国内外労働者をモノ扱いするな ―資本の論理を加速する安倍政権―
- 2018年 11月 5日
- 時代をみる
- 働き方改革労働半澤健市
《ゼロ成長と新自由主義の発動》
1960年から30年間、「高度経済成長」を続けた結果、日本は一時世界第二の経済大国となった。それが1990年を境に高度成長は停滞期に入った。この30年間は、いくらかの誇張を加えれば、ゼロ成長が続いている。「明治維新150年」のシッポ20%の期間は経済成長が止まっているのである。「平成」は、成長が「平」らに「成」って終わる。その理由には諸説ある。日本の成長力自体の喪失。政府・民間の非効率な投資。再分配政策の欠如。などなどだ。
これらの状況に対して資本はどう対応しているか。
それは新自由主義政策の導入である。自由な市場に任せれば、経済資源―ヒト・モノ・カネ―の配分は全てうまく行く。これが、市場原理主義たる新自由主義の核心である。その目的は何か。企業力の全面展開による利潤獲得である。ヒトの扱いにおいては、人件費・社会福祉コストの削減が狙いとなる。これで収益が上がる。資本家である株主への還元―株価上昇と配当金増配―が増加する。
《労働力市場に起こったこと・起こること》
労働力市場で、具体的には何が起こるのか。
昇給がないから実家から離れられず、結婚できるだけの貯金が出来ず、共働きでも託児所がなくて子供が産めず、といった若者・中年族が続出する。落ちこぼれると、最悪は孤独死に至る。理屈っぽく言うと「規制撤廃の促進」「自由放任の徹底」「公共性の消滅」の実現である。この冷酷な実態には「働き方改革」という美名が与えらている。
一体、労働力市場は売り手(求職側)と買い手(求人側)の力の差が大きい市場である。短期な好況期を除き買い手が圧倒的に強い。
産業資本主義の発展に先んじたイギリスで、労働運動が起こり労働組合が資本家に対抗した。健全な労働力の再生産は資本主義の持続的な発展にも必要である。国家も、対等な労使交渉による労働条件を目指した法制の整備につとめた。いずれにせよ労働者の権利は、長い闘争によって獲得された歴史と伝統をもつ社会の「公共財」として機能してきた。
それも新自由主義の浸透によって分断され弱体化さている。
《経団連の意のままに動く安倍政権にNOを》
平成時代後半から顕著になった「非正規労働者の増加」、この数年で急速に進んだ「高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度」、そして現在、政府が拙速・無原則に進めている「入管法の改正」。いずれも買い手側が優位で自由にふるまうシステムである。日本経団連などの大企業の強いニーズに対応した労働政策でありその理念は新自由主義である。興味ある読者は経団連のサイトをご覧になるとよい。外国人労働者をモノとしか見ていない資本の論理がハッキリわかる。それは日本人労働者の賃金抑圧にも寄与するだろう。
現在、世界中でポピュリズム政権、自国第一主義、貿易戦争の勃発が、政治経済を動揺の渦に巻き込んでいる。その最重要な原因の一つは、長年に亘る諸国の外国人移民受容である。不可逆的に定着する深刻な問題である。その環境下で、破綻をみせている新自由主義を、安倍政権は周回遅れで推進しようとしている。これは人間性に背く政策選択だ。
我々になにができるか。国会内外で市民と野党が結集して「アベ政治を許さない」を実現すること。これが困難ではあるが我々に希望を与える目標である。(2018/11/03・文化の日)
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