本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(205)
- 2018年 10月 11日
- 評論・紹介・意見
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プラネタリー・バウンダリー
8月24日の日経新聞に、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」という、スウェーデンの科学者であるロックストローム氏などが2009年に発表した概念が紹介されていた。具体的には、今から1万1700年前に、地球が「完新世」と呼ばれる「温暖で調和の取れた時代」に入ったものの、最近では、「人新世(ひとしんせい)」という「人類が、地球に大きな負担をかける時代」に移行している可能性があるとも述べられているのである。
そして、この時に、「気候変動」や「生物多様性の欠損」など、「地球にとっての安全域や程度を示す限界値」に関して「9つの地球システム」を定義されたが、「地球システムのいくつかは、既に人類の活動により危険な限界値を超えており、それ以外も差し迫った危険にある」とも説明されているのである。つまり、現在の「天災」については、「人災」が主な原因であり、しかも、このままの状態が継続すると、「地球上に、人類が住めなくなるような状況」も想定されているのである。
別の言葉では、「核戦争が勃発すると、世界全体が崩壊する」という点は、以前に申し上げたが、実際には、「地球の温暖化」や「海面の上昇」などのように、「静かなる地球破壊が、人々の知らないうちに進行していた状況」とも考えられるのである。そして、このことについては、「東洋学」の「人々の意識の歪みが、天災となって表れる」という認識を超えた状況のようにも思われるが、実際のところ、「約5000年の歴史を持つ東洋学」は、「1万1700年前から始まった完新世」には、及ばない状況とも言えるのである。
つまり、「地球環境」が危うくなり、「人類」が住めなくなるような状況になれば、「東洋学などの教え」、そして、「命よりも大切」といわれる「お金」なども、「まったく意味をなさなくなる事態」が到来するのである。別の言葉では、「元も子も無くなるような状況」のことでもあるが、実際のところ、「現代人は、軍事費をゼロにして、その資金を、環境問題に全力投球すべきではないか?」とも思われるのである。
しかし、実際には、依然として、先進各国で軍事費が増強されているが、私自身としては、「100年後の人類が、このような状況について、どのようなコメントをするのか?」が気に掛かる状況である。つまり、「子孫への負担」が意味することは、決して、「国家の借金」だけではなく、「地球環境の破壊こそが、最も重大な点ではないか?」という理解のことである。(2018.9.11)
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リーマン危機から10年
現在、いろいろな識者が、「リーマン危機から10年後」についての感想を述べられているが、私自身が、最も共感を覚えたのは、「前ECB総裁のトリシェ氏」の意見だった。具体的には、「10年前の状況」から始まり、「過去10年間に発生した変化」、そして、「現在が、当時よりも危機的な状況にある」という意見などのことだが、唯一の相違点は、「アービング・フィッシャーの負債デフレ論の警告を忘れるな」というコメントだった。
つまり、「過剰債務が大不況に繋がる道筋」を示したのが「債務デフレ論」であり、「トリシェ氏」は、「過剰債務問題が、10年前のリーマン危機を発生させ、現在でも、依然として存在する」という理解をされているのである。しかし、私自身は、「10年前の過剰債務」について、別の見方をしているが、実際には、「一部のメガバンクが、オフバランス(簿外取引)で行ったデリバティブ(金融派生商品)」が原因であり、また、「2008年前後にデリバティブの残高がピークを付け、減少を始めたことにより、リーマン・ショックを発生させた」ものと考えている。
しかも、「簿外取引の金融商品」という性格上、「政府とメガバンクは、金融混乱を抑えるために、ありとあらゆる方法を取らざるを得なかった」という状況だったのである。具体的には、「先進各国中央銀行のバランスシート」を大膨張させ、「過剰債務の問題点」を隠した可能性のことだが、今後の注目点は、「バランスシートの非対称性により、資産価格が下落した時に不良債権が発生する事態」が指摘できるようである。
つまり、「中央銀行」においても、「民間銀行」と同様に、「債務と資産が伸び続けている間は問題が発生しないが、残高がピークを付け、減少を始めた時に問題が発覚する」という構図のことである。そして、現在、最も注目すべき点は、「10年前との違い」であり、実際には、「出口戦略の実施により、今後、中央銀行のバランスシートに、どのような変化が発生するのか?」ということである。
より具体的に申し上げると、「民間銀行の過剰債務、あるいは、バランスシートの大膨張」については、その後、「不良債権の発生」などにより、「デフレ的な様相」を呈する可能性も存在するが、「中央銀行の過剰債務やバランスシートの大膨張」については、「紙幣の増刷により、過剰債務を解消する手段」が残されているという点である。そのために、今後、憂慮すべき事態は、「債務デフレ論」ではなく、「債務インフレ論」だと考えているが、この点については、「国債価格」が暴落した時に、答えが出るものと考えている。(2018.9.11)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion8073:181011〕
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