シリア、イラクでの内戦、テロの一般市民死者計18万人以上 ― 米軍の一方的撤退にBBCの厳しい総括(3)
- 2019年 1月 19日
- 評論・紹介・意見
- ISイスラム国坂井定雄
▼重要都市の奪還
「イスラム首長国」ISに対する米軍主導の連合軍の反撃は、2015年12月、イラク政府軍によるアンバル州の州都ラマディの奪還などから始まった。2017年7月のイラク第2の都市モスルの奪還は、連合軍側にとって重要な突破口になると思われたが、10カ月に及ぶ戦闘で一般市民の死者数千人、市外に脱出市民は80万人を超えた。
2017年10月、ISが「首長国の都」と呼んだシリアのラッカ市は、連合軍の空爆支援を受けたクルド人主力のシリア民主軍(SDF)に奪還され、3年間にわたるISの支配が終わった。
翌月、シリア政府軍は東部のデイル・アルズール市を奪還、イラク軍はシリアとの国境の町アルカイムを取り戻した。
▼何十万人もの死者
ISとの戦争の死傷者の正確な人数は、明らかではない。
英国に本部があるシリア人権監視団は、2011年のシリア内戦開始以来、一般市民110,687人の死者を含め、364,792人の死者を記録している。
国連は2011年の内戦開始以来、一般市民がテロ、暴力、武力紛争で、少なくとも30,839人が死亡したと述べている。しかし、学者・研究者と平和運動家の組織「イラク・ボディ・カウント」は一般市民の死者を7万人以上と発表している。
▼1,200万人を超えるシリア国民が難民化(データはEUROSATおよびUNHCR)
シリアでは少なくとも660万人が国内で難民化、560万人が国外に避難して難民化した。そのうち周辺諸国へは、350万人がトルコ、ほぼ100万人がレバノン、70万人がヨルダン、25万人がイラク、13万人がエジプトに、そのほか北アフリカに33万人が避難し、難民化している。
▼欧州のシリア難民
多くのシリア難民が最大のドイツはじめ欧州諸国に避難した。2018年7月現在、(一部は9月現在)上位10か国は次の通り
ドイツ 585,720人
ベルギー 122,215人
スウェーデン 118,305人
ブルガリア 116,750人
ハンガリー 81、190人
ギリシャ 78,375人
チェコ 70,405人
デンマーク 60,250人
オーストリア 53,625人
フランス 48,325人
▼イラクでは4百万人が帰郷
IOM(国際移住機関)によると、2018年9月までに4百万人が帰郷したと推定され、
2013年12月以来初めて難民総数が2百万人を切った。
しかし、国連の報告によると、就職難と住宅はじめ施設の破壊で、多くの家族が以前の住まいに帰れない状態が続いている。(了)
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