昔新聞、今NHK
- 2019年 1月 28日
- 評論・紹介・意見
- 藤澤豊
転職しては通勤の便から、子供が進学すれば通学を考えて引越しを繰り返してきた。引越しは、荷物を運んででは終わらない。住民票を移動して、運転免許の住所変更からはじまって、電気もガスも水道も契約しなおさなければならない。もう固定電話はやめてしまったが、インターネットは契約しなおして、かかりつけの医者や歯医者もどこかいいところはないかと探すことになる。床屋も美容院もクリーニング屋もで、なんだかんだで引越のたびにやらなければならないことが多くてうんざりする。
南行徳に引っ越したとき、荷物を運び込んでいる最中に読売は来るは朝日は来るはで、煩い後にしてくれといいたくなった。でも後にしたところで契約する手間は同じだしと、その場で契約してしまった。翌日、荷物を片付けているところに昨日の新聞屋がビールの商品券をもってきた。呑む習慣がないのに、「そんなものいらない」という芯の強さもなく、ただで貰えるというだけでなんか得した気がした。商品券、手に取ってみても、ただの紙でどうにも実感がわかなない。早速、商品券を持って近所の酒屋にいって缶ビール三缶もらってニコニコして帰ってきた。一月経っても、二月経っても誰も飲まない。小さな冷蔵庫のなかで邪魔でしょうがない。お隣に差し上げて喜ばれた。
南行徳の北から南に引っ越したときも、引越し屋が帰る前に新聞屋が来た。面倒くさいから、お世話になった新聞屋に引越し先を言わなかった。新聞屋は引越しのトラックが来るのをチェックしているのか?まさか、ありえない。大方不動産やから連絡でも入っているのだろう。今度は洗剤をくれた。いつも使っている洗剤とは違うが、くれるというのを断るのももったいない。
新浦安に引っ越したときも、横浜港北ニュータウンに引っ越したときにも、荷物を片付けているさなかに新聞屋が来た。引っ越しても引っ越しても新聞屋が来る。そして契約しても一ヶ月もしないうちに、こんどは新聞の勧誘屋が来る。断っても断って来る。外見で判断するのはと思いながらも、ぞんざいな口の利き方からは固い職業の人にはみえない。
読むのはせいぜいスポーツ新聞までで、普通の日刊紙を読んでいるようにもみえない。妙に馴れ馴れしい口ぶりで、なんとか新聞の購読といわれると、「あんた、自分で読んでもいない新聞をわかったような口ぶりで」と一蹴したくなる。普通の人じゃなさそうだし、こんなことで絡み合いたくない。「うちは朝日しか読まないから」と言っても、簡単に「ああ、そうですか」と引き下がらない。「新聞なんかどこだって似たり寄ったりなんだから」に近いこといいながら、「一ヶ月サービスしますから」、そして「半年契約してくれれば、洗剤二箱つけますから」と粘られる。
ああだのこうだの言い合う相手でもなしと思いながらも、何回か勧誘屋と言い合って、いい断り文句を思いついた。「仕事の関係で朝日しかだめなんですよ」それにしても、洗剤もって朝日だ、読売だ……という勧誘。偉そうに社会の公器だ、報道の自由だとかこいている大新聞社、この勧誘員はどういうことなのか説明してみろと言いたくなった。
そこにNHKがくる。仕事で忙しいのとインターネットに移行してしまって、テレビはあってもほとんど見ることがなくなってしまった。それでも基本契約ぐらいはとしていたが、こんどはBSだと言ってきた。おいおい、政府の広報機関になり下がって、子会社作って利益を隠して?、なにが公共放送だと思っていたから、「勘弁してくだいよ。もうテレビなんてほとんど見ないし、まして政府のプロパガンダとスポーツ新聞のテレビ版のような番組じゃないですか。BSは見ようたって、へんなアナウンス画面がでてきて見れないし、いっそのこと垂れ流しやめてくんないですかね、迷惑ですよ」と押し返した。
この数年、新聞の勧誘も来なければNHKもこなくなった。マンションの管理体制のおかげかもしれないが、本当のところは、勧誘してもたいした金にならなくなったからだろうと想像している。新聞は購読者が減って、とる人はこれと決めてとっているから、洗剤なんかで違う新聞にはならない。勧誘などという小遣い稼ぎもいなくなって、静かになったとほっとしていた。そこに、知り合いのマンション管理人からとんでもない話が聞こえてきた。
かつての新聞勧誘員のような風体の人が外国人居住者を、それも発展途上国からの人たちを狙って、NHKの視聴料は法律で支払うことが強制されていると、ほとんど脅迫に近い、それも日本語でどなるように言っているらしい。NHKの視聴料、あくまで同意の上での契約で、合意していただくには、契約内容をきちんと説明して、了解を得なければならない。日本語の読めない海外からの人たちに新聞の押し売りのようなことはできないから、こんどはNHKの勧誘?
日本語でですら契約内容を説明できるとは思えないし、海外からの人たちで日本語が不自由となれば契約がどうのという話になるはずがない。脅迫まがいの勧誘に、違反すれば国外退去命令になりかねないとあわてる人もでてくる。違法もへったくれもあるかという社会層の人なら、そんな勧誘がきたところで、知ったことかと追い払えるだろうが、まじめな駐在員だったり留学生だと、どうなるか。
あぶなっかしい人たちは餌食にならないが、まじめな人たちはなりやすい。NHKが、そんな押し売りのような人たちが海外からの人たちをメシの種にしているのを知らない? 曲がりなりにも日本という国の公共放送と自称しているNHKが知らないではすまされまい。
新聞は押し売りのような勧誘だったが、NHKの視聴料のように法律を振りましてではなかった。勝手に垂れ流して、法律までつくって、脅迫まがいの勧誘の素地を提供して、なにが公共放送だ。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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