天皇の人権と「退位の自由」を考える。
- 2018年 12月 6日
- 評論・紹介・意見
- 人権天皇制弁護士澤藤統一郎
また、吉田博徳さんからお電話をいただいた。また、「オシエテいただきたいことがある」とおっしゃる。で、テーマは天皇の人権についてだという。またまた緊張することになった。
いったい、天皇には人権というものがあるんでしょうか。
何とも、単刀直入である。吉田さんが、「天皇なんぞに人権を認めてはならない」というご意見でないことは承知しているから、話しはスムーズに運びそうだ。
天皇とて生身の人間ですから、個人として尊重されねばなりません。その意味では、当然のこととして「天皇にも人権はある」ことになりますね。
でも、天皇には行動の自由というものがないでしょう。自由に街中を歩いたり、散歩も買い物もできない。それでも人権があると言えるんですか。
本来自由があることと、その行使に何らか事実上の支障があることとは分けて考えなければならないのでしょうね。
天皇には本来的に自由があり人権がある。しかし、事実上行使できないものがあると考えるのでしょうか。
いや、そうではない。天皇の人権は制約されています。しかし、それは象徴という地位と両立しない範囲に限ってのもので、人格の尊厳という人権の大本は天皇にも保障されていると考えざるをえません。
原則は天皇にも人権がある。ただ、象徴という地位と両立しない範囲では制約される。具体的にはどのように制約されるのでしょうか。
分かり易い例では、天皇には選挙権も被選挙権もない。職業選択の自由もありませんね。任意に住居を定める自由もない。婚姻の自由も制約されています。裁判を起こす権利もないとされています。
信仰の自由や表現の自由はどうですか。
天皇が人間である以上は当然に精神生活があるわけですから、信仰の自由も思想・良心の自由もなければならない。これは人間としての根源的な存在に関わる自由であり権利なのですから。天皇がクリスチャンであろうと仏教徒であろうと、あるいはイスラム教徒であろうと、もちろん無神論者であろうとも、憲法上の問題はないでしょう。表現の自由も基本的には認められるはずですが、一部制約はありうるでしょうね。
私はね。常々、天皇ほどかわいそうで不幸な存在はない、と思っているんですよ。どうして、もっと自由にのびのびと暮らしていけるようにしてあげられないのでしょうかね。天皇に、表現の自由があるといっても形だけ。実際は自由にしゃべれないでしょう。それに、天皇にたけは姓もない。
天皇は、国民の納めた税金を使ってそれなりの待遇を受けている、よいご身分じゃないですか。私は、天皇をかわいそうだとは思いません。不平等に苦しんでいる多くの人々がいるじゃありませんか。貴賤の「貴」を認めれば、その対極に「賤」の存在を許すことになる。
わたしは、大いに同情していますね。こんなカゴの鳥同然の生活は、普通の人にはとても耐えられない。人権には例外を設けるべきではない。人権を大切にする立場の人が、何とかしてあげなければならないんじゃないでしょうか。
吉田さんの立場は、だから不合理な天皇制は廃止した方が良いということですか。
すくなくとも、天皇が辞めたいときには、辞める自由を保障しなければならないと思っています。でなければ、生涯カゴの鳥でしょう。
ずいぶん前に、同じことを言った皇族がいましたね。確か三笠宮。退位の自由のない天皇は、奴隷的な苦役・拘束を強いられることになるという趣旨でしたね。
天皇にも人間としての尊厳は保障されているというのであれば、最低限「退位の自由」は確保して、天皇という立場からの離脱の道をのこしてやるべきでしょう。生まれだけで、生涯の不幸な立場を強いられるのは余りにお気の毒。
世襲も身分的拘束も近代法の原理とは別次元の問題ですが、天皇位への就任を拒否する自由、退位の自由が保障されていれば、天皇としての負担も自分で引き受けたことになりますから、もう「かわいそう」と思わなくてもいいんでしょうね。
やめようと思えば辞められる、それが大事なこと。憲法は、それを認めますか。
憲法には、天皇の退位についての規定はありません。任意に辞められるとも辞められないとも定めはありませんから、法改正次第ということになりますね。
では、誰にも人権を保障するという立場から、天皇の任意の退位を認める法律を制定すれば良いわけだ。
私は、本来天皇制は廃絶すべきだと思っています。しかし、現行憲法下で、天皇個人の人権擁護のため天皇の退位を認める法改正案が出たとすれば、賛成します。問題は、そんな風に世論が盛り上がるかどうか。
私のように、カゴの鳥の天皇をかわいそうと思っている人は少なくないと思うんですがね。
現天皇が生前退位の実績を作ったのですから、これをひろげて任意退位の制度を作ってもよいとは思います。
天皇だって、いつでもやめられると思えば、のびのびと勤めを果たしていけるのではありませんか。
次々にみんな辞めれば、天皇制はなくなるわけですから、可哀想な人もなくなる。
それに、今日本では年間3万に近い人が自殺していますね。貧困での自殺者を2万人として、その救済のために一人100万円を支給すると200億円かかる。天皇制がなくなれば、宮内庁費と皇室費、皇宮警察の220億円の費用が浮くわけですから、貧困自殺者をなくすることができると思いますよ。
なるほど。自由がなくてかわいそうな人を救い、金がなくて自殺する人も救える。天皇制なくせば、よいことばかりじゃないですか。
(2018年12月5日)
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自民 12月6日衆院憲法審開催断念
=来年通常国会の発議、厳しい情勢
『憲法審査会強行開催糾弾! 自民改憲案「提出」許すな!
12・6早朝緊急抗議行動』
12/6(木)AM9:00~ 衆議院第2議員会館前
主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.12.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=11640
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8203:181206〕
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