沖縄全県での県民投票実施見通しを歓迎する。
- 2019年 1月 27日
- 評論・紹介・意見
- 弁護士沖縄澤藤統一郎
辺野古新基地建設に伴う大浦湾埋め立ての是非を問う2月24日沖縄県民投票。ようやく、県内の全市町村で実施される見通しとなった。まずは、安堵の思い。「県民投票」の具体的内容については、県の公報が丁寧に解説している。末尾にこれを引用するので、ご参考にされたい。
ここまで来る道は平坦ではなかった。県民世論の所在を明確にするための「埋め立ての賛否を問う」投票に、これだけの抵抗と妨害があるのだ。県民世論が明確になることを快く思わぬ勢力が根強いことをもの語っている。もちろん、その勢力の裏側には、中央政権の存在がある。
県民投票を求める運動が具体的に動き出したのは、前翁長雄志知事生前の昨年(2018年)5月。「『辺野古』県民投票の会」(代表・元山仁士郎)が県民投票条例制定の直接請求署名運動を開始し、9月までに必要数(有権者の50分の1・2万3千筆)の約4倍にあたる92,848筆の署名を集めて県議会に提出した。
これを受けて、県政与党(オール沖縄派)は回答の選択肢を「賛成」「反対」の2択とした県民投票の条例案を作成して上程。これに対し、県政野党である沖縄・自民党と、中立派の公明党は「賛成」「反対」に、「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択とする案を提出。結局、野党案(4択案)は否決され、与党案(2択案)が賛成多数で可決成立して、県民投票条例は10月31日公布となり、その後投開票実施日は2019年2月24日とされた。ここまでは、順調だった。
ところが、投票事務の実施をすることとされた、県内市町村の首長や議会は、必ずしも県政与党派と同じ立場ではない。選挙事務執行のための補正予算が市町村議会に上程されたが、うるま市・沖縄市・宜野湾市・糸満市・宮古島市・本部町・金武町・与那国町の8市町で補正予算案を否決。最終的に宮古島・宜野湾・沖縄・石垣・うるま5市の市長が県民投票不参加を表明した。これによって、全有権者の31%に当たる約36万7千人が投票の機会を失う事態となった。
この事態を打開したのは県民の運動だった。県内全域で、とりわけ県民投票不参加を表明した5市で、「投票権奪うな」の声が巻きおこった。このことは、記憶に留めておかねばならない。
県は各市長に、事務を行うべき「法的義務」があるとして助言や勧告を行った。玉城知事や謝花副知事は、足を運んで各市長へ協力の要請を重ねた。また、行政法や地方自治の専門家からは、参政権を奪うことの違憲・違法を指摘する意見も相次いだ。
そして、県民投票の会元山代表のハンガーストライキが事態を動かした。
琉球新報は、「県民の熱意が政治を動かした 元山さんのハンストで事態急展開 辺野古県民投票」との記事で、「事態が急展開したのは、県民投票条例を直接請求した「辺野古」県民投票の会の代表で、大学院生の元山仁士郎さんが15日に始めた宜野湾市役所前での24時間のハンガーストライキだった。投票を実施しない市長への抗議の意思を示す元山さんのストライキは19日まで続き、同時に集めた全県実施を求める請願には5千人が署名した。」「一連の出来事は、政治の流れを決めるのは、政治家でも行政でもなく、主権者である市民なのだということを改めて示した。」としている。
結局は、県議会与野党の再議で、回答の選択肢を「賛成」「反対」の2択から、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択に修正することでの合意が成立した。
しかしこれもけっしてすんなり決まったわけではない。自民党は、「普天間飛行場移設のための辺野古移設はやむをえない」「反対」「どちらともいえない」とする3択案を主張した。これを与党である“オール沖縄”側が拒否して、与党も妥協した「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択案で全会派一致となった。これが、一昨日のこと。正式には、1月29日の県議会で、条例改正案が可決成立となる予定という。
県自民党が折れたのは、このままでは、県民世論の風圧に耐えられなくなるとの判断によるものだろう。5市を抜きにした県民投票が実施され、しかも、圧倒的に「埋立反対」の結果が出た場合、投票を妨害した責任を問われることになる。ボルテージの高い民意を敵にまわして、到底支えきれないと読んだのだろう。これが、沖縄県民の運動の成果である。
とはいえ、本来は投票の選択肢は2択であるべきだったろう。いま、恒久的な新基地建設のために、辺野古の海が埋め立てられつつある。埋立を止めさせるのか、続けさせるのか。とるべき政策は一つでしかない。投票回答は、埋立に「反対」か、「賛成」かのどちらかでなければ意味をなさない。「どちらでもない」とは、いったい何のことだ。どうしようというのか、さっぱり分からない。この回答は、主権者として無責任ではないか。
考えられるのは、「反対」の意見をもつ人に、「賛成」票を投じるよう説得は難しい。「せめて、『どちらでもない』に投票していただきたい」という切り崩しに役に立つ、という思惑なのだろう。
雨降って地固まる、というではないか。この間の県民の全県での投票を求める運動の昂揚は、辺野古新基地建設反対に弾みをつけたのではないだろうか。2月24日には、圧倒的な県民世論の「反対」の声を聞きたい。
それにしても、この件についての本土における関心の低さが気になってならない。自分の問題としてとらえられていないのだ。ことあるごとにに、訴えなければならないと思う。
(2019年1月26日)
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沖縄県広報
平成31年2月24日(日曜日)は県民投票です。
この県民投票は、辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う
県民投票条例(平成30年沖縄県条例第62号)に基づき、
「普天間飛行場代替施設建設のための辺野古埋立てについて」
の賛否を問うものです。
通常の選挙とは異なり、特定の候補者に投票するものではなく、
投票用紙の賛成欄又は反対欄に〇の記号を記載する方法で投票を行います。
この投票により、県民の皆様の意思を明確に示すことができます。
県民投票の意義
この県民投票は「米軍基地建設のための名護市辺野古の埋め立て」 に対し、県民の皆さまの賛否を明確に示すことを目的としています。
日本政府は、普天間飛行場の代替施設となる米軍基地建設のため、名護市辺野古の埋立てを計画しています。
県経済や子育て施策などさまざまな課題について政策を訴える候補者に票を投じる選挙とは異なり、今回の県民投票で問うのは、名護市辺野古の埋め立てに「賛成」か「反対」かの賛否のみです。県民一人一人が改めて、辺野古の基地建設のための埋め立てについて考え、意思を明確に示すことができます。
投票の結果、「賛成」「反対」どちらか多い方が一定数に達した場合、日本の総理大臣、アメリカ大統領にも通知します。
県民投票条例制定について
この県民投票は、県民の9万2848筆の署名の提出を伴った住民投票条例制定の直接請求※1を受け、沖縄県が条例案を県議会に提案、県議会の審議・可決制定を経て、実施が決定しました。
沖縄県は条例案の可決を受け、平成30年10月31日に「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」を公布し、投票運動や投票できる資格者、投票に必要な事項を次のように定めています。
投票資格者(第5条) 平成31年2月13日時点で以下に当てはまる人。
日本国籍のある満18歳以上(2月14日生まれも含む)で、沖縄県内の市町村に3カ月以上住所があり、その後も沖縄県内に住所がある人で、投票資格者名簿に登録されている人。
投票数(第6条)1人1票投票の秘密保持(第8条)投票した人が、投票した内容を明かす義務はありません。県民投票の情報提供(第11条) 沖縄県は、県民の皆様が賛否を判断するため必要な広報活動、情報の提供を客観的、中立的に行うものとする。
※1 住民の直接請求は地方自治法によって定められています。
投票の結果について
1 辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例 第10条
知事は、県民投票の結果が判明したときは、速やかにこれを告示しなければならない。
2 県民投票において、本件埋立てに対する賛成の投票の数又は反対の投票の数のいずれか多い数が投票資格者の総数の4分の1に達したときは、知事はその結果を尊重しなければならない。
3 前項に規定する場合において、知事は、内閣総理大臣及びアメリカ合衆国大統領に対し、速やかに県民投票の結果を通知するものとする。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.1.26より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=11981
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8336:190127〕
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