安倍首相、「辺野古サンゴ移した」と印象操作
- 2019年 2月 6日
- 評論・紹介・意見
- アベ辺野古隅井孝雄
NHK批判なしで安倍フェイク発言を放送
安倍晋三首相がNHKの番組「日曜討論」(1月6日放送)で名護市辺野古の埋め立てに土砂を投入していることを問われた際、「土砂投入に際してはあそこのサンゴは移している」と答えた。この発言がフェイク(うそ)の発言だとする琉球新報、沖縄タイムス、朝日、毎日、東京などが一斉に批判を展開している。
首相は同じ番組で「砂浜の絶滅危惧種も砂ごと移す努力を続けている」とも述べた
放送の翌日沖縄県の玉城デニー知事は「現実にはそうなっておりません」とツイッターで移植を否定した。
琉球新報によると、「埋め立て海域全体で約7万4千群体の移植が必要で、終わっているのは別の区域の希少オキナワハマサンゴ9群体のみだ。砂ごと生物を移す事業も実施されていない」(1/9)。首相は漠然とした「あそこ」という表現をしたが、実際に埋め立て海域のサンゴには手が付けられていない。
沖縄県内ではNHKのこの放送について「埋め立てを強行で、全国的に反発がある。工事をいかにも慎重に進めているような印象操作としてサンゴの話を持ち出したのだろう」(沖縄タイムス)という見方が一般的だ。端的に言って事実にもとるフェイク発言だ。
政治家に批判、反論はしないのか
問題の番組は「事前収録」であったことから、放送したNHKにも批判が向けられた。
琉球新報は社説(1/9)で「(NHK)は、事前収録であるにもかかわらず、間違いであるとの批判もせずに公共の電波でそのまま流された。いったん放送されると、訂正や取り消しをしても影響は残る。放送前に事実を確認して適切に対応すべきではなかったか」と疑問を投げかけた。記者会見(1/10)でNHKは「自主的な編集判断に基づいて放送している。番組内で行った政治家の発言についてNHKとしてはお答えする立場にありません」(山内昌彦編成局計画管理部長)と繰り返すのみで、他メディアの質問には全く答えなかった。
世界のメディアのファクトチェックを学べ
最近では世界各国の新聞、放送などのメディアは政治家の発言を「ファクトチェック」し、事実と異なる場合は紙面や番組で正確な事実を伝えることが常識だ。
2017年6月にニューヨーク・タイムズ紙の「トランプのウソ」という記事を掲載、就任以来ツイッターなどでの大統領の事実にもとる発言を全て洗い出し、その対極にある事実を2ページにわたり明らかにした。ウソは100本にも上り、紙面を埋めた。
NHKは番組の中でどこのサンゴをどこへ移したのか、などについて首相に問いただすべきであった。しかしこのままでは収まりがつかないと思ったのか5日後、1/11日の「ニュース・ウォッチ9」の中で、日曜討論の画面を出し「サンゴ移植が進んでいないので、沖縄県との調整を急ぐ」というコメントを放送した。しかし、土砂投入された海面下のサンゴはすでにつぶされたままだ。またサンゴ救出の具体案も聞こえてはこない。
投入されたコンクリートブロックの下にサンゴが踏みにじられている、琉球新報 17年5月
NHKは安倍首相のサンゴ発言を検証もせずに流すことによって、辺野古基地建設を擁護しているのではないか。
沖縄のサンゴ、世界でも貴重
サンゴ礁は世界的に減少傾向にある。群生するサンゴは過去20年の間に40%以上も消えた。海の汚染に加え二酸化炭素の増大により水温が上がったことも原因している。アメリカでは、海に潜り、サンゴの苗を植え、育てて移植するボランティアが数多くいる。
アメリカフロリダ沖でサンゴの稚魚を養殖するNPOダイバー アメリカ公共放送(PBS)より
青く透き通った沖縄の海は世界でも有数なサンゴの天国だ。そのサンゴを踏みつぶし、土砂で埋め立てる行為はとても認められない。基地建設そのものを中止するか、サンゴを安全な場所に移植することが必要ではないか。
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