中国の高校生の必読教材になるのはいつか?(一)(二)
- 2019年 2月 27日
- 交流の広場
- リスベット
(中国語「博客来」サイトの三部作解説の翻訳はリスベット)
1957年23歳の時に「右派」とされ、1980年46歳で釈放されるまで23年間、労働教養所、労働改造所に入れられ、そこで見聞き体験したことを《格拉古軼事》、《格拉古實?》《格拉古夢魘》の三部作として書き上げた中国版「収容所列島」の作者張先痴氏が21日に亡くなった。妻も労働教養所に送られ、離婚。
以下は、専修大学土屋昌明研究室 によって2月16日に上映された映画の説明です。
「目撃!」中国インディペンデント・ドキュメンタリー
胡傑監督『グラーグの書(格拉古之書)』(2013年、38分)日本語字幕
このドキュメンタリーは、1957年に中国でおこなわれた反右派運動で政治的な批判を受け、農村や工場などで労働を通して自己改造をするよう強制される施設(労働改造所)におくりこまれた張先痴と、出所後に彼と結婚した楊文?に取材しています。
反右派運動では、公式発表で55万人が人権蹂躙の被害者となりました。張先痴は、強制労働に従事させられた経験を驚くべき記憶力で本に書いたのです(『格拉古軼事』『格拉古実録』『格拉古夢魘』)。人身束縛の収容所における極限的な人間性を描いた文学として読むこともでき、ソ連のグラーグの生活を描いたソルジェニツインにたとえられています。
張先痴に感銘をうけたインディペンデントの映像作家たちがドキュメンタリーやドラマに表現してきました。その先駆けが本映画です。日本では本研究会が2017年に張先痴・楊文?両氏を招いたときに1回上映しましたが、他では見られません。張先痴の経験とこの時代の重要性を鋭くとらえようとする監督の姿勢にも感銘をうけます。
中国版「収容所列島」三部作が中国の高校生の必読教材になるのは何時か?(二)
(中国語「博客来」サイトの三部作解説の翻訳はリスベット)
以下は三部作販売元の「博客来」サイトの解説。(二)
10年以上にわたって地下出版物として流通していた「収容所列島(中国名古拉格群島)」は、1989年についにソ連で出版された。 ソルジェニツィンが著作の中で描いた群島は、ソ連のこの「海」の上の至る所にある島嶼のような監獄と強制収容所を指す。16年間読むことを禁止されていたこの著作は、2010年ロシアの高校生の必読教材となった。現在のロシア大統領のプーチン曰く「本の中で記録されている現実がなければ、我々は私達の国を全く理解することができず、未来を思考するのは非常に困難であるに違いない。」
張先痴は労働改造所の悲劇を世界の範囲に広げて考察し、共産主義運動の中の中国、ソビエト連邦、ファシストの全体主義システムの根本的な問題を考察し、広い視野と歴史的な深さで考察している。 彼は労働改造所のサバイバーとして、自らの世代の人々の人生の物語の継承、歴史の真実の保存をしようと試みた。
北京大学教授錢理群が張先癡《格拉古實?》に寄せた約2万字の序文―歴史は続いている
張先癡と錢理群、そして多くの友人達は、「前世紀の古代史」(張先癡の言葉)を決して忘れず、忘れたくない。 張先癡曰く「私は何処に行って何をしていても、骨に刻み肝に銘じた監獄での往時の出来事がしょっちゅう私の記憶の中に入って来る、または風雪が混じる旅の途中、または雷が光り雷鳴が轟く深夜、冤罪で死んでいった艱難を共にした友人たちに出逢う、彼らは満面涙を流し、全身血だらけで私に向かって歩いてくる。あの間の歴史を回想、思考、記録することは、私の命の絶対命令となっているのです。」
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