚
2018.8.1 暑く憂鬱な夏です。先ずは、安倍晋三の不作為により甚大な被害を受けた西日本豪雨の被災地の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。 その後の逆走台風もあって、2年後の東京オリンピックが本当にスムーズに開けるか、世界が異常気象のなかで心配しています。しかも、そのスポーツの世界では、安倍内閣の小型版のような、トップとその取り巻きによる権力の私物化・忖度・パワハラ・腐敗が蔓延、柔道・レスリング・ボクシングにアメリカン・フットボールと、軒並み「プチ・シンゾー」が差配してきました。本命ファシスト安倍晋三「森友・加計問題」さえうやむやにされようとしていますから、オリンピックを控えたスポーツ界の 汚点は、トカゲの尻尾切りで終わるでしょう。スポーツのファシズム化の頂点は、1936年のベルリン・オリンピック、安倍晋三は、その開会式で、ヒトラーに似たパフォーマンスを見せたいのでしょう。かの「赤坂自民亭」も、被災地訪問の演技映像も、9月の自民党総裁選での3選を睨んだ世論工作・地方自民党工作だったようです。そして、マスコミは、国会開会中も閉会後も、「プチ・シンゾー」を叩くことによって、アベ政治の構造的腐敗を隠蔽し、庶民の憂さ晴らしへと導いています。
学生スポーツもオリンピックも、文部科学省の管轄です。 その文部科学省が、醜態をさらしています。佐野太・科学技術学術政策局長の私立大学支援助成金の見返りでの息子の「裏口入学」受託収賄、川端和明・国際統括官のJAXA(宇宙航空研究開発機構)出向中の業者による140万円接待、しかもその宴席には戸谷一夫・事務次官も同席していたことまで、明るみに出ました。文部科学省トップの戸谷・佐野・川端には、共通する特徴があります。三人とも、もともと科学技術庁に入って原発や宇宙開発の大型予算を担当、2001年の中央省庁再編によって文部科学省官僚になり、トップにまで上り詰めた、教育現場とは縁の薄い理工系官僚だったことです。背景には政治家の影がみえますが、文科省の一大スキャンダルです。
戸谷次官の前は前川喜平次官でしたから、加計学園問題で官邸に抵抗し『面従腹背』という著書まで出した前川前事務次官まで遡る、官邸・検察による「文科省つぶし」という見方もありますが、皮相です。前川は、初等中等教育局長から事務次官へと言う、かつての文部省官僚の王道を歩んできた文部省出身教育官僚です。もともと科学技術庁設置は、1956年の原子力委員会発足に伴い、総理府外局としてのものでした。組織と予算の半分以上は原子力関連で、それにロケット宇宙開発、海洋開発を科学技術発展の名目で担当し、3.11福島第一原発事故で白日のもとに晒された政財官学「原子力ムラ」形成に、大きな役割を果たしました。戦前からある文部省は、義務教育である初中等教育中心で、研究を伴う高等教育は二の次となり、基本的に「学問の自由」「大学の自治」に委ねる時代が、20世紀には長く続きました。文部省の科学技術研究予算ではまかなえない、巨額な予算と民間企業の利権・ブローカーが動く原子力開発とロケット開発、つまり、いつでも核兵器と核搭載ミサイルを持つことができる「潜在的核武装」を「国策」として推進してきたのが科学技術庁で、その「国策」に役立つ限りで、大学の原子力・宇宙海洋研究者をも巨額のプロジェクト型予算と研究利権で組織してきました。2001年の文部省と科学技術庁の合併は、文部省にとっては伝統的に手薄な領域であった大学教育と科学技術研究組織化に、科学技術庁出身官僚が食い込み、ついには科技庁型の期限付プロジェクト型研究・予算配分、競争的研究資金依存と、経済界の要請に応える実践的労働力養成教育を、差配することになりました。これが今日の大学の学問的荒廃と基礎研究の衰退を招いたのではないか、というのが、私の論文「大学のグローバル化と日本の社会科学」の一つの分析で、6月1日付け本欄でも主張してきたところです。
こういう眼で、21世紀省庁再編・文科省発足後の事務次官人事を見ると、鮮やかに、科技庁出身官僚の台頭を見出すことができます。文科省HPの歴代事務次官リストを経歴まで含めて調べてみると、 発足から2代の2005年までは教員・職員が圧倒的に多い文部省初中等教育局長出身次官が「ゆとり教育」を進めましたが、05年に第3代で東大工学部卒・原発を担当した科技庁出身・結城章夫次官が誕生しました。結城次官は退職後山形大学学長となり、旧科技庁の大学支配の先駆となりましたが、文科次官の方は、以後、文部省出身と科技庁出身が交互に就任する、いわゆる「たすきがけ人事」が進められ、「脱ゆとり教育」に変わります。前川次官から戸谷次官への交代は、この慣行にならったもので、これ自体は厚生労働省、国土交通省、合併後の銀行や大企業トップ人事で、よくみられるものです。
問題は、この「小が大を呑む」ような旧科技庁官僚・行動様式の文科省教育・研究支配、いわばハイジャックが 、21世紀日本の科学技術政策、ファシスト安倍政権の強力な官僚支配、軍事化政策によって後押しされていると考えられることです。7月31日の朝日新聞「自民党総裁選2018」に、「『官邸官僚』握る政権」「官邸 人事で支配」という調査報道が出ています。 「以前は省内の力学 安倍政権で完全に変わった」と、2014年内閣人事局発足による各省庁次官等600人の幹部人事掌握=「静かなる革命」ばかりでなく、官邸に優秀な官僚が集中するシステムが完成しました。 2001年省庁合併時と比べると、「内閣官房の職員数は01年度の1054人から今年度は2.8倍の2971人に拡大。内閣府の職員も発足当初の2412人から1.4倍の3318人に膨らんだ。官邸が重視する案件ごとに内閣官房や内閣府に会議や事務局を立ち上げたことも、拡大の要因だ」と。 このような官邸権力集中の変化に、もともと弱小官庁だった文部科学省は、ひとたまりもありませんでした。官邸や経産省の意向を受けた旧科技庁官僚が台頭し、前川喜平のような伝統的文部官僚は、個人情報を握られ、「面従腹背」せざるを得なかったのです。それ自体は正当な東京地検による旧科技省文科省幹部の汚職告発も、本丸である安倍晋三の森友・加計疑惑、財務省の公文書改竄・セクハラ・スキャンダルから世論の関心をそらし忘れさせるための、官邸主導の国策捜査パフォーマンス、司法誘導とみることもできます。何しろ法務省ばかりでなく、裁判所にさえ、ファシズムの足音は、近づいていますから。
以上の文科省の大学・科学技術政策については、私の論文「大学のグローバル化と日本の社会科学」をご参照ください。 その歴史的背景の一つを、戦前・戦時の「国策」科学動員に見る私の関東軍731部隊研究、『「飽食した悪魔」の戦後』『731部隊と戦後日本』(共に花伝社)も、夏休みの読書の一冊にぜひ。『週刊金曜日』7月13日号掲載「戦後保守政権の改憲動向」をアップ。前回更新でよびかけた国立国会図書館憲政資料室「太田耐造関係文書」の批判的・学術的解読は、何人かの若い研究者も加わって、始めることができそうです。何よりも、酷暑の夏を乗り切るには健康第一、皆さん、よい夏の想い出を、じっくりおつくりください。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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〔eye4426:180804〕
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