企画展「東京大空襲 -罹災者・救護者・戦争遺跡-」のご案内
- 2019年 2月 26日
- 催し物案内
- 石橋星志
すみだ郷土文化資料館学芸員の石橋星志(イシバシ・セイシ)です。
ご見学と取材のお願いです。
23日より、すみだ郷土文化資料館で、担当する企画展「東京大空襲 -罹災者
・救護者・戦争遺跡-」を開きました。
今回はこれまでの館の蓄積に加え、原爆では取り上げられる救護に来た兵士の
問題を東京空襲の展示では初めて取り上げました。
東部軍資料には遺体回収の命令はありませんでしたが、焼け跡の金属など資材
回収命令があり、木材も掘割から回収しています。
また救護班の資料を取り上げ、隅田川の水を石井式濾水機でろ過して、救護や
被災者へ提供をするのに使っていたこと、石井式濾水機の写真や軍事機密の濾過
筒の実物なども展示しています。
体験者から聞き取った避難の軌跡を提示し、今後体験記からわかる軌跡、死者
の軌跡との比較研究で、空襲下の実相を明らかにする試みの一歩展示しました。
さらに、戦争遺跡の考え方で、空襲被災関連だけでなく、忠魂碑や軍の施設跡
も含めて調査し、現在分かっている範囲の所在と写真を展示しました。今後、そ
れぞれの調査を深めていく必要があると思っています。
全体を通じ、本土決戦の中での空襲という位置づけと、近代の戦争とすみだと
いう課題、体験者の声を生かした空襲実相の研究という喫緊のテーマが出てきま
した。
今回の展示を通じ、アジア歴史資料センターにもかなりの資料があることが分
かりました。
展示した『ノモンハン事件写真帳』は関東軍防疫部作成で、石井四郎の顔や不
鮮明ながら石井式濾水機なども見ることができますが、これもオンラインにアップさ
れています。
展示ではほかに、空襲を原因に民心が悪化した際の戒厳業務の想定資料も展示
し、その中では起点となる空襲被害を2回の空襲で1730人と見積もっていたこと
なども明らかにしています。
遠方の方もおられ、お忙しい時期とは存じますが、4月半ばまで開催しています。
お近くお寄りの際にはぜひ、ご見学ください。なお、図録は作成しておりませ
んので、ご了承ください。
また、3月3日には区内の施設で、展示の内容を中心に講演を行います。まだ残
席があるとのことですので、こちらもよろしければ。
友人・知人の関心のある方へも情報共有いただければ幸いです。
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。