《湘北拙句抄》その8
- 2019年 2月 14日
- カルチャー
- 霧野 漠
夜も更けて 狢(むじな)山降り 鶏血(とりち)吸う
朝見れば 抜けた羽が散る 鶏の小屋
桜守り 木槌を打ちて 木の音(ね)聴く
徹夜して 砂鉄熱して 鉧(けら)造り
落ち椿 踏まず過ぎゆく 京女
鐘紐を 引きて鳴らすも 京女
*******************************************
モダニスト 東照宮より 桂離宮
モダニスト タウトに褒めさす 桂離宮 [井上章一の喝破]
益子焼 異人にほめられ 偉くなり
焼き物が 陳列されて 虚器になり
正月も 出征のときも 社(やしろ)参り
科学主義 万能感の ファッシズム
神話国 科学立国 万能感
角栄と 大河内正敏 理研仲間
戦時下で キリスト教も 日本化し
経済学 天皇制に 無関心
*******************************************
出雲月 裏面も岩場 長安月
あの月に パパがいるのよ 「ファースト・マン」
醤油倉 街に漂う 香の龍野 [三木清の生地]
むせかえる 裏山ツツジ かくれんぼ
聴き雪に 揺れて落ちるは 朝の粥
黒揚羽 お墓参りの 我に舞う
友と追う 宝を秘める 虹根元
見上げれば 何時しか虹が 消え去りぬ
斜面畑 種イモ植えて 風呂に入(い)る
宇和島の 段々畑の イモを掘り
泥まみれ 宇和島闘牛 山を突く
愛の詩を 皆で詠み合う アビニオン
これ歴史 巨岩道路の アビニオン
*********************************************
「ひとりが良い」父亡き後の 母暮らし
肩たたき 母の背に観る わがいのち
婚約に 義弟が歌う「赤いハンカチ」
名も知れず 「エベレスト街道」 造りし人
荷を背負い 吊り橋渡る 牛の列
山頂に 老母と暮らす 十津川村
ブナ突(つつ)き 赤いカワセミ 巣を作る
方言に 古語が残るや おら「が」村
輸出品 一芯二葉(いっしん・によう) セイロン茶
楽しいか 食の極道 魯山人
**********************************************
何事も「時期」があるのだ スターリン批判
敗戦近し ワカモト豪邸 夜毎宴
マグロ漁 大間原発 この対照
施設来る 反対運動 地価を下げ
「狢坂(むじなざか)」 地価が下がると 名札(なふだ)捨て
[以上]
2019年2月13日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔culture0763:190214〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。